「この上ないしっくり」シトロエン・ディアーヌの試乗レポート

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シトロエン・ディアーヌ、その存在は昔から知っていました。2CVを少し立派にしたようなそのクルマ、実際に見たことはありませんでした。いや、厳密に言うと、もしかしたら目撃している可能性もあります。しかし、その記憶がないというべきかもしれません。決して地味なクルマ、個性的ではないというつもりは毛頭ありません。しかしシトロエンといえば、名物ハイドロ・ニューマチック・サスペンション。ただ、このクルマはバネサスです。

そして前述の通り、2CV的なクルマではありますが、あそこまで徹底して虚飾を排したわけでもないのです。ボディのアピアランスなどもいくらか立派に、プレスなどもされています。もうすっかり、「まともな自動車の形」をしています。雑誌で見ても、イベントで見かけても「ふーん」と流してしまいがちなクルマ。そんな印象が個人的には強かった一台でした。

しかし、先日、ちょっとシトロエン・ディアーヌに試乗する機会がありました。そして、そのさらっとした印象だったのとは裏腹に、このクルマこそ、最もしっくりくるシトロエン。いや、あらゆる自動車の中で比較しても相当に「ちょうどいい」クルマだと思えるほど、痒いところに手の届く、何もないのに「行き届いているな」と感じさせる、そんなクルマだったので、試乗の感想をまとめておきたいと思うのです。

あらかじめ申し上げると、シトロエン・ディアーヌも結局は何も付いていない

重要なことは、絶妙にちょうどいいとか言っては見ても、装備的には、現代では当たり前の文化的装備の数々、ほぼついていないと思ってよいでしょう。ギヤは4速マニュアルです。エアコン、パワステ、あるはずがありません。カーナビ、いらないでしょう?そんな成り立ちなのです。基本的な装備レベルは、2CVに近いのです。しかし、その絶妙さは何がそう感じさせるのでしょうか?車重約600kg、排気量600cc。大いに権利を主張し、いろいろおねだりしたくなりそうなこのシトロエン・ディアーヌ、しかし、これ以上何もいらないと思わせるのはなんなのでしょうか?

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椅子は大事!評価に大きく影響している

一つにはこのたっぷりとした椅子ではないでしょうか。クルマの大きさからすると、大ぶりなその椅子は座面もクッションも全てにゆとりがあるサイズ。この椅子が、まずこのクルマに対する評価に大きく影響しているのはほぼ間違いないでしょう。昨今の自動車、ニューモデルを見ても、一番顕著にわかるコスト削減の際のやり玉に挙がるのはシートではないでしょうか。でもシートがちゃんとしている場合、そのクルマ、仮にコスト削減されていても、事実上問題ないと言ってもいいとすら感じます。シートが大事なんだということは、こういうシンプルにしてよくできたクルマに乗ると感じます。

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次に何は無くともトルクさえあれば良い

このシトロエン・ディアーヌ、今時のクルマに比べると、悲観的になってしまうほど非力です。「少なくとも数字上は」そして、多少立派になったとはいえ、華奢な細いタイヤを履いて走っていると、周りの「同情的親切」を痛感することになります。

ただ、実際乗っていると、拍子抜けするほどよく走ります。2気筒です、結構盛大に騒々しい。割と楽しく走れるので不思議です。最高出力ではなく、アクセルを踏んだ時に使い勝手のいい出方でトルクが出るか。問題はそこだけではないでしょうか。加速は推して知るべしですが、速度乗ってしまえば、むしろ遅くはないほど。自動車の基本、自動車のぶれない真理。このクルマにはそんな技がたくさんあるような気がしました。

豪華にするのではなく「適正化」されるということ。そしてシンプルだからこそ残る「風情」

繰り返しますが、このシトロエン・ディアーヌというクルマ、2CVベースですが、全然豪華でありません。上記のような内容です。しかし、少しずつ、大きくなっている、少しずつお金をかけている。それによってそれによってクルマとしてずっとまともで優しい。そんなクルマに仕上がっているのではないでしょうか。全く十分ではない。しかし、試乗するほどに懐かしく、もっと遠くへ行きたい。そう感じさせるのはさすがといってよいでしょう。

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そして何より、そぼ降る雨がよく似合う。平行四辺形にカットされた窓は、感心させられるほど走行中の雨の侵入が少ないのです。ですから雨の日、エアコンのないディアーヌでもそんなに不自由しないのです。例の細いタイヤですが、しっかりクルマ自体で操縦安定性を担保した設計なので、全く不安がありません。この辺りは、この手のプリミティブな古いフランス車、どのクルマに乗っても秀逸です。

そして、季節外れの強い雨の中、湾岸線を走っても不安はない。どころか、ソフトトップを叩く雨音につい耳を傾けてしまうほど、風情があって、運転するものに余裕をもたらせてくれるのです。クルマの良し悪しは「余裕を持って運転できるか」。今時のクルマと比べると、引くぐらい何もついてないのに、それが不満に感じない。むしろ、これがいいと思えるクルマ。今新車で販売しているいかなるクルマよりもこの先も長持ちするのかもしれませんし、この価値観にまた戻っていくんじゃないか。そんな予感すらする、ディアーヌ。

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▲雨でも案外快適ですね。とにかく「自分の手の中に収まる感じ」今のクルマにはない良さかもしれません。電子デバイスがないですが、その必要がない、とも言えますね

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▲アッシュトレイの蓋がスマホナビを置いておくのにちょうどいい件。これがおければ何も問題ないですね。そしてなかなか位置が絶妙

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▲しかし、グーグル先生、結構攻めますよね。ちょっと困るんだよ!でもこのクルマならあまり問題はありませんが。津田沼の三角州の真ん中のようなところに、はまってしまった時の写真

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▲横風とかもそんなに気になりません

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▲なかなかルーミーな室内。居心地のいい空間です

中途半端なのではなく妙なる立ち位置。膨大なクルマを抱えるコレクターが、その全てを手放し、最終的にこのクルマ一台にまとめた、と言われたら、納得してしまうような、そんなクルマでした。

[ライター・カメラ/中込健太郎]

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中込 健太郎

大手自動車買取販売会社で、クルマの売買業務を経て、本社マーケティングチームに異動。WEB広告を担当し、その後大型展示場のオープン準備から、展示在庫の目視選定業務に従事した。そのころ企業Facebookページでの在庫車に関する紹介や、クルマで出かける旅行コンテンツなどを担当。その後フリーランスライターとして活動現在に至る。クルマの売り買いの経験から、ドライブを通じてクルマの魅力楽しさを紹介することをライフワークとしている。車選び.com ,NAVI CARS他で執筆中。「クラシックカー美女」テキスト担当●温泉ソムリエ●一級小型船舶操縦免許

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