自分だけの体験を「up!ロード」する時代へ。VW 新型up! 試乗レポート

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up!と聞いて皆さんどんな印象、イメージを持たれるでしょうか?フォルクスワーゲンのエントリーモデル。ギヤがギクシャクするというじゃない?ファーストカーには不向き?マニアックなチョイスにすぎるのでは?など。王道フォルクスワーゲンの中でもちょっとキワモノ感を抱いている方もおられるのではないだろうか。登場直後にディーラーで乗せて頂いたくらいだった。今回お誘いをいただき乗せて頂けるというのかなり楽しみでした。

まず「ドアの建てつけの良さ」。これは建材、もとい健在です。この一点を以てして、ドイツ車を買うことの愉しみは達成されるかもしれません。あ、そうそう、このクルマ、エントリーグレードは160万円を切る価格から設定されています。日本でこの値段で何が買えるでしょうか。下手すると、ちょっといい軽自動車「背高め」な上級グレードを買うと車両本体でこれより高いクルマも珍しくありません。「という値段でフォルクスワーゲンが買える」この事実だけでもこのクルマの買い得感は伝わるかもしれませんよね。そんな安物、何かどこかのバッタモンとかじゃないの?と思われるのも無理ないと思います。しかしそんなことはないのです。というか、ドイツのメーカー、単に「商品棚の充実」だけに顔ぶれをそろえるためだけのOEM車ってあまりないように思います。

ラインナップ拡充になっても、その基準ではかなり厳格というか。もしどこかのバッタモンだと疑うのであれば、一層乗ってみなければなりませんね。確かに、グループブランドのセアトでは「Mii」、シュコダでは「シティゴ」としてもそれぞれのバッジを掲げて販売されます。グループのエントリーグレードを担うモデルであることは間違いありません。しかし、ドライバーズシートに腰を下ろし、コンパクトらしからぬオーセンティックなスケール感を感じさせるステアリングの存在感。実際の大きさ以上にそのフィーリング、建てつけの妙にかっちりした感覚は、このクラスのクルマで味わうことができるとは到底思えない、そんな印象をもたらしてくれます。

またその体をゆだねているシートも決して「ゆとり」のためのブルジョワジーな余剰ではなく、このクルマに乗る人一人でも多くの人にフィット感を感じてもらうための最低限のもてなしに過ぎないに違いありませんが、肉厚でもないのに妙にしっくりくるので、妙にいいクルマに乗っている印象があります。ここまでの要素で決まるドラポジで走り始めれば、意図した方角に過不足なく鼻先を向けることができることを喜びとして受け止めるようになるまでそう長い時間は必要ないのではないでしょうか。

そして、お金を出しても後付できない固有の価値だと感じる「絶対的な軽さ」は、優れたハンドリングと、爽快な乗り味をとめどなく生み出し、にもかかわらず、卓越した直進安定性や、静寂ではなく必要にして十分な車室内でのコミュニケーションを可能にする程度の静粛性を担保していることなど、乗るほどに、多くのユーザーにフィットする等身大のシティラナバウトの真価を思い知ることになるでしょう。

NEW up! は変わったのか?変わってないのか?


[photo:Hayato Tsuchiya]

このクルマが大きく変わった、とは個人的には思えないのです。これは実はデビュー当時から当然に有していたこのクルマのアイデンティティなのではないかと思っています。そして今回、昨今のフォルクスワーゲンのトレンドに沿って、コネクテッドカーとしての資質も大幅にグレードアップさせています。大げさなモニターなど、インパネに仰々しいものは付きません。試乗車には私が普段普通に使っているスマートフォンをしっかり固定することができる骨組み(フォルダ)が設けられていました。「なんで今や一人一台が当たり前で肌身離さずが常識になりつつあるスマートフォンなのに、その画面は簡単に傷ついたり割れたりするのだろう?いい加減にしてほしいわ、ホントに。」そんな極めて日常的でドメスティックな不安を抱えた私たちの「このスマフォ」で、クルマがより身近でかゆいところに手の届く相棒になるのです。

なるほど、これがあればもう大げさなナビは要らないな、と思います。そのフォルダーにマイスマフォを固定し、広く一般的な地図アプリでナビ代わりにすることも勿論可能です。しかし、ここでそのスマートフォンに「maps+more」というup!専用のアプリをダウンロードしておけば、鬼に金棒レベルのグレードアップが図れます。アプリを立ち上げ、Bluetoothで繋げれば、燃費情報、エコドライブのための支援プログラムなど、ナビゲーション以外に様々なup!専用のコンテンツを利用することができるのです。

ナビにしても、もはやルート検索ではない。なんとなくこんなことしたい、はあっても、具体的にどこに行けばいいのかわからないような場面、たくさん選択肢が出てきて決めかねる場面も現代なら当然起こりうる話。しかしこのアプリなら、そもそもルートを検索するという以上に「自分にピッタリの目的地を探し出す」ことから始められるのです。

筆者はクルマで出かけるとつい温泉にふらふらと出向きたくなるのですが、平日でもちゃっと行って帰ってこれる、名湯の日帰り温泉などないだろうか……というような検索ができて、その施設の特徴も知ることができ、目的地として設定したければそのままルート案内を開始する、というようなこともできるのです。このアプリと新型up!があれば、行動範囲はさらに広がるというもの。広がりすぎて困るほどかもしれません。あれもこれも、こんなにすごいんです!と使いもしない機能満載でその威厳を明らかにするような無駄はなく、あくまでも痒い所に手が届く、等身大の機能を盛り込んだこのアプリケーション。up!らしいなあと思えるものだと感じました。


