これまで1度も新車を買ったことがないおっさんのクルマ屋さんとの付き合い方

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運転免許を取得してからウン10年。筆者は1度も新車を買ったことがない。本当にないのだ。だから、ディーラーへ行くのは部品を買いに行くか、専用の診断機で診てもらうときくらいだ。

ポルシェの神様

だから、新車の見積もりをもらったり、保証とかサービスをしてもらった経験がないのでまったく理解できない。その反面、中古車販売店や修理工場には勝手に入り浸って仲良くしてもらっていた。新車が欲しくなかったわけではないのだが、それ以上に旧いクルマの方に興味があったというのが正直な感覚だ。

*古い画像のため低解像度のものも含まれているが、そこはご容赦いただきたい

フォルクスワーゲンを所有していた時代に通ったお店で得たもの

ポルシェの神様

最初のフォルクスワーゲンは1969年式のType-Ⅰ(ビートル)だった。このクルマを買ったお店は、どちらかというと販売に徹する感じだった。このクルマを手に入れたときはまだ1年車検だったので、少なくとも年に1回以上は店に行っていた。近くを通ったときには、お店の方と並んでいる販売車両を眺めて、ああでもない、こうでもないといった会話を楽しんだりもした。しかし、入り浸るというほどではなかったように思う。

そのあと、カルマンギアを買ったお店は、独立したばかりだったことや、店主の方と年齢が近かったからだろうか。クルマを注文してから納車されるまで、週末になるとお店に通い、自分のクルマの完成に向けた作業を手伝ったりしていた。クルマが納車された後も、用もないのに時々お店に行ったり、工場の壁のペンキ塗りを手伝ったり、しばらくは入り浸っていた。この店を通じて、普段の仕事では知り合わないようなお客さんと仲良くなったり、一般ユーザーでは知らずに終わってしまうこともたくさん教えてもらった。

ポルシェの神様

ポルシェの神様

当時、フォルクスワーゲン関連のイベントがあると、他のお客さん達といっしょに参加して会場でBBQをしていた。クルマのイベントに行き、単にクルマを眺めるのではなく、BBQをして仲間としゃべるという楽しみ方がを知ったのもこのお店のおかげだった。

インターネットがだんだん一般的に浸透してきたのもこの頃だ。ML(メーリングリスト)を立ち上げたときに、オフラインミーティング(略称「オフミ」)として、各地のフォルクスワーゲンのイベントに便乗して集まり、そこでBBQをしたりして親交を深めた。その後、イベントに便乗するのではなく、メーリングリスト独自のイベントも何回か開催したこともあった。その仲間達も自分に合ったショップを探し、クルマだけを選ぶというよりは、ショップ選びも重要なポイントとして選択をしていたように感じた。

ポルシェの神様に出会ったナローポルシェ時代

ポルシェの神様

1965年式のポルシェ911、いわゆるナローポルシェに買い替えたとき、お世話になる店も変えた。たまたま当時の自宅の近くにあった輸入中古車販売をしていたお店の人から、近くのポルシェ専門の修理工場を紹介してもらった。

まだナンバーのなかった911を見るために、工場のオヤジさんは軽トラに乗って現れた。そしてニコニコと筆者の911を眺め、「かわいいねえ」と目を細めていたのが印象的だったのを鮮明に記憶している。このとき「このオヤジさんに任せたい」と直感的に思った。しばらくしてから、そのオヤジさんが一部で「ポルシェの神様」と言われている人だと教えられた。

個人輸入した直後、最初の車検を通してからも、しばらくはオイル交換をお願いしつつ、作業の仕方を教えてもらった。その後、サスペンション周りの移植もその工場にお願いした。いつも、優しく作業の内容を説明してくれたり、工場の一角の事務所でコーヒーも淹れてくれたりした。

オヤジさんは一部では気難しい人と言われたいたようだが、まったくそんな風に感じたことはなかった。しかし、友人と一緒に工場に行って他のクルマについて話していたとき、「他のお客さんのクルマを指差してどうのこうのということは止めてください、失礼にあたりますよ。それはうちの工場の中だけでなく、サービスエリアや駐車場でもそうです」と教えていただいたことがあった。それ以来、そのアドバイスは忠実に守っている。

ポルシェの神様の伝説は本当だった

ポルシェの神様

その後、筆者が少し遠くに引っ越した後、エンジンの吹け上がりがスムーズでなくなったことがあった。多分キャブの調整が狂ったのだろうと、工場へ伺うタイミングを確認しようと電話をした際、オヤジさんが「ちょっと電話で音を聞かせて」と言ってきた。そこでコードレスフォンを車庫に持ち出し、オヤジさんに音を聞いてもらった(携帯をまだ持ってなかった頃だ)。

フケ上がらないエンジン音を聞いたオヤジさんは「あー、それはスロージェットになんか詰まってるんだよ。横から見て真ん中あたりにある一番大きなマイナスねじを外すと出てくるジェットをクリーナーで掃除すれば治るよ。旧いポルシェ乗ってるんだから、それくらいは自分でできるようにならないとね」というではないか。

果たして、そのジェットを6本掃除したら、エンジンは見事に調子を取り戻し、ポルシェらしい吹け上がりになった。似たような伝説があると聞いたことがあったが、本当に目の当たりにして鳥肌がたったことを覚えている。

「良いお店」も「悪いお店」も存在しない。あるとすれば…

ポルシェの神様

以前から言ったり書いたりしているが、筆者は「良いお店」や「悪いお店」は存在しないと思っている。本当に「悪い店」があるとしたら、早々に淘汰されているはずだ。あるとすれば「自分に合う店」と「合わない店」の2通りだ。こればかりは人によって感じ方や考え方が異なるので、比べること自体にあまり意味があるとも思えない。ただ、同じ店で合うお客さん同士は大抵仲良くなれると思う。ニオイとまでは言わないが、トーンというかテンポというか、不思議と距離感が近いのかもしれない。

そして、個人的には、お店の方に対する敬意を忘れてはいけないと思っている。自分がお客様だからと言って、無理難題を押しつけたり、どう考えてもお店に取って不利益なことばかりをお願いしたりはしないというマナーも守った方がいいと考える。そうして構築できた関係は、あくまでも「クルマを通して」ではあるけれど、人間同士の関係に進化し、大げさではなく人生を豊かにしてくれるに違いない。

[ライター・撮影/ryoshr]

ryoshr

若い頃から空冷VWを楽しむ自称「クルマ好きのおっさん」。IT企業に勤務している知識を活かして、1990年代にナローポルシェをインターネット経由で個人輸入してしまう。その後は軸足をクルマへ移行させ、ついには自動車輸入販売の会社を始めたが、うまくいかず早々にIT業界に戻る。クルマそのものだけではなく、同じ趣味の仲間とのコミュニケーションも大切にしている。ネットとクルマの狭間でもがき続けるが、現在は某IT企業のサラリーマン。現在の反省車は17年落ちの白いセルシオ。久しぶりに道路の突起物を気にして走るクルマを楽しんでいる。

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