年間平均湿度68%、高温多湿な日本におけるクルマにとって最も過酷な状況とは?

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高温多湿と言われる日本の気候。地域によっても暑かったり雪が降ったりなどの差はあるが、カラッと気持ち良い適温かつ適度な湿度の日は春先と秋の数日しかない気がする。特に近年は気候変動の影響もあって気温が高くなる傾向にあり、今年の夏は車の外気温計が40度を表示していたことがあった。地球の様々な場所で使われるように考えられているクルマにとっても、結構コタエタのではないかと思われる。

まず、湿度の影響でいうと内外装で使われる樹脂や接着剤、スポンジが分解されやすくなる(気がする)。こういったものは加水分解といって長く使っているうちに水分と反応してボロボロになってくる。スニーカーなどで履いてないのにいつの間にかソールが剥がれたりすることがあるが、それも加水分解の影響だ。最近は少ないと思うが、天井の落ちるクルマは接着剤や中間のスポンジが機能しなくなって起こるもの。

また、クルマのフロントにあるラジエーターやエアコンのコンデンサー(熱交換器。家庭のエアコンでいうところの室外機)の回りにも、隙間風を防止するためのスポンジが使われているが、これも長年つかうとボロボロになったり、どこかへ飛んでいって完全に無くなっていることもある。同じクルマを高温多湿な日本と、乾燥した地域で比較したわけではないので、日本でしか起こらない現象なのかまでは分からないのだが、ほっといても傷んでいく部品は存在するのだ。

高温多湿 クルマ
▲ベルトの溝がひび割れてきたら、そろそろ交換時期。交換距離の目安はあるが、高速走行が多いと過熱しにくいので寿命が長くなる。

高温多湿な環境でクルマを放置するのは過酷

湿気という点で、顕著なのがボディや部品のサビ。特にサスペンションやブレーキ、マフラーなどがある下回りは湿気が溜まりやすい。湿気による影響はクルマを乗らないで放置しておくほど出やすくなる。多分、クルマ周辺や車内の換気が出来ず、露が付いてもずっと残ったままになるなどの原因があると思う。湿気が80%くらいの場所にずっと放置すると、内装も酷いことになることがある。それはカビが生えること。面白いことに、人が触れたハンドルやシフトノブ、ドアハンドルなどを中心に緑や白っぽいカビが大量に発生するのだ。

エンジンも多湿な環境で放置しておくと、内部にサビが出ることがある。実際に屋内で3年ほど放置したエンジンを開けてみたら、シリンダーやクランクシャフト、オイルパン内部の仕切り版(バッフルプレート)にまで赤サビが出ていてびっくりした。そのエンジン自体は、放置後の再始動もすんなり出来たので、開けなければサビの存在など全くわからないハズ。そのクルマは、マニュアルミッション車だったがクラッチディスクも錆び付いていて、最初はギヤが入らなくて困ってしまった(このようなときは、エンジンを止めた状態でトップギヤに入れておき、クラッチを踏んでからエンジンを掛けると固着が解けやすい)。そんなことで、高温多湿な環境で放置するのは結構過酷と言える。

高温多湿 クルマ
▲湿気の多いガレージで長期保管していたエンジンの内部パーツ。赤サビが出ていた。たまにはエンジンを回して上げないとダメかも。換気や湿度管理がしっかりできるガレージならマシだったかも。

温度がゴムに悪影響を与える

走行しているクルマでは、当然のことながら温度の影響が大きいと思われる。個人的な経験で1番それを実感したのは38万kmを走破したホンダのステップワゴンを分解調査した時だ。ステップワゴンの使い方は長距離通勤で、郊外から主に高速道路を使うもので往復百数十キロを走行するという使われ方だった。エンジンの状態はヘッドカバーからのオイルにじみが目立ち始めた程度で、特に異音もなく正常そのもの(オーナーさん曰く、オイルは純正品を指定の距離で交換がベストだったとのこと)。

分解して、一番びっくりしたのは、オルタネーターやエアコンを回す補機ベルトを一回も換えたことがない!というところだった。つまり、高速道路主体の走行なのでフロントグリルからは常にフレッシュな外気が入りベルトが常に冷えた状態で動かされていたことが、驚きの長寿命につながったとも思われる。他のゴムホースも、まだ使えそうな状態をキープしていており、温度がいかにゴムに悪影響を与えるか(適度に冷やせば長持ちするか)の実証例だった。

この事例の逆パターンの乗り方というと、夏場の渋滞ということになる。高速巡航と違い、ラジエーターやエアコンのファンが常に回り、アッチッチの空気でエンジンルームが満たされる環境が一番過酷な状況の1つといえるだろう。

高温多湿 クルマ
▲湿気の多いガレージで長期保管していたクルマの内装。手の触れたドアノブや上部はカビだらけ。

高温多湿 クルマ
▲同じくドア内装のアップ。ビニール系はまだいいが、布系でこうなると大変。車内もカビ臭くなる。

低速走行が多い使い方では、エンジンルームのチェックを忘れずに

よく知られていることだとは思うが、高速とか上り坂を走ってきてエンジンを止めた直後も結構温度が上がる。エンジンが止まると冷却系のウォーターポンプやラジエーターファンが停止し、その時点でエンジンの部品に溜まっている熱が冷却水に移り一時的に高温の状態になり、走行風による換気もないためにエンジンルームの温度も上がってしまう。冷却系がギリギリの状態のクルマだと、止めた直後に蒸気を噴上げることがあるが、温度上昇はエンジンを止めた後にも続くのだ。そのため、サーキットを走る人は走行後の熱のこもりを緩和するため、パドックに戻ってきたらエンジンを掛けたままボンネットを開けている。

一般使用で、ベルトやゴム類の寿命を伸ばしたいからといって渋滞を回避したり、家に帰ってきていちいちボンネットを開けたりするのは難しい。だけど、渋滞にハマったり、低速走行が多い使い方では、エンジンルームのチェックもちゃんと行ってトラブルを未然に防ぐようにしたいものだ。

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高山 則政

小学生の頃から機械が好きで、実家のエンジン付き農機具でメンテナンスに目覚め、運転免許取得前から不動バイクの再生などに勤しむ。現在は雑誌オートメカニック(内外出版社)でメンテナンス系記事を主に担当。自らエンジンやトランスミッションのオーバーホールを行うなど、アマチュア目線でありながらもプロ領域をのぞき見するのが好きで、海外のツールを取り寄せてテストすることもある。筑波サーキットで開催されたマツダ・ロードスターのワンメイクレース参戦ではシリーズチャンピオン獲得経験を持つなど、自身のドライビングスキルの向上にも取り組んでいる。

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