[photo:Hayato Tsuchiya]

情報化社会という言葉もいい加減死語になったようにも思います。わざわざ言及されないくらい今の世の中、情報にあふれています。しかし、そんな中で燦然と輝く価値を見出すもの。それは実際体験してみなければわからない、知りえないことなのではないでしょうか。99%はグーグル先生が教えてくれる。しかし残りの1%は絶対に体験しなければわからないのです。その部分の価値が尊ばれ始めている。そんな風に感じます。そしてクルマはその1%をより多くの人にもたらす存在だと思っています。


[photo:Hayato Tsuchiya]

この新しいup!も、こんな時代にピッタリのパーソナルラナバウトとしての価値にしっかりフォーカスした進化をしているということを強く感じました。世の中に合う情報の中で自分に有益なものをしっかりと得ることができるコネクテッドカーとしての性能。そしてそれに応えうる小回りの利くコンパクトなクルマ。そんな懐の深さがより色濃くなっているのではないでしょうか。やがて、このクルマでの体験はユーザー一人一人のかけがえのない体験という財産になる。こういう現代で珍重される「ユーザーと愛車の情報と体験の共有」がしっかりできるクルマだと感じるのです。

自分だけが持つ価値を構築していくことがものごとの核心では

今までは「自分に必要なもの、情報を必要なだけ取りだす。ダウンロードする。」そんなライフスタイルが主流でした。しかし、これからの世の中はその自分用に取りだした情報やツールを使って、実際に推進する。体験する。表現する。その中で自分だけが持つ価値を構築していくことがものごとの核心になっていくような気がする。そんな時代に「小さいがしっかりとしたクルマで移動が楽しめるコネクテッドカーとしての性能も備えたクルマ」である新型up!は俄然説得力を強めたように感じます。与えられたものをダウンロードしてきた世代は、自ら自分だけの体験を通して感動し、構築し、表現する。今まさにアップロードする世代へと進化を遂げようとしている。まさに新型up!にはあなただけの貴重な体験を「up!ロード」させることができる先見性と力強さすら感じました。


▲ゴールデンウィークの真っただ中、ほとんど渋滞にひっかかからずに箱根塔ノ沢の日帰り温泉に出かけることも可能。これもアプリのおかげ


▲ファビオルイージのタクトのクレバーさにも酔いしれることができる。決して音響に高価なものを使っているからではなく、このクルマ自体の躯体のしっかり感は当然に音響に作用しているように感じた

ほかのクルマに乗れなくなるかもしれません


[photo:Hayato Tsuchiya]

おそらく多くの日本人が感じている以上にフォルクスワーゲン、即ち「みんなのクルマ」だし、それは「フレンドリー」で、うっかり買ってしまったら「つい乗ってしまう奥深さ」を備えたクルマ。それが新型up!なのではないか。変な忖度は要らない!正直、こんなに良かっただろうかと思ってしまった。乗ってよかった新型up!。このクルマでエントリー、もちろんお勧めです。

ほかのクルマに乗れなくなるかもしれませんが当方では責任は負いませんのであしからず(笑)。しかし、もう何十台もクルマに乗ってきた方、アシにいかがでしょうか?いや、このクルマちょっと受け付けないという方もいるかもしれませんが、もしウマが合ってしまったらこれは実に面白いチョイスだと思います。その際、今お持ちのガレージのコレクションもたまには乗ってあげてくださいね。このクルマを手に入れた暁には「up!ばかり乗ってしまいそう」な匂いがプンプンし、そんな心配をしたくなるほどクセになる要素をこのクルマは持っているからです。


▲藤木由貴ちゃんの「恋ダンス」もヘビーローテーション。うかうか歌詞を覚えそうになってしまった(笑)クルマのなかでの愉しみ。音楽を聴くというのもそういう面はあるだろう

ちなみに燃費に関して。ハイオクガソリン指定ですが、1ℓ当たり15kmを割り込むのは難しいという感じです。燃費を気にせず高速道路は右レーンで流れをリードするような走りで20kmは難なくマークします。現実的にカラカラまでタンクの中身を使い切るような乗り方ではなく、出かけたので減ったぶんだけ入れる、というような乗り方だと3000円程度で満タンになります。今どききわめて高い経済性と言えないかもしれませんが、現実的に十分アフォーダブル。何しろ、走りの質は一級の欧州仕込みの実用車ですから燃費は今どきもっといいクルマもある、とかネチネチといろいろ申し上げる気にはならないというのが率直な感想でした。

今回はお借りしていたタイミングで気鋭のフォトグラファー土屋勇人さんが、都内で大変かっこよく写真に収めてくださったので、その他の写真もここに紹介しておきます。


[photo:Hayato Tsuchiya]


[photo:Hayato Tsuchiya]


[photo:Hayato Tsuchiya]


[photo:Hayato Tsuchiya]


[photo:Hayato Tsuchiya]

[ライター/中込健太郎 画像/Hayato Tsuchiya&中込健太郎]

中込 健太郎

大手自動車買取販売会社で、クルマの売買業務を経て、本社マーケティングチームに異動。WEB広告を担当し、その後大型展示場のオープン準備から、展示在庫の目視選定業務に従事した。そのころ企業Facebookページでの在庫車に関する紹介や、クルマで出かける旅行コンテンツなどを担当。その後フリーランスライターとして活動現在に至る。クルマの売り買いの経験から、ドライブを通じてクルマの魅力楽しさを紹介することをライフワークとしている。車選び.com ,NAVI CARS他で執筆中。「クラシックカー美女」テキスト担当●温泉ソムリエ●一級小型船舶操縦免許

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