日本人が思うアメ車への憧憬との齟齬。キャデラック春日井に行って思ったこと

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先日、キャデラックというブランドの来歴について執筆させていただきましたが、ふと現在日本でキャデラックが買えるディーラーはどのくらいあるのだろう?と思いキャデラックの公式サイトを見たところ全国で正規ディーラー19店舗、サテライト/販売協力店15店舗という数字を見て愕然としました。キャデラックは「売れる、売れない」以前にまず買いたくても買える店舗が少ないという現実があるのです。

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

一方、比較的日本での販売で健闘しているジープは各県に4~5店舗、首都圏にいたっては20店舗くらいはあります。つまりブランドの知名度の高さから言えば、アメリカ車といえども販売店の展開次第で売れる可能性はいくらでもあるはずなのです。そのような中、キャデラックの販売店検索で「キャデラック春日井 ※2月11日(土・祝) グランドオープン」というのを見つけ、地元にキャデラックのショールームが新規オープンすると知り、自宅から20分ほどの場所なので実際に見に行くことにしました。

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

まず最初にいってみて思ったのは、キャデラック春日井のスタッフの方々はみんな、アメリカの自動車を、そしてなにより自動車というものを心から愛しているということでした。実はキャデラック春日井は、もとは昨年に日本市場をさってしまったフォードの正規販売店で、やはりフォード車には格別の思い入れがあるようで、マスタングの成功が影響したと言われる私の愛車の昭和48年セリカLBを乗り付けるや、皆さん食い入るように見入っていました。

さらに、応対してくれたのはキャデラック春日井のオーナー(!)そして私が初代マスタングが好きであること告げると、ショールームとなりのコレクションルームを案内してくれたのですが、そこにはオーナー自ら作ったというマスタングのモデルカーのディスプレイがありました。説明文もレイアウトも全てオーナーの手作りによるものでモデルカーも私物のコレクションだそうです。解説文の中には私が子供の頃、テレビ放送のたびにかじりついてみていた「バニシングin60」のエレノアの黄色いマスタング・マッハ1と、DVDを見て思わずコルトパイソン357の2.5インチのエアーガンを衝動買いしてしまった「ブリット」の緑色のJJZ109のプレートを付けた67マスタングGT390ファーストバックもありました。

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

キャデラックを見にきたはずがマスタングの話で盛り上がるという思わぬことに、聞けばここのオーナーはなんとフォードオートラマの立ち上げに関わった方で、テルスターやレーザーの名付け親でもあった方でした。まさか身近に、日本のフォード販売の歴史に深くかかわった方が居た事に驚いたと同時に、私が「オートラマ」と聞いて真っ先に「テルスター」の名を挙げたことを喜んでいただけたのは恐縮しきりでした。それだけにフォードの日本市場撤退はやはり残念だったようです。

アメリカ車の日本市場での不振について聞くと、日本市場におけるアメリカ車ブランドの訴求力を引き出すことに失敗した事に尽きるというのは、私もオーナーも一致した意見でした。一時期は、シボレーアストロやフォードトーラスワゴン等を芸能人が愛車にしたりでちょっとしたブームにもなったにもかかわらず、キャバリエやサターン、日本車キラーと鳴り物入りで登場したネオンが不振に終わったのも、アストロやトーラスはアメリカンサイズながらもギリギリ日本の道路事情でも使えてなおかつ、「アメリカ」を感じるクルマだったのにキャバリエやネオンは日本車を意識しすぎて「アメリカ」を感じる輸入車としての魅力がなかったからではないかという意見も一致しました。

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

しかし、グローバル戦略に関してオーナーは意外な見解を持っていらっしゃいました。「むしろアメリカ車メーカーは世界中の自動車市場を徹底的に研究してマーケティングに関しては現地の需要を掌握することには非常に長けている。それゆえに過度な現地化が進みすぎてしまい、輸入車に対してプレミアム性を求める日本では、特にフォードの場合フォーカスやKa等フォードの欧州現地法人の小型車をもってきたことが仇となってしまい、本来日本人が持つアメリカ車への憧憬との齟齬が出てしまい、一方本来のアメリカンブランドの魅力を持つアメリカ本国のモデルのグローバル化が遅れてしまった」ということでした。

