旧車好きの方へ。クラシックカー用タイヤを日本で手に入れてみて感じたこと

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クラシックカーを愛好される方にとって、地味に困ることの一つに「タイヤ」があるのではないでしょうか?当たり前ですが、自動車はタイヤが無ければ走ることは出来ません。

昨今の日本のクラシックカータイヤ事情

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ホイールの大径化とトレッド面のワイド化とローハイト化が年を追うごとにすすみ、ついには軽自動車ですら15インチの50扁平が珍しくなくなってきたいま、小径ホイールでハイトが高いナロータイヤ、標準のクラシックカーに使用可能なサイズのタイヤが年々ラインナップから消滅していくという昨今の状況は死活問題になりかねない話かと思います。

幸い、ファミリーセダンや360ccの軽自動車の場合はエコカー用の細いタイヤや軽トラック用の10インチタイヤでしのげる場合もあるのですが、スポーツカーの場合13インチ・14インチサイズの60~70扁平タイヤは絶望的な状態です。

筆者のセリカLBの場合、メーカー指定は185/70R13が標準で、人によっては安いエコカータイヤで済むからそれでいいやという話も聞くのですが、いつかは純正のスチールホイールを入手して極力カタログ写真のような純正準拠の外見に近づけたいと思っている筆者としては、今どきの直線基調のトレッドパターンでは結局満足できず、数年前に昔ながらのジグザグ模様の「ラヂアル」タイヤとでも言いたくなるようなタイヤを入手することはできないかと画策しました。

クラシックカー用タイヤを日本からネット通販で手に入れる

クラシックカー用タイヤ

そこで、ふと思い出したのが、博物館の所蔵車両のレストアを手掛けている職人さんの「よく、クラシックカーのレストアで質問されるのが、フォードT型のようなクラシックカーのタイヤってどこで手に入れるのか?という話があるんですが、実はアメリカやヨーロッパではクラシックカー用のタイヤというのが今でも生産されていて、今どきのナイロンコード入りのフォードT型用タイヤなんてのもあるんですよ。」という、話でした。海外にフォードT型用のタイヤがあるくらいだから、1960~1970年代のスポーツカー向けのタイヤもあるのでは?と思い、グーグル検索で「classic car tire」で検索してみると・・・「自分はなぜ今までこれに気づいてなかったんだ」この、一言でした。

言語の壁こそあれWeb経由でモニターに現れたそれは、まさしく自分の求めていたすべてでした。フォードT型のような木製リムのクラシックカーの細いタイヤから、20世紀半ばフィンテール全盛時代のホワイトウォールタイヤ、もはや日本では商用車ですらお目にかかる機会が少なくなったバイアスタイヤ、果ては葉巻型フォーミュラマシン用のタイヤやアメリカンオールディーズのホットロッド用のタイヤまでありとあらゆるクラシックカー用タイヤのネット通販のオーダーフォームがまるで筆者がくるのをずっと待っていたかのように並んでいました。

クラシックカー用タイヤ

何のことは無く、ヨーロッパやアメリカでは普通にクラシックカー用のタイヤが売られていて、ダンロップ、ミシュラン、ピレリ、ファイアストン、グッドイヤー、BFグッドリッチといった日本でもおなじみの海外銘柄でも「日本市場に流通してないだけ」の話で、本国では普通にクラシックカー用タイヤがラインアップされていました。ちなみに後日トヨタ博物館の初代トヨペットクラウンをよく見たらダンロップ製のホワイトウォールのバイアスタイヤをタイヤを履いていました。

生憎、筆者が希望する185/70R13タイヤで好みのトレッドパターンのタイヤは見つかりませんでしたが、幸いタイヤ径こそ10mm小さくなるものの筆者の6J幅のハヤシストリートの適合範囲内で、205/60R13でまさしく筆者の求めていたジグザグパターンのラジアルのタイヤがありました。

欧州にはクラシックカー用タイヤを生産しているメーカーがある

クラシックカー用タイヤ

なんと、オランダのVREDESTEIN(ヴェレデステイン、何分日本では市場展開していないので日本語表記は諸説あるようです)にはその名も「SPRINT CLASSIC(スプリントクラシック)」なるものがあります。主に1960年~1970年代のスポーツカーやGTカー向けの位置づけのタイヤです。ただし、流石は自転車大国オランダだけに自転車用タイヤではかなりの名門ブランドらしくロードバイク用のタイヤに関してはヴェレデステインのロードバイクタイヤは日本でも市場展開しているようで、筆者のビアンキのロードバイクもゆくゆくはセリカとおそろいでヴェレデステインにしようと思っています。

