あなたは把握できていますか?DIYで出来る、数少ない車上整備「オイル交換」のこと

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今回は久しぶりにカーケアについての話題を書こうかと思います。今まで何度か「自分で出来る日常整備」というテーマを取り上げた事がありますが、クルマが年々ブラックボックス化する中で、今なおオーナーがDIYで出来る数少ない車上整備の一つがオイル交換ではないでしょうか?

とはいえオイル交換くらいであればディーラーの整備の案内キャンペーンや法定点検にこまめに出している人であれば、まず気にする必要はないとは思います。カー用品店やホームセンターに行けば今尚、自動車用エンジンオイルが売り場の一角を占め、オイルフィルターとフィルターレンチや、ドレンパッキン、廃油処理用品等、一般ユーザーが自分でオイル交換するために必要なものはほぼそろっているところを見ると、オイル交換くらいは自分でするユーザーというのはまだまだ相当数いるということでしょう。

適切なエンジンオイルの交換時期とは

エンジンオイルの交換時期といえば「5000kmもしくは半年に一度」というのは一度は耳にした方も多い事と思います。また筆者のクルマのような、キャブレター式の旧型エンジンではエンジンオイルがガソリンで希釈されて粘度が落ちる、というガソリン希釈という問題も発生するため、3000kmごとの交換がよいとされるパターンもあります。欧州車や最近のエコカーの中には1万km以上のオイル交換を謳うクルマもありますが、距離は乗らなくても熱と空気にさらされている以上、オイルの酸化は避けられないので交換から半年経過したら必ず交換してください。

ある欧州車では、あえてオイル消費を多くして定期的にオイルをつぎ足すように促してオイルの交換サイクルを伸ばしているという話を聞いたことがあります。更に24時間耐久のレーシングマシンもわざとオイル消費させ、ピットのたびにオイルを継ぎ足すことでオイルの鮮度を保つようにエンジンを設計してるという話もあります。「女房と畳は…」という諺がありますが、やはりエンジンオイルも新しいに越したことは無いようです。

エンジンオイルは何を選べばいい?

エンジンオイルには大きく分けて3種類あります。ガソリン車用、ディーゼル用、2スト用です。ガソリン・ディーゼル兼用となっている物もありますが、エンジンオイルはエンジンの特性や潤滑方式に合わせて設計されているため、指定以外のオイルは最悪焼き付きなどの重篤なトラブルの原因になります。必ずエンジンの形式に合わせて指定のオイルを入れてください。

エンジンオイルにはベースオイルによって鉱物油、部分合成油、化学合成油があります。もちろん、単純なスペックでいえば部分合成油や化学合成油の方が高性能で価格も高くなります。エンジンオイルの性能と価格は相関関係にあると言っても間違いないでしょう。だからといって高価なオイルを入れればいいのか、というとそういうわけでも無いようです。

時々、オイルメーカーの方と話す事があるのですが、オイルの価格はベースオイルと添加剤によって変わります。エンジンオイルと言ってもただの潤滑剤ではなく、さまざまな添加剤をベースオイルに混ぜることで、熱による粘度の変化を抑えたり、油膜保持能力を高めたり、ガソリン希釈へ耐性を持たせたりしているそうで「僕はオイル屋さんというより混ぜ屋さんと言った方がいいかもしれませんね。(苦笑)」と言っていました。そしてクルマによっては必ずしもハイスペックなオイルが必要というわけでもありません。

鉱物油、部分合成油、化学合成油の違い

鉱物油
ベースオイルが石油ベースのもっともベーシックなオイルです。酸化や熱などの高負荷やガソリン希釈に弱いですが、ファミリーカー等の実用車で使用する分には十分な性能を有しています。

部分合成油
石油のベースオイルに20%以上、化学合成由来のエステル油を混ぜた物で、鉱物油が苦手とする酸化や高回転時の高負荷やガソリン希釈などに強く、ハイグレードなクルマや高速走行の多いユーザーに向いていると言われています。

化学合成油
ベースオイルが100%化学合成由来のエステル油ベースの、高級・高性能オイルです。高回転、高温時の高負荷や酸化にも強く、ガソリン希釈も少なくなります。浸透性やフラッシング性能を高めるための高級な添加剤も含まれ、プレミアム性の高さも併せ持ち、スポーツカーやレーシングカーに使われています。高性能なスポーツカーもしくはチューニングカーでもない限り、通常であれば鉱物油か、もしくはちょっと驕って部分合成油で十分でしょう。

クラシックカーは鉱物油以外NG?