あらゆる近代産業を生み出したビジネスの国の高度なマーケティング技術と、自動車の歴史と文化が国家の文化と歴史そのものの国が作り出した自動車のブランドの訴求力が上手くかみ合わなかったというのはなんとも皮肉な話です。

ところで、実は私プロフィール上ではメルセデス好きを公言していますが、前述のとおり一方でアメリカ車、マスタングやトランザムといったアメリカのマッスルカーも好きだったりします。私のように子供の頃は毎日のようにテレビで放映されていたアメリカのカーアクション映画や、ナイトライダーやエアーウルフ、マイアミバイス刑事等のアメリカドラマを見て育ち、MCハマーやマライア・キャリーを聴いて青春を過ごした現在40代くらいの人ならまだアメリカ車にはどこか憧憬を抱いているのではないでしょうか?

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

スーパーカーブーム世代にとってのカリスマがロータスヨーロッパやカウンタック、イニシャルD世代のカリスマがAE86なら、私の個人的な心情を吐露してしまうと、まさしく氷河期世代というあまりありがたくない名前を頂いてしまった我々にとってのカリスマはナイトライダーの黒い3rdトランザムであることを忘れられてしまっているような気がします。余談ですが「カーナビや自動運転技術のエンジニアにはナイトライダーのファンが多い」という話を聞いたことがあります。ナイトライダーのナイト2000を夢見て運転支援システムのエンジニアになった人も少なからずいるようでです。

過度に日本市場を意識したアメリカ車は「ぼくの欲しいアメリカ車はこれじゃない!」という部分もありました。その意味では現行の2Lターボにクラウン程度のボディサイズのキャデラックATSは今後右ハンドルが導入されれば、もしかしたら手が届くかもしれない、アメリカを感じるアメリカ車という要素は十分にありそうです。

ただ、そのナイトライダーが好きだった氷河期世代はその名が示す通り、現在社会的に恵まれている境遇にあると言えるとは思いません、いわゆる年齢×万円程度の月収が最低限保障されていたら今頃、ちょうどいい具合に手ごろになってきたアメリカ車が自家用車の選択肢に入る・・・という未来もあったのかもしれません。私自身ももうちょっと所得に余裕があれば自動車とまではいかなくても、マッキントッシュやボーズのホームオーディオが欲しいくらいです。紆余曲折はありましたがアメリカ車が世界市場を視野に入れ、日本の使用環境に合ったアメリカンブランドを感じるアメリカ車を作ろうという努力をしているも事実です。これであと、かつてアメリカ車に憧憬を抱いていた世代の待遇の改善と手近でアメリカ車が買える販売店の展開さえ叶えば、アメリカ車の商機もあるのではないでしょうか?

キャデラック春日井のグランドオープンでアメリカ車に思う事

現在日本で購入できるGM車のブランドはキャデラックとシボレーのみですが、もしポンティアックブランドが復活してカマロのバッジエンジニアリングでもいいので、日本の国交省の自動運転システム認可のタイミングで黒のファイアバード・トランザムの自動運転システム搭載車(もちろんナイト2000の野島昭生の音声ガイド付きで)が日本で発売されたら私もちょっと心が揺れるかも・・・と思いながらショールームを後にしました。

取材協力:
キャデラック春日井/シボレー春日井
https://kasugai.gmj-dealer.jp/
〒486-0817
愛知県春日井市東野町10-15-10
TEL:0568-56-0044
FAX:0568-81-6630
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日

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鈴木 修一郎

愛知県名古屋市在住。幼少期より自動車が好きで、物心着く前から関心の対象はニューモデルよりもクラシックカー。免許取得後念願の昭和44年型スバル360スーパーDX購入、その後昭和48年型トヨタセリカLB2000GTを購入し現在も所有、今気になるのは縦目以前のオールドメルセデス。普段、普通の会社員をしつつ、休日は購入から20年近くたったスバル360のDIYレストアに挑戦中。実車のほかカーモデルやスロットカーも嗜み、最近はフルスクラッチで市販キットでモデル化されていない車種も製作。プロフ画像は最近完成したタミヤ1/12Gr.5セリカLBターボのラジコンボディをベースに市販車仕様に改造し自分の愛車を再現した初期型セリカLB2000GT。いつかはドイツに移住し愛車のセリカLBでヒストリックナンバーを取得しアウトバーンを走るのが夢。

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