V10&V12エンジン全盛期に想いを馳せて。レトロゲームで往年のF1の楽しさを再確認する

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近年は環境性能向上のためエンジンのダウンサイジング化が進み、大排気量の自然吸気エンジンは、ほぼ絶滅危惧種になりつつあります。それは市販モデルもモータースポーツの世界も同じ。過給機もハイブリッドシステムも付かない自然吸気エンジンのサウンドが聞けなくなる日もそう遠いことではないかもしれません。
そんなことを考えているときに無性に聴きたくなったのが、往年のフェラーリF1マシンに搭載されていたV型12気筒のエンジンサウンド。官能的なソプラノサウンドに熱くなった往年のF1を体験したくなり、思わず手元にあったセガサターン向けゲームソフト『F-1 ライブインフォメーション』を久しぶりにプレイしてみました。すると、そこには最近忘れかけていたF1の興奮、多気筒・自然吸気エンジンの魅力が詰まっていたのです。

レースの楽しさは速さだけではない

北沢剛司

現在、自動車レースの最高峰であるF1のパワーユニットは、排気量1.6リッターのV型6気筒ターボエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたものが使われています。最近はスピードアップにつながるレギュレーション変更により、コースレコードを更新する機会が増え、目を見張る速さを実現しています。その一方で、いわゆるエグゾーストノートは低音の籠った音となり、イマイチ迫力に欠けるのは否めません。

また、電気モーターを動力源としたフォーミュラEは、環境性能に優れた次世代のモータースポーツとして、参戦するメーカーが増えています。ただ個人的には、フォーミュラEのレースを最初に見たときの衝撃がいまだに忘れられません。レースといえば高回転域で回る迫力のエンジンサウンドが染みついているだけに、電気モーターの「ヒューン」という音しかしないレース風景は、まるで実車版の『タミヤRCカーグランプリ』を見ているようでした。いくら速くても、いくら激しいバトルがあっても、エンジン音が伴わないと感情移入できない自分がいたのです。

そこで改めて感じたのは、レースの楽しみは決して速さだけではないということ。特にレース用エンジンが発する音は、レースを盛り上げる重要な要素のひとつといえます。パワーを限界まで引き出したレース用エンジンは、勝利のためにエンジニアが英知を結集して製作したもの。極限の精度で組み立てられたエンジンが全開で回っているときの音は、まさに魂の雄叫びそのものです。

興味のない人にはノイズ以外の何物でもありませんが、ファンにとっては興奮を高める最高のミュージックです。特に甲高いエグゾーストノートを発する、V型10気筒、V型12気筒などの多気筒・自然吸気エンジンの音は別格。サーキットで聞くと、鳥肌が立つような刺激と、えもいわれぬ高揚感があります。

筆者がナマで見たレーシングマシンのなかでは、1991年のル・マン24時間レースで優勝したマツダ 787Bの4ローターサウンド、それにSUPER GTに以前出場していたHonda HSV-010 GTのV8サウンドが強く印象に残っています。どちらも甲高いエグゾーストノートで、「咆哮」という言葉がふさわしい最高のミュージックでした。

レトロゲームで当時のF1を追体験する

北沢剛司

そんなときにふと思い出したのがレトロゲームの存在。V12エンジン搭載のF1マシンが活躍していた1990年代のテレビゲームを今改めてプレイしてみると、何か新たな発見があるのではないかと考えたのです。そこで選んでみたのが、セガが1995年に発売した『F-1 ライブインフォメーション』。これは当時同社が発売していたテレビゲーム機、『セガサターン』向けのゲームソフトです。

単純に往年のマシンをテレビゲームで疑似体験するだけなら、英国のコードマスターズが発売している『F1 2018』などのF1公式ゲームがオススメです。近年の作品には、最新マシンだけでなく往年の名車たちも収録されているので、美しいグラフィックとリアルなサウンドで素晴らしい追体験ができるからです。そんな最新のCGで再現された名車たちも素晴らしいのですが、今回はあえて当時物にこだわってみました。その理由は、1995年当時の時代感も一緒に体験してみたかったからです。

北沢剛司

▲プレーヤーは5種類のなかから好きなマシンを選ぶことができる。ベネトンのミハエル・シューマッハ、ウィリアムズのデイモン・ヒル、マクラーレンのミカ・ハッキネン、フェラーリのジャン・アレジ、ティレルの片山右京と、懐かしい顔ぶれが揃う。

1995年のF1といえば、ベネトン・ルノーのミハエル・シューマッハと、ウィリアムズ・ルノーのデイモン・ヒルの一騎打ちとなったシーズン。フェラーリはV12エンジンを搭載する最後のマシンとなった412T2で出走。カナダGPでジャン・アレジがF1で唯一の優勝を飾っています。また、日本人ドライバーとして、片山右京、鈴木亜久里、井上隆智穂の3人がエントリーしていたという意味でも記憶に残るシーズンです。