現在オランダには乗用車メーカーは存在せず、トラックメーカーのDAF社が存在するのみですが、それでも自転車からモータサイクル、自動車用まで全てのタイヤをラインアップし、クラシックカーに特化したタイヤまで生産しているタイヤメーカーが存在するという事実にヨーロッパの自動車文化の奥深さには圧倒される以外にありません。

横浜ゴムのタイヤアドバイザーの認定も持つ行きつけの整備工場からは、正直日本で市場展開していない海外ブランドのタイヤは日本での使用環境を耐えうるのか保証は出来ないし船代、輸入関税も入れると決して安いとは言えないこのタイヤの使用を勧めることは出来ない。という返答でしたが、それでもあのジグザグパターンのタイヤへの思いを断ち切ることなど出来る訳もなく、筆者の使用環境に堪える保証もないことは承知で、筆者のクラシックカーのへの理想への淡い期待を抱きオーダーを決意しました。最近はヨーロッパの通販サイトも海外発注に対応し、クレジットカードを使えば他国の通貨でも決済は可能です。意を決し、ブラウザ翻訳機能を使いつつオーダーフォームにどう入力するかを考えたその時でした。

日本にもクラシックカー用タイヤ専門商社の正規代理店を発見

クラシックカー用タイヤ

筆者が見ていたのはイギリスの「Vintage Tyre Supplies Ltd(ヴィテージタイヤサプライ社)」というクラシックカー用タイヤの専門商社で、「流石クラシックカーの国イギリス、クラシックカー用タイヤ専門の販社まであるのか」と感心し、英語でならどうにかオーダーくらいはできるだろうと思っていたのですが、よくよく調べると福岡の村上タイヤ(実はこの原稿を書くにあたって村上タイヤ様に問い合わせたところ奇遇にも村上社長がカレントライフの読者であるということが判明しました)というタイヤ販売店が日本でのヴィンテージタイヤサプライ社の正規代理店として提携しているということが判明したのです。

世界中のヴィンテージカー用タイヤをほぼ網羅しているヴィンテージカータイヤサプライ社のラインナップから自分の欲しいタイヤを見つけたら、それを日本の村上タイヤにオーダーするだけで手に入る・・・まさしくヴィンテージカー用のタイヤを探していた筆者にとってこれ以上ない僥倖でした。

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早速村上タイヤにスプリントクラシックの205/60R13を4本オーダー、ただしこのタイヤはスポット生産で常時在庫ではないので入荷は未定、価格も送料も為替レートによって変動するので入荷が確定しないとわからないという返答でしたが、通常、整備業界では部品発注で忌み嫌われるメーカーバックオーダー(納期未定・返品不可)もメーカーから必要な部品が確実に入手できるという意味では、走行不能の危機に瀕してる愛車の復活を告げる福音の鐘の音に等しい国産旧車オーナーの筆者にとっては些細な事でした。

オーダーから3ヶ月弱、ちょうど円安が進んだ時期なので当初の見積もりより金額は張ってしまいましたが、念願のジグザグパターンのラジアルタイヤが入荷、念願のタイヤを入手できた喜びは金額の事すらどうでもいい話でした。品質が全ての日本製と違い、成形時のバリも多くはめ替えをお願いした整備工場の社長が「RV用タイヤじゃあるまいしバランスとるのに80gもウェイトを使うんかよ」と苦笑していたのはご愛敬でしたが、実際に使って走行すると完全にクラシックカーに特化したタイヤのスペックに圧倒されました。

スプリントクラシックの205/60R13を使ってみた結果


出典:Vredstein Sprint Classicサイトより

それまで使っていたタイヤと比べるとかなり当たりの柔らかいのですが、まさに「柔を以って剛を制す」シャシーの剛性が緩く、ソフトでストローク量の大きいクラシックカーのスペックに特化した絶妙なしなりを持ったタイヤ剛性で、それでいてトレッド面は確実に路面を掴みつつタイヤの摩擦力に依存せず確実にシャシーやサスペンションのメカニカルグリップを確実に引き出すという素晴らしいタイヤで、タイヤがしなやかな分、パワーステアリングの無いクラシックカーでもステア操作が軽くなり轍にステアが持っていかれることもなくなるという、少なくとも昭和48年のセリカLBを愛車として使うに筆者には非の打ち所の無い、まさしく「自分が求めていた理想のタイヤ」でした。

