スーパーカーオーナー“あるある”。世間から見たスーパーカーの「印象」と「実際」はこんなに違う、という3つの事例

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皆様はスーパーカーに対してどういったイメージをお持ちだろうか。
うるさい?乗り心地が悪い?燃費が悪い?運転マナーが悪い?

今日はボクがじっさいに感じた、「世間の考えるスーパーカー」のイメージと、「実際のスーパーカー」とにおける乖離について述べてみたいと思う。

空ぶかしは必ずしも意図的にやっているわけではない。しかたのない場合もある

スーパーカーというと、「うるさい」「どこでもイキがって空ぶかしをする」というイメージがあるかもしれない。
ボクも以前はそう考えていた。
そう、スーパーカーにじっさいに乗るまで、そしてちょっと古いスーパーカーを運転するまでは。

街なかで空ぶかしをしているスーパーカーを見ると、「なぜ、わざわざ空ぶかしをするのか?」「そんなに目立ちたいのか?」と思うことだろう。

しかし、スーパーカー乗りの立場から、ボクは声を大にして言いたい。
あれは必ずしも「空ぶかしではなく、必要な場合があるのだ」と。

スーパーカーオーナーあるある

▲スーパーカーの排気音はやはり大きい

これについて解説してみよう。

まず、マニュアル・トランスミッション持つたいていのスーパーカーのクラッチは重い(クラッチを踏むのに大きな踏力を要する)。
スーパーカーのパワーは強大で、その出力を駆動力として路面に伝達するには、強力な圧着力を持つクラッチが不可欠だからだ。

さらには慣性重量を低減するため、一般的にフライホイールが軽い。
フライホイールが軽いとエンジンの吹け上がり、つまり回転数の上昇も軽やかになる。
しかし同時に回転数が落ちるのも早い。

一瞬で回転数が下がってくる特性を持つエンジン、そして重いクラッチをもつマニュアル・トランスミッション車で発進や車庫入れ、坂道発進をしようとなるとどうすべきか?

答えは簡単だ。
エンジン回転数を上げてクラッチをミートさせるしかない。

低速トルクが豊かなエンジンであればいいが、そうでない場合はある程度回転数を上げてクラッチを繋がないことには一瞬で「エンスト」してしまう。
そして、重いクラッチで「半クラ」を使うのは困難だ。

だから、そういったスーパーカーに乗る人びとはエンジン回転数を必要なだけ上げ、その一瞬にスパっとクラッチを繋ぐ。
これが傍から見て「空ぶかしをしている」ように見えるひとつの理由だ。

なお、スーパーカーにかんしては、半クラが「難しい」ということのほかに、「そもそも半クラを使いたくない」というオーナー側の事情もある。
スーパーカーのクラッチは高価だ。しかも、その交換にかかる費用、つまり工賃も高額だ。

だから、ボクらはクラッチに気を使う。できるだけすり減らないように。

たとえば、バックしての駐車時だと、AT車であれば、クリープにまかせて後進すればいい。アクセルを踏む必要はないだろう。
だが、マニュアル・トランスミッションを持つクルマは勝手にバックしてくれない。
バックさせるにはクラッチを繋ぐ必要があるが、多くの(普通の)クルマはエンジン回転数をさほど上げなくても、もしくはアイドリングからでも半クラッチを使用してバックさせることができるだろう。

スーパーカーオーナーあるある

▲もはやマニュアル・トランスミッションを持つクルマも少なくなってしまった

だが、スーパーカーは違う。
油断すると一瞬でエンストしてしまう。そして半クラッチはほぼ使えず、使えたとしてもクラッチの摩耗を気にすると多用はできない。

そしてボクらはやはりバックするにしてもエンジン回転数を上げ、クラッチを一瞬で繋ぐ。
そして繋いだらそのまま一気にバックして、クルマを駐車スペースに収めるのだ。
クラッチが繋がったまま、つまり「半クラではない状態」でバックするので、このときのスピードはけっこう速い。
そしてもちろん、傍から見ると「なんであんなにスピードを出してバックするのか」と思われるに違いない。

十分にスペースが確保されている駐車場であれば、このように「一瞬でクラッチを繋いで、そのままバックする」ことはできる。
問題は「狭い駐車スペースに入れる」場合で、このときはクラッチが繋がったままのスピードでバックすることは安全上、とうていできない。

こういった場合、ボクらは「クラッチを一瞬で繋ぐ」「クラッチをすぐ切る」をくりかえす。
半クラッチが使えないということは、単純に駆動力が「ON」と「OFF」でしか伝えることができないということだ。
その中間はない。

だからクラッチを繋いで(ON)ちょっとだけバックしてはクラッチを切り離し(OFF)、また安全を確認してから同じ動作を繰り返すのだ。
これが第三者目線だと「ブォンブォン」と何度も空ぶかしをしているように見える。