クラシックカー好きの方も多いCL読者の中にはクラシックカーに部分合成油、化学合成油はNGという話を耳にしている方も多いと思います。昔のクルマに使われていたブチルゴムのオイルシールに対してエステル油が攻撃性を持っているというのがその根拠とされているのですが、これも件のオイルメーカーの方に聞くと「たしかに、合成油の出始めの頃はゴム類への影響度合いのデータが無かったため、オイルシールを浸蝕するという事例はあったが、今ではブチルゴムも含めてあらゆるゴム素材の耐性を考慮してオイルを調合しているため、昔のクルマに合成油を使っても問題は無い」との事。

そもそも、現在「鉱物油」として売られているオイルでも、鉱物由来の添加剤が年々環境規制で使えなくなり化学合成の代替材料に変わっているため、厳密な100%鉱物油とも言えなくなってきている状況とのことです。ましてや、過去に全バラのオーバーホールを経験しているエンジンであれば、ゴム類も現在流通しているオイルに対応した材質の新品に交換されているため問題ないという話もあります。むしろ問題なのはオイル粘度の番手の方だそうです。

重要なオイル粘度!番手の見方と注意点

前述のオイルメーカーの人の話によるとエンジオイルは10wー30が基準だそうです。Wはウィンター(冬)を意味し数字が小さくなるほど冷間時の硬化に強くなるとのことで、10wはー25℃、5wはー30℃、0wは‐35℃まで使用可能となっています。後ろの数字は高温時の軟化に対する強さで、100℃時の粘度を表しています。この数字が小さければ柔らかく、大きければ固くなることを意味します。最近のクルマは5w-20や0w-10といった軟らかめの番手のオイルを指定しているクルマが増えています。これはオイルが固くなるほどフリクションロスが増えるため、最近のエコカーは燃費向上の妨げになるオイルの粘性による抵抗を嫌って軟らかいオイルを指定しているのですが、燃費が良くなるからと言って指定された番手より柔らかいオイルを使う事は厳禁です。

たしかに、フリクションロスも減りレスポンスも俊敏になるのですが、エコカーは各部品のクリアランスをギリギリに詰めて軟らかいオイルでも十分な潤滑性能が得られるように設計されています。指定されているオイルよりやわらかいオイルを入れると、油膜切れによるエンジンブローを起こす可能性さえあります。逆にエコカーに固めのオイルを入れると今度は燃費悪化の原因になります。必ずそのクルマにあったオイルを入れましょう。

ただし気候変動が激しく、季節によってオイルの粘度に影響が出るので、季節に合わせてオイルの粘度を変えたいという地域の方の場合、氷点下で始動性が悪くなる地域なら1段まで下げる、猛暑でオイルが熱ダレするという地域の方は2段まで上げる程度が許容範囲だそうです。

クラシックカーやスポーツカーのオイルは

おそらくCL読者で一番気になるのがこの話でしょう。当然のことながらクラシックカーやスポーツカーは消耗品や油脂類にかかる費用を惜しんでいては乗れません。当然エンジンオイルもグレードの高い物を使う必要が出てきます。中にはミニや水平対向エンジン車のように半分オイルの銘柄が指定されているようなクルマすらあります。

スポーツカーのような、レブリミット近くまでエンジンを回して全開走行することを前提に設計されたエンジンは、熱や摺動摩擦による負荷はファミリーカーの比ではありません。あっという間にオイルが熱ダレを起こし、潤滑も間に合わなくなります。そのため熱ダレに強く、潤滑効果を高める添加剤をふんだんにブレンドした部分合成油、化学合成油で粘度の固い高価なオイルを使う必要が出るのです。

中でも、スバル車、ポルシェ、空冷VW等のような水平対向エンジン車はとくにオイルに気を使う必要があります。水平対向エンジンはピストンが横向きになっているため停止中はエンジンオイルが重力でピストンの下半分に偏り、上半分が油膜切れを起こしてしまい、長期間放置した状態でエンジンを始動すると油膜が切れた状態でエンジンを始動するいわゆる「ドライスタート」でシリンダー内部を傷つけてしまいます。水平対向エンジン車の場合は長期間の油膜保持能力を気にするほうが好ましいでしょう。

