VW一筋18年!想いをカタチにする『シルバーレスト』代表・野々下智之さん(42才)

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さて、前回の記事ではカルマンギアオーナーの竹下さんをご紹介しましたが、今回はその主治医である『シルバーレスト』代表・野々下智之さん(42才)へのインタビューをお届けいたします。

『ノノさん』の愛称で慕われる野々下智之さんが経営しているシルバーレストは、埼玉県川口市にあるフォルクスワーゲン専門のテクニカルショップです。

オールドワーゲンのことならなんでもお任せ!この道18年の野々下さんは、小さいころからメカに魅了され続け、職人気質でありながらも気さくでお話上手なお人柄。

ひとことに『レストア』というだけでは収まらない、『ノノさん』のモノ創りに対する心意気に迫ってみたいと思います!

VW一筋18年!想いをカタチにする『シルバーレスト』代表・野々下智之さん(42才)

シルバーレストってどんなところ?

最寄り駅であるJR東川口駅から車で10分ほど。埼玉県川口市石神のとある一画、古民家カフェが並ぶ趣(おもむき)たっぷりな佇まいのなかに『シルバーレスト』ファクトリーは存在します。

主な取り扱い分野は、1950年~70年代のフォルクスワーゲン車。

現在は世界各国に工場を構えているVWですが、シルバーレストではとりわけドイツ工場で生産されていた、ある種『真のドイツ車』であるVW車をメインとしているそう。

VW一筋18年!想いをカタチにする『シルバーレスト』代表・野々下智之さん(42才)

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レトロ調のガーデニングが施されたエントランスが、オシャレで楽しいオールドワーゲンの世界へといざないます。

大きな扉を開けば、天井が高く広い作業スペースがお目見えし、入庫中のクルマたちで大にぎわい!

野々下さんはこの空間の中、たったお一人で、整備から溶接にいたる何から何までをこなしているのです。

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▲ロフトから見下ろしたファクトリー内部

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▲溶接ブース

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▲オフィス内部

なかにはとんでもないレアな個体までもが入庫されてくるというシルバーレスト。

ドイツが初めて船便でヤナセ宛てに輸送したType1(通称ビートル)のうち、3台だけオープンモデルを混ぜてきたそうなのですが、なんとそのうちの1台が入庫中でした!10数年に渡り野々下さんが面倒を見ているオーナーカーであり、今はエンジンのOHを手掛けている最中です。

ワーゲンのレストアショップは全国的に見ても相当数が存在しているはずですが、そんな途方もないレベルの希少車がやってきてしまうとは…!野々下さん、恐るべし(笑)。

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▲左奥が日本に3台上陸してきたコンバチビートルのうちの1台!

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▲ミュージアムをイメージしたポップで可愛らしいブースには、VWの歴史についてのパネルが展示されています。手前の塗装を剥がしている途中の個体は、野々下さん所有の1957年式カルマンギア

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▲今年のGW中にカルフォルニアからやってきたType1(1955年式)。ドイツ国内のビートルの生産ラインは、その後ゴルフIおよびIIのラインへと引き継がれていった模様。車種は変われどType1からゴルフIIまでは、ベアリングのサイズや比率が同じであったりと、変わらぬアイデンティティのもとに設計されていたそうです

VWの世界に引き込まれ、開業に至ったきっかけとは…?

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「なんだこのクルマは!…って、プラモデルの延長に見えたんだろうね…」

これが、まだ10代だった野々下少年がビートル(Type1)を目の当たりにしたときの、ファーストインプレッション。

幼いころよりプラモデルや機械いじりに興味津々だった野々下さんは、自宅にある機械を分解して探求心を満たす日々を送っていたそうです(笑)。

「動くモノのギミックに興味がわいて、気づけば勝手に家の物をバラしていましたね。バラす…というより壊していたのかな(笑)。分解しては元に戻そうとするんだけど、結局組み立てられなくて。パタパタ時計っていうのかな?数字がパタッ、パタッって変わる仕組みとか…ああいうモノがどうなっているんだろうって気になったり…。なんでも壊したなぁ。歯車が勝手に回っていく様子とかね。ちょうど筑波万博が開催されていたころのことです」

ロボット作りにも興味があった野々下さんは、やがて大学でロボット工学や物理を専攻したものの、世間の技術進化がご自身の思い描いていたものとは違う方向へ向かいはじめたことを感じ、転身を意識するようになりました。

「僕のちっちゃいころはまだ二足歩行ってほぼ不可能だったんですけど、どんどんロボットがすごいことになっていっちゃって…イメージ的には四角くってウィーウィーいうような、昔ながらのロボットが作りたかったんですよね」

次第にビートルやバイクのレストアをご自身で手掛けるようになり、自室をエンジンパーツだらけにしてしまうなど、自動車への道へと歩み出した野々下さん。

「自分のクルマが作りたい」という思いとともに整備士免許を取得し、ほぼ独学でクルマ創りや溶接技術を習得。

そしてついに『シルバーレスト』設立に至ったのです!