実況付きで楽しむF1レースゲーム

北沢剛司

そんな時代につくられた『F-1 ライブインフォメーション』の最大の特徴は、ゲーム中に実況が入ること。しかも当時のフジテレビF1中継を担っていた解説の今宮純氏、ピットリポーターの川井一仁氏、そしてフジテレビの三宅正治アナウンサーが実況を担当するという本格的な内容だったのです。レース中に起こるさまざまな出来事を網羅するため、収録したコメントは数百枚の原稿に上り、スタジオレコーディングは15時間に及んだといわれています。

北沢剛司

▲画面右上にはライブ中継画面があり、レース中にアクシデントなどが起こるとその画面に切り替わり、実況が行われる。

実際にプレイしてみると、F1のテレビ中継さながらに、1995年シーズンの変更点、チーム体制、マシン、ドライバーの状況など、いろいろな解説をレース中に行ってくれます。3人の解説陣のやりとりを聞いているだけで、当時のF1の世界にタイムスリップできます。

もちろん、自分がドライビングミスをしたときには、「またクラッシュしています!」「集中力が落ちてきているのかもしれません」などと言われてしまう始末。ちなみに悪ノリしてコースを逆走したときには「いったい何を考えているのでしょうか!」というコメントが出るなど、プレーヤー以外の人にも楽しめる内容になっています。

北沢剛司

▲コースを逆走すると、今宮純さんと三宅正治アナウンサーからキビシイ突っ込みが入る。

しかし、難点も多くあります。最大の難点は、収録されるサーキットが3つしかないこと。モナコ・モンテカルロ市街地コース、ドイツ・ホッケンハイムリンク、日本の鈴鹿サーキット以外は、オリジナルコースが3つ用意されているだけで、そちらには当然実況なし。これはCD-ROMの限られたデータ容量の中で、あまりにも多くのコメントを収録してしまったことが原因といわれています。F1レースのゲームにも関わらず、わずか3戦しか楽しめないのは内容的に破綻していると言わざるを得ません。そのバランスの悪さがゲームとしての評価を下げる結果となってしまったのです。

北沢剛司

操縦性もかなりイージーで、オーバースピードでコーナーに突っ込んでも大クラッシュすることなく、いわゆる「壁ターン」を使っていくらでも曲がれてしまいます。肝心の実況も、数回プレイすると同じ解説の繰り返しであることがわかるため、ゲームをやり込むという意味での奥深さはほとんどありません。

しかし、このゲームには、そんな欠点を十分カバーするだけの魅力に溢れています。プレイできるチーム/ドライバーは5種類しかありませんが、その中にはフェラーリのジャン・アレジとティレル・ヤマハの片山右京が含まれています。ジャン・アレジを選択した場合は、F1最後のV12エンジンとなったフェラーリ412T2のエンジンサウンドが楽しめますし、片山右京を選んで鈴鹿の日本グランプリに優勝したときには、現実のレースでは聞くことのできなかった熱い実況を聞くことができます。

北沢剛司

実況で盛り上がったF1黄金期

レースゲームで実況を行うという斬新な試みを具現化した『F-1 ライブインフォメーション』。残念ながら続編がつくられることはありませんでした。その理由は、1996年に発売されたPS1用ゲームソフトの『Formula 1』。このゲームは、上記3人の実況に加え、1995年シーズンで使われた17種類の実在コースと12チーム・35人のドライバーが選べたため、内容面で完全に凌駕されてしまったのです。

今回『Formula 1』のほうも改めてプレイしてみましたが、ゲーム内容は明らかに優れているものの、実況はかなり控えめでした。そう考えると、レース中ひたすら喋り続ける『F-1 ライブインフォメーション』は、唯一無二の存在といえます。今でも時々プレイしたくなるのは、このゲームの個性が際立っている証拠でしょう。個人的には、実況シリーズのバリエーションとして、往年の古舘伊知郎バージョンとか、1995年F1開幕戦ブラジルGPの衛星生中継の最中に勃発した、熊倉重春氏と土屋圭市氏による激しすぎるトークバトルバージョンなども欲しいですね。

V10エンジンやV12エンジンの咆哮で魂を揺さぶられた往年のF1。今改めて体験すると、新たな感動が見つかるかもしれません。

[ライター・画像/北沢剛司]

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北沢 剛司

’70年代のいわゆる「スーパーカーブーム」の洗礼を受け、以来、クルマの世界にどっぷり浸かって大人になってしまった自動車ライター。ニューモデルを見るため20年以上ジュネーブ・モーターショーに通う一方、所有したクルマは’80〜’90年代のネオクラシックカーばかり。さらにミニカーやカタログなどの自動車趣味からモータースポーツまで、興味の対象は幅広い。自動車専門誌や一般誌での執筆をはじめ、輸入車関係の仕事などを幅広く手がけている。

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