空冷のポルシェやVWはエンジンの冷却もオイルに依存し、とくにポルシェ911はドライサンプ方式のため10L以上のオイルを使用するので「油冷エンジン」という異名をもつのはよく知られた話です。ポルシェにいたってはメーカー純正で空冷ポルシェ専用のクラシックカーオイルが存在すると聞きます。現行車で10w-30より固いオイルを使用するクルマが無いため、事実上15w-40、20w-50の表記のオイルはクラシックカー専用オイルしか存在しない状態と言ってもよいでしょう。

昔のクルマは加工精度も今より低く、クリアランスも大きい上、製造後何十万kmも走っているとなれば摺動部が摩耗して更にクリアランスが大きくなっている可能性もあります。オイルメーカーの方の話では、筆者の昭和48年型セリカも「新車当時は」現在でいう10w-30相当の(×w-×0というマルチグレードの粘度表示が制定されたのは平成5年・1992年で当時のシングルグレードのSE規格のオイルに粘度表示の概念は無かったようです)オイルを使っていたということなのですが、40年以上動いているため、最低でも15w-40、高温、高負荷のかかる高回転型のツインカムエンジンというのを考慮に入れると20w-50くらいが妥当だろうということでした。もしかしたら現在、0wや5wのやわらかい番手のオイルを使っているエコカーも、ある程度走行距離が伸びてきたら番手を上げたほうがよいというケースも出てくるかもしれないとも話していました。

選択肢が増えたクラシックカー用オイル

以前はクラシックカー専用オイルというと銘柄が限られていましたが、近年はさまざまなブランドからクラシックカー用と銘打ったオイルが販売され、昔を思うとよい時代になったものだなと思います。

現在は廃番になったようですが、クラシックカーといえばBPのコースクラシックの緑の缶一択だったことを覚えてる方もまだ多い事でしょう。最近はカストロールやバルボリン、ガルフ、ティーボス、ERG、日本ではルブロス等から20w-50のクラシックカー用を謳った固いオイルが出ています。

▲缶のデザインに一目ぼれして試したTBO&S(ティーボス)のクラシックカー専用オイル

値段は1Lあたり最低でも2000~3000円と少々高価ですが、絶対的に出荷数が少ない上に、油膜保持能力や耐熱性、ガソリン希釈の耐性、更にオリジナル・ミニに使用する前提で(?)トランスミッションの潤滑性能等、現行車とは違った意味で過酷な使用環境を考慮した添加剤をブレンドしている事を考えると、このくらいの価格なってしまうのはやむを得ないでしょう。オイルにはそれぞれドライバーの好みやクルマとの相性があるのでどれが一番と明言するのは控えますが、筆者のセリカには油圧計が付いているので、アイドリング時の油圧が冷間時4kg、暖機終了後も2kg前後を季節に関係なく3000kmまで保てるオイルを基準に選んでいます。

ただし、鉱物油はガソリン希釈に弱いようで、キャブレターの仕様の車両はガソリンがオイルに混じりやすいため、むしろスポーツキャブレター仕様のクラシックスポーツカーこそガソリン希釈に強い部分合成油タイプのクラシックカー用オイルというのも悪くないかもしれません。ちなみにオイル交換時、機会があれば試しに抜いたオイルの匂いを嗅で見てください、ガソリン臭が鼻に突くことかと思います。組付けがドンピシャでうまくいったエンジンだとオイル消費が無い分、ガソリンが混じって交換時にオイルの量が少し増えてたという笑い話もあるそうです。

▲冷間始動時は4kg、3000km走行後も冷間時4kg、暖機後2kgをキープしていました

2ストオイルの特徴と注意点

せっかくなので2ストオイルについても触れておきましょう。排ガス規制などでほぼ絶滅危惧種の2スト車ですが、エンジンオイルを循環させるのではなく燃料にオイルを混ぜ、クランクケースから直接、燃料と一緒にクランクシャフトやシリンダー内部に送り込み(掃気)、用途の終えたオイルはガソリンと一緒に燃やし排出ガスとなるため、オイルの循環機構もバルブ機構も無くシンプルでパワーの出るエンジンですが、オイルを燃やす以上どうしても環境性能では不利になります。またオイル管理のミスが即ブローにつながります。