早速、友人にタイヤを見せたところ今どき見る事の無いクラシカルなトレッドパターンにみな興味津々だったのですが、そのあとタイヤのサイズ表記を見て皆絶句していました。実はスプリントクラシックの正確なサイズ表記は「205/60VR13」なんとクラシックカー専用タイヤを謳いながらもスピードレンジは「V=240km」、正真正銘ヴィンテージカーのためのハイグリップタイヤだったのです。欧州のクラシックカー文化にはレストアだけでなくフェラーリ250GTOやポルシェカレラといったヴィンテージスポーツカーで200km/h近いスピードで本気でスポーツ走行するという文化も存在するという事実に畏怖の念すら抱きました。

クラシックカー用タイヤ

ヴェレデステイン社(オランダ)によると「スプリントクラシックは、クラシックカーの当時の外見を完璧に再現することを目的とし、クラシックカー愛好家が望むであろうデザインで開発されたものです。往時を思わせるクラシカルな外見に、サイドウォール部分にはスタイリッシュな模様も加えました。しかし、クラシカルな外見とは裏腹に、タイヤの中身は最新の技術を投入したハイスペックタイヤであり、スプリント(疾走)の名に恥じない性能を持っています。大きなサイズはスピードレンジW(270km/h)の規格に対応してます。」とのこと。

このタイヤの内部構造は、二重のスチールベルトと、一重のレーヨンケーシングで構成され、215/70R15サイズに関しては、二重のスチールベルトと二重のレーヨンケーシングとなっています。」なんとクラシカル外見を持ちながら最新技術を投入し続けているというのです。おそらく今なお「本物のクラシックカー」をサンプルに研究や実走テストを続けていることでしょう。

欧米の自動車の持つバックグラウンドの文化は凄い

クラシックカー用タイヤ

自動車の技術やスペックにおいては日本はもはや欧米を凌駕するレベルに達したのは紛れもない事実だと思いますが、やはりこういった自動車の持つバックグラウンドの文化にはタイヤ一本ですらまだまだ日本は欧米には遠く及ばないとこのとき思い知らされました。

しかし、最近は日本のヨコハマタイヤが往年のADVAN HF Type Dを再販するというアナウンスがありました。実は一部の360cc軽自動車マニアの間ではブリヂストンやヨコハマタイヤの5.00-10の10インチのバイアスタイヤが旧ロゴのまま現在でも生産されているという話が知られています。日本の自動車産業も技術だけでなくこういったバックグランドの文化もまた欧米並みの奥深さを持つ日が来ることを願っています。

[ライター/鈴木修一郎 画像提供/村上タイヤ・鈴木修一郎]

【取材協力】
■有限会社 村上タイヤ
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福岡県福岡市中央区平尾2-10-4
TEL:092-531-0961
FAX:092-522-8009
Email:info@murakamitire.co.jp
公式サイト:http://www.murakamitire.co.jp/

■Vintage Tyre Supplies Ltd
公式サイト:http://www.vintagetyres.jp/

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鈴木 修一郎

愛知県名古屋市在住。幼少期より自動車が好きで、物心着く前から関心の対象はニューモデルよりもクラシックカー。免許取得後念願の昭和44年型スバル360スーパーDX購入、その後昭和48年型トヨタセリカLB2000GTを購入し現在も所有、今気になるのは縦目以前のオールドメルセデス。普段、普通の会社員をしつつ、休日は購入から20年近くたったスバル360のDIYレストアに挑戦中。実車のほかカーモデルやスロットカーも嗜み、最近はフルスクラッチで市販キットでモデル化されていない車種も製作。プロフ画像は最近完成したタミヤ1/12Gr.5セリカLBターボのラジコンボディをベースに市販車仕様に改造し自分の愛車を再現した初期型セリカLB2000GT。いつかはドイツに移住し愛車のセリカLBでヒストリックナンバーを取得しアウトバーンを走るのが夢。

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