フォードの日本市場撤退について、カレントライフ編集部内で議論してみた

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フォードの日本国内市場から撤退するという報道に驚いた方は多いのではないでしょうか?奇しくも、今からちょうど20年前の1996年は、バブル崩壊に伴う経営難に陥ったマツダを救済するべく、フォードが出資比率を33.4%に引き上げ経営権を握った年でした。

しかもこの報道は、インポーターであるフォードジャパンが発表するより前に、メディアが報道しました。もしかしたら、インポーターの方にとっても青天の霹靂だったのかもしれません。

この報道について、カレントライフ編集部においても、すぐさま議論が交わされました。

登場人物:
本誌編集長渡辺氏(以後、渡辺)
ライター中込氏(以後、中込)
ライター山本氏(以後、山本)
ライター江上氏(以後、江上)

フォードが日本市場から撤退することについて報道された記事を読んでみて

——あるジャーナリストが書いた記事を読んでみて

中込:まあ、まず、まだしてないですし。なぜそう決断せざるをえなかったか、でしょうね。言うなら。※この座談会の時点では、フォードジャパンから正式なリリースはありませんでした。

江上:そこなんですね。タブーを承知でインポーターに取材に行った記事なら納得もできます。この方だって今までフォードジャパンにさんざん世話になっているはずでしょう?それが、撤退の報道となるやいなやこうやって手のひらを返すのですか?と言いたくなりますね。

中込:価格とブランドのバランスは言う通りだと思います。でも本国とのコミュニケーション不足、方針の不一致。問題の根幹は別のところにあるような気がします。

江上:他のインポーターもそうですけれど、自分たちは「(日本市場は)違うんじゃないかな」と思っても、本国の言われるがままにやるしかない現状があったのかもしれませんね…。

中込:フォードジャパンが何もしてなかったから当然、と言っているジャーナリストもいましたが、結構老舗のインポーターで看板掲げているブランドですよ。クルマだって日本で組み立ててましたからね。T型なんか。他方もう少し粘っても良かったのではないか、そんな感じはしますが。

江上:ひとつ、懸念しているのは、他のインポーターがこの動きに同調しなければよいなと。いまや、東京モーターショーに出展しないところも増えましたよね。それと同じ動きになればければよいなと。

中込:気がかりですね。

渡辺:フォードの小型車はドイツを中心としたヨーロッパで大変人気があり、シェアもトップクラスです。ドイツも自国の自動車メーカーが強い、日本も同様。そんな中なぜドイツで成功して日本で失敗したのか、興味があります。

中込:個人的にもフォード・アングリアとか、ヨーロッパフォード、自動車趣味の上がりのクルマだと思うのです。そういう自動車の大きな砦を失った、そんな印象もあります。フォードが撤退、というか「フォードに見捨てられた日本」というマーケット。寂しいですね。

日本の自動車市場はガラパゴス化している?

渡辺:やはり日本は独自の自動車文化なんでしょうかね。ディーゼルの普及も遅いし、自動車税しかり、軽自動車文化など。

中込:ちょっと深読みし過ぎかもしれませんが、そういうところまで考えてしまいます。

江上:「日本における輸入車=のれん代にお金を払う」この意味合いが大きいような気がします。自分も含めてですが。

渡辺:日本のガラパゴス化についていけないということでしょうか。

江上:米フォード・モーターの「収益改善への合理的な道筋」が見えないことが理由。これに尽きると思います。

中込:ウィスキー作りと似ています。ウィスキーは熟成に10年前後かかります。原酒を作っても回収できない。ヒュンダイなんか撤退した後、いいクルマたくさん出たし、浸透しかけていたところだから、もうちょっとでゼロ点に立てたのではないか、そんな予感もしていた矢先でした。確かに江上さんの指摘のところだと思うのですが、現場を見たのかな、収支報告書の数字だけで判断してないかな?「本社首脳陣が可能な限りできることはすべてやったのか」。ここは興味があるところです。トーラスにまで右ハンドル作った会社です。198万円からモンデオを販売していた頃のことを、今の本社の首脳陣は知っているのだろうか?そのくらいのことをしたのか?と聞きたいです。そう考えると、撤退の決断をしたフォードの決定には個人的には違和感を覚えます。

江上:確かにそうですね。

中込:でも、大事なところは「2位じゃダメ」な世界というところですよね。選ばれるためには、イメージも、クルマもよくって、価格など総合的に判断して「選ばれるクルマ」でなくてはならないのです。モノによってはメルセデスよりいいものもあると思うのですが、最後背中を推させる明確なキャラクター、アフォーダブル(納得感のある)な価格など、最後に背中を押す力が弱い。ここに尽きる気がしています。メルセデスはそこは外してない。そんな感じでしょうか。ここが自動車ビジネスの、そしてクルマ選びの難しいところです、ホントに。

渡辺:日本市場を、徹底研究しブランド戦略する必要なし、ということだったんでしょうか。

中