スポーツタイプのモーターサイクルはもちろん、360cc軽自動車のように高負荷のかかる車両はオイル選びには慎重になったほうがよいでしょう。分離給油タイプの2スト車でも、保険にオイルタンクだけでなくガソリンタンクにも少しオイルを混ぜておくというのはよく知られた話ですね。原付向けに売られている低価格オイルはこれらの車両には使わないのが無難です。

一時期スバル360オーナーの間で、欧州ブランドの2ストオイルが白煙が少なくレスポンスも良くなると流行った事があります。これは欧州で環境基準が厳しくなるなか、ベスパなどの基本設計の古い2ストスクーター用にブレンドされたオイルが市場で求められ、元々エンジンの基本設計がスバルラビットのスクーターと同じスバル360にはベスパ用のオイルとの相性が良かったという事情によるもののようです。筆者も一時期、イタリアの某メーカーのオイルを使った事があるのですが、それまではバックミラーから自分のクルマの白煙が見えるくらいだったのが、マフラーを直視してようやく煙が出てるのが見えるくらいになり、オイルポンプが壊れてないか逆に不安になったくらいでした。

2ストオイルにはFA・FB・FC・FD、4つのグレードの規格が存在しますが、市場に流通しているのは事実上FC規格とFD規格製品だけとなっています。2ストオイルの市場は年々小さくなっていますが、林業関係者のチェーンソーや芝刈り機だけはどうしてもコンパクトな2ストエンジンでなければならない一方、山林の環境汚染を防ぐため、環境負荷が小さく連続運転に強い2ストオイルも必要とされているのも事実です。

現在筆者は燃焼効率が高く白煙が少ない(白煙が少ないガソリンもオイルも燃え切ってると考えていいようです)かつ、潤滑性能が高いということで少々高価ですがFD規格のオイルを推奨しています。FD規格のオイルもまたほぼ大半が部分合成油ですが、事実上現存している2ストエンジン車がほとんど。旧型車というのはオイルメーカーも想定済みでしょうし、ブローやオーバーホールを経験してオイルシールも現在の素材に交換済みの個体も多いでしょう。仮にオイルシールが破損したところで、オーバーホール時期が来たと思って新品のオーバーホールキットに換えてしまえばいいと考えています。それよりも極力、環境性能の高いオイルを選んで2スト車が走る事が許される環境を残すことを優先すべきでしょう。

念のため、ちょっとオイルが余ったからと言って2スト車に4ストオイルを使う、4スト車に2ストオイルを使うということは絶対にしないでください。オイル特性がまったく違うのでブローの原因になります。

愛車の指定オイルを確認してみよう

エンジンオイルの性能は値段と相関関係にあるということ自体は間違っていないでしょう。ただし闇雲に高いオイルを入れればいいというわけではありません。値段よりも粘度・グレード・スペックがオイルを入れるクルマに合っているかが重要です。軽自動車にスポーツカー用のオイルを入れても、オーバースペックどころか粘度が合わなくてかえって燃費が悪化して逆効果ということもありうるのです。

オイル交換も整備工場任せという方も、自分のクルマにはどのオイルが指定されているのか、どういう理由からそのオイルが指定されているのかを考えてみると自分でできるカーケアの幅も広がるかもしれません。

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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鈴木 修一郎

愛知県名古屋市在住。幼少期より自動車が好きで、物心着く前から関心の対象はニューモデルよりもクラシックカー。免許取得後念願の昭和44年型スバル360スーパーDX購入、その後昭和48年型トヨタセリカLB2000GTを購入し現在も所有、今気になるのは縦目以前のオールドメルセデス。普段、普通の会社員をしつつ、休日は購入から20年近くたったスバル360のDIYレストアに挑戦中。実車のほかカーモデルやスロットカーも嗜み、最近はフルスクラッチで市販キットでモデル化されていない車種も製作。プロフ画像は最近完成したタミヤ1/12Gr.5セリカLBターボのラジコンボディをベースに市販車仕様に改造し自分の愛車を再現した初期型セリカLB2000GT。いつかはドイツに移住し愛車のセリカLBでヒストリックナンバーを取得しアウトバーンを走るのが夢。

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