繰り返しになるが、ボクらは空ぶかしをしたくてやっているわけではない。
低負荷でエンジン回転数を上げることはエンジンにとっても良くないことを理解している。
そして、わざわざマニュアル・トランスミッションをもつスーパーカーに乗るクルマびとが、意図的に「クルマに悪い」ことをしようはずもない。

だから、「空ぶかし」のように見えても、実際のところスーパーカーオーナーは「必要だから」それを行っているということになり、けして自己アピールのためではない、ということも理解しておいて欲しい。

付け加えるならば、ほとんどのスーパーカーオーナーはその「空ぶかしに見える」状態において、周囲の人びとがよく思っていないこと、完全なる誤解から「またスーパーカー乗りがイキがっている」と認識されているであろうことを理解している。
よって、そのクルマを運転するスーパーカーオーナーは「大きな音を出して申し訳ない。だが、これしか方法がないのだ」と恐縮しているかもしれない。
そういった視点にて、スーパーカーを見守ってもらえると幸いだ。

スーパーカーオーナーあるある

▲クルマによっては、クラッチ交換のためにエンジン本体を降ろす必要がある。その場合、もちろん整備費用は高額になる

ここでクラッチの重さについて、ひとつ例をあげてみたいと思う。
ボクは以前、ポルシェ911に乗っていた。
この911はマニュアル・トランスミッションを搭載しており、とんでもなくクラッチが重かった。
そしてボクはこの911のクラッチを繋ぐ/切るとき、どうやら無意識に歯を食いしばっていたようだ。

ある日、ボクは定期検診のために歯科医院を訪れた。
そこでぼくの奥歯を見た医師はこう言ったのだ。
「なにか重量挙げとか、体に負担のかかる、歯を食いしばるようなスポーツしてます?奥歯がずいぶんすり減っているようですが」。

ボクはそういったスポーツをやってない。
そして思い当たるのはひとつしかない。
ポルシェ911のクラッチである。

そのときボクは思ったものだ。
スポーツカーに乗ること自体がじっさいにスポーツである、と。
スーパーカー乗りそれくらいの負担と(つねに)戦っているのだ、ということも頭の隅にでも入れておいていただけるとありがたい。

なお、現在のスーパーカーにおいて、その多くはトランスミッションに「デュアルクラッチ」を持つようになった。
しかしながら、そこに至るまでの時代に「シングルクラッチ」なるトランスミッションも存在する。

これは「クラッチ操作のみを、人力ではなく機械的に油圧アクチュエーターが行う」もので、「クラッチレスMT」と表現されることがある。
重いクラッチを踏む作業から開放された画期的なデバイスの登場で、スーパーカー乗りにとってはひとつの革命ではあったが、それでも「クラッチの摩耗」という問題は解消されなかった。

スーパーカーオーナーあるある

▲クラッチ操作から開放され、パドルのみでシフトチェンジできるとは、じつに良い世の中になった

なお、このシングルクラッチについても逸話がある。
あるスーパーカーオーナーのクルマ(シングルクラッチ搭載車)が故障した。クルマが動くには動くが、一定回転数以上にエンジンが回らず、このままでは公道走行ができない。
スピードが出ず、そうこうすれば追突を招くなどかえって危険と判断して積車を呼び、クルマを積んでディーラーまで移送することになった。

クルマを積み込むには繊細な動きが求められるが、このときの積車のドライバーはシングルクラッチの操作に慣れておらず、荷台にスーパーカーを載せるのに半クラッチを多用してしまった。
その結果どうなったか?
そのスーパーカーのクラッチは「ただ一回、積車に載せる作業のためだけに」寿命を終えることになった。
それくらいシングルクラッチはナーバスであり、操作には理解と慎重さを要すると考えていい。
ほかにも狭いショップ内で何度も車を切り替えして移動させるだけでクラッチを焼いてしまった例など、同様のケースは多数ある。

だから、スーパーカーオーナーはシングルクラッチ採用のクルマであっても、クラッチの摩耗に気を使いながら「ON」と「OFF」だけで狭小スペースでの前進や後退を行うことに変わりはない。
こういったシングルクラッチを採用する車は「ランボルギーニ・ガヤルド」「フェラーリF430」「マセラティ・グラントゥーリズモ」などがある(すべてがそうではない)。

スーパーカーオーナーあるある

▲クルマの構造を知れば知るほど、その動かし方に制約が生じる可能性がある。しかし無知では乗れないのがスーパーカーでもある

スーパーカーだからといって信号が青になると同時にダッシュするわけではない

多くの人はこう思っているはずだ。
スーパーカーは信号が変わるとともに猛ダッシュするものだ、と。

だが、実際は違う。

まず、マニュアル・トランスミッション採用のスーパーカーだと、発進時にそのオーナーは「クラッチをつなぐ」という難易度の高い作業に挑んでいる。
そして、クラッチをできるだけすり減らさないようにと考えている。
だから、いたずらにクラッチを摩耗するだけの猛ダッシュを行うことはまずない、と考えていい。

これはトランスミッションがマニュアルであってもシングルクラッチであっても、デュアルクラッチでも同じだ。
高回転でクラッチをミートするということは、クラッチに対してはもちろん、車体にも負担がかかる。

そしてスーパーカーオーナーは何が車体に負担をかけ損耗に繋がるかを知っているし、信号ダッシュで速さを見せつけなくとも、じゅうぶんに自分のクルマが速いことも知っている。
速さを試すには、もっと安全で、同レベルの性能を持つクルマがいて、自分のスキルも要求される高レベルな環境のほうがいい。
だからスーパーカーオーナーは公道で無益な争いをしたり、わざわざそのクルマの速さを見せつけるようなことはしないはずだ、とボクは考えている。

じっさいに信号が変わってスタートする時、真っ先に飛び出すクルマはどういった車種かを注視してほしい。
きっとそれはスーパーカーではない、べつのクルマだとボクは思う。

参考までに、マニュアル・トランスミッション搭載車の加速はAT車やデュアルクラッチ採用車に比べると大きく劣る。
たとえば、ポルシェ911GT3(現行モデル)の0-100km/h加速において、トランスミッションにPDK(デュアルクラッチ)を持つモデルだと、3.4秒でこれを完了する。
だが、おなじ911GT3であっても、マニュアル・トランスミッション搭載車では0-100km/h加速に3.9秒を要する。
この差はけして小さいものではない。

スーパーカーオーナーあるある

▲意外とスーパーカーは信号ダッシュをしない(はずだ)

駐車スペース外に駐車しているスーパーカーがあったとしても、それは必ずしも意図したものではない可能性もある

もしかすると、駐車スペース以外にスーパーカーが停めてあるのを見たことがあるのかもしれない。
もしくは、身障者スペースに駐車しているスーパーカーを見たことがある人もいるかもしれない。
そんな状況に遭遇したとき、きっと「スーパーカーオーナーは、我がもの顔でスペースを独占している」と思うだろう。

しかし、それは必ずしもスーパーカーオーナーの意思で行っているのではない可能性もある。

ボクの経験だとこうだ。

スーパーカーに乗ってどこかへ出かけたとする。
そうすると、そこの施設側ではトラブルを恐れ(スーパーカーに他の車が接触するなど)、スーパーカーを特別な場所へ誘導して駐車させることがある。

そこはもともと駐車スペースではないところかもしれないし、身障者スペースという可能性もある。

もしくは、その施設が「ここはスーパーカーオーナーも利用する場所である」ということを他の来場者に訴求するため、あえて目立つ場所(車寄せやロータリーなど)にスーパーカーを誘導する場合だってある。
もちろんそこも通常は車を停めるところではないので、第三者から見るとスーパーカーが「マナーを無視して」駐車しているように見えるのも無理はない。

じっさいに、ある商業施設で、ボクは身障者用スペースに案内されたことがある。
そのときにボクはそこに停めても本当に問題はないのかということを確認し、そして必要になればすぐにクルマを移動させるのでその際は呼んで欲しい、ということをお店の人に伝えてクルマをはなれた。

そののち店内に入って用事を済ませていると、背後からこういった親子の会話が聞こえてきた。

「身障者スペースにスーパーカーが停まっているよ」
「どう見ても身障者の乗るクルマではないのにね」
「きっと頭に障害があるんだろう」

スーパーカーオーナーあるある

▲スーパーカーはいろいろな意味で議論を呼ぶことがある

もちろんその親子はボクがそのスーパーカーのオーナーであることは知らないし、どういった経緯でぼくがそこへクルマを停めることになったのかを知る由はない。
ただ、世間からすると「そう見える」というだけのことだ。

以上がボクの考える、「世間の考えるスーパーカー」のイメージと、「実際のスーパーカー」とにおける乖離だ。
もちろんスーパーカーといってもこれにすべてが当てはまるわけではないし、オーナーにすべてが当てはまるわけではない。

ただ、「物ごとは見たとおりではないかもしれない」ということは理解して欲しい、と思う。
それと同時に、スーパーカーに乗るということはそれだけで誤解をまねく可能性があること、だからこそボク自身もいちスーパーカーオーナーとして、他のクルマの手本になるような運転を心がける必要があることも常に意識している。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]

JUN MASUDA

新しいモノ、テクノロジー好き。「クルマ好き」に分類されるはずだが、一般にはそれを隠して生きている。クルマだと軽自動車、スーパーカー、電気自動車まで興味を広く持つ。どんなクルマにも作られた人の魂が込められていると信じていて、そのため「よりデザイナーが情熱を注いだであろう」珍車がとくに好き。座右の銘は「情熱と愛情さえあればなんとかなる」。職業は(それが職業と言えるならば)投資家、ブロガー。運営しているブログ「Life in the FAST LANE.」http://intensive911.com/

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