クルマは自分を表現するツール!野々下さんのモノ創り

作業をしながら淡々と話している風でありつつも、その一言一言には明確な“情熱”が感じられる野々下さん。

幼少期よりメカニカルなものに魅了され、初めて見たVW車に圧倒され…。このような原体験がシルバーレスト開業のもととなっているわけですが、ズバリ野々下さんにとっての『クルマ』とはどんな存在なのかをたずねてみました。

「自己表現の方法、自分を表現するツールのひとつですね」

そう聞いた刹那、ハっとさせられました…!なんとクリアで心に響く返答なのでしょう。

クルマのオーナー側であれば、『相棒・パートナー』などが一般的な回答のようにも思えますが、筆者のイメージでは、整備士としてクルマと向き合う方からは、もっと長々とした難解なセリフが返ってくると思っていたのです。

即答した野々下さんの口調には、一瞬の迷いすらありませんでした。

「ファッションと一緒です。見たり聞いたりしたものを、自分のフィルターを通して創って表現したものが僕のクルマ、作品です」

まさにその集大成とも言うべき『作品』がこちら。シルバーレストの看板車ともいえるType2(通称ワーゲンバス)は、野々下さんならではのモディファイが施されており、これを目当てに、海外から来店する方も多いんだとか。

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▲お店のメインカーのType2(写真提供:シルバーレストWebサイトより)

現在は更なる夢の具現化へ向け、再びレストアの最中です。

しかも『レストア』という域には留まらず、フレームから作りこまれており、VW製のミッションに、スバル インプレッサ(2000cc)のエンジンを組んで換装。土に還る直前だったボディも鉄板1枚から叩き出したり、異素材を繋ぎ合わせたりと、昔の飛行機をイメージして製作したそうです。

「『できるかどうか』というより『する』んです。純正パーツどうしをつなげることは誰でもできるけど、例えば“他車種のヘッドライトを装着したい”と言われれば、それをするのが僕の仕事です。本業は“修理”ではあるんですけど、このクルマは落ちているものを集めたりして、既製品も少しは混ざっているけど極力使わず組み上げて…まさに1/1プラモデルですね(笑)」

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▲エンジンは水平対向であるインプレッサのものを搭載

まだまだ進化し続ける看板車Type2!

入庫車両の作業の合間に手掛けているので、ちょっとずつのレストアではありますが、そんな在り様があたかも、常に想像力を追求すべく“未完成”を謳う『某ネズミの王国(千葉県浦安市)』のような印象を受けました。

「自分のクルマが作りたい」…野々下さんの夢。日々叶えながら、どんどん次の夢を追い続けているのでしょう。

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▲Type2の以前の姿(写真提供:シルバーレストWebサイトより)

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▲野々下さんお手製のオシャレな椅子。作品名『WORK CHAIR』

古いクルマと向き合っていくために…

取材にお邪魔した日は営業日でもあったので、シルバーレストに入庫中のオーナーカーを整備する様子も見学させていただきました。

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▲オーナーカーのType2を整備している野々下さん

当時のエンジンの部品精度の最小単位は、現行車のそれより大きく、クリアランスが多いため、高粘度(20w-50)のエンジンオイルを採用し、油膜がしっかり保たれるようにしているそうです。

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▲シルバーレストのツールキャビネット

造りがシンプルな50~60年前のクルマを手掛けているので、その当時なかった工具は必要ないというスタンスで取り揃えられているツール類。

ドイツ車ゆえに、ハゼットやスタビレーのようなブランドを使っているかと思いきや、意外にもMADE IN JAPANの工具がお気に入りだと言う野々下さん。キャビネット内もKTC neprosやTONEのロゴが目立ちました。

取り扱い分野はドイツ車でありつつも、先のインプレッサのエンジンしかり、日本製の良い部分にも目を向ける柔軟な姿勢が素敵です。

せっかくなので、作業風景を見るだけでなく、古いクルマとどのように向き合っていけば良いか、アドバイスも伺いました。

「古いクルマということは、そのぶんたくさんの人の手(クセ)が入っているということなので、それを急には見抜けないでしょうから、ちょっとずつ知っていこうとすると面白いと思います。ワーゲンはどこでも誰でも直せるくらいシンプルにできているがゆえ、中途半端な状態のままになっちゃっている個体もあります。まずは綺麗にしようと心掛けることから始めるといいですね。このネジなんだろうって疑問をもったり…外してみたら構造もわかるし、油を差してあげようと思ってみるとかね」

まずは『知ろうとしてあげること』。

野々下さん自身も、お客さんのクルマを見れば、なんとなくその人の性格がわかるそう!足回りを分解してみれば、どんな場所で暮らしているのかも知ることができるそうです。

古いがため、やはりただ乗るだけというわけにはいかないので、いつもと違う音がする、エンジンのかかり方が違うなど、五感を発揮してクルマの機嫌に気が付いてあげる姿勢が大切だと教えてくださった野々下さん。

観察をして、少しでも早く異変に気が付くことができさえすれば、そのぶんすみやかに対処もしやすくなりますものね。

クルマを“五感”で理解するという感覚は、静粛性に富んだ現行車に慣れきってしまった人にとっては、ちょっとピンと来ないかもしれません。インタビューでも、「今の人間が忘れてしまった感覚」と表現されていましたが、まさにその通りでしょう。

「古いから壊れやすいのではなく、古いクルマが現存しているのは、基本設計が良かったからこそ」

格言のようにも感じられたこのセリフ…筆者の中でも妙に納得がいく一言でした。

どうか、今後オールドワーゲンを検討中の方々の心にも響きますように!

取材後記 ~まだまだ広がる可能性~

冒頭でもご紹介したとおり、50~70年代のVW車を取り扱うシルバーレストですが、今後はヴィンテージポルシェのレストアも手掛けていきたいという野望があるのだとか!

その第一歩として、なんとヨーロッパへ車両探しの旅に出た野々下さん。

そこには国内流通車ではなく、あえて日本人の手が入っていない個体を入手したいというこだわりがありました。

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▲(写真提供:野々下智之さん)

これぞと思った356との出逢いはあったものの、残念ながら輸入の段階で問題が発生したために、日本へのお迎えは果たせなかったそう…。ですが、必ずリベンジするとの意気込みを語ってくださいました!

『SILVER REST』…銀器置きにちなみ、シルバー(古いもの)を休ませる(REST)場所として名付けられた、美しい響きのショップ名。

“レスト”には『レストア』の意味も込められているそうです(高齢者のことをシルバーと呼ぶようになったのは、現在のJR、当時国鉄と呼ばれていた1970年代にシルバーシートを導入したことがきっかけなのだと教えてくださいました)。

今はフォルクスワーゲン達の憩いの場になっている野々下さんの『シルバーレスト』、きっと近い将来、ポルシェ達にとってもホッと一息つける空間になっていることでしょう。

シルバーレスト・野々下さん、インタビューのご協力、ありがとうございました!

ショッププロフィール

VW一筋18年!想いをカタチにする『シルバーレスト』代表・野々下智之さん(42才)

▲(写真提供:シルバーレストWebサイトより)

店名:シルバーレスト(SILVER REST)
代表:野々下智之さん
年齢:42才
住所:〒333-0823 埼玉県川口市石神715
Tel:048-424-4071
Fax:048-424-4072
Mail:factory@silverrest.com
URL:http://www.silverrest.com

愛車1:フォルクスワーゲン ゴルフII(19E型)
年式:1988年式
ミッション:5速MT

愛車2:フォルクスワーゲン カルマンギア
年式:1957年式
ミッション:4速MT

愛車3:フォルクスワーゲン Type3
年式:1972年式
ミッション:3速AT
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[ライター・カメラ/細谷 明日葉]

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細谷明日葉

誰からの洗礼も受けず、ただ何となくクルマ好きになっていただけの平々凡々な一人っ子。愛車はダイハツコペンとロータスエリーゼ。夜戦と称してはクルマで夜間徘徊をしてみたり、天体観測をしてみたり、一見夜行性と思われがちですが工具集めや園芸・フラワーアレンジメントも嗜み、ちゃんと陽の光も浴びています。多分生涯コペンとエリーゼを愛し続けるけれど、最近どうもラテン車が気になって気になって、バックミラーにアルファロメオのグリルが映ると無性にムラムラ。メガーヌRSも気になるし、けどシロッコRも捨てがたい、遠征時はV90も良さそうだなと思ったり…つまるところは節操なし。グッズや印刷物のデザイン等を手掛け、愛車たちを養うべく奮闘しているデジタルネイティブ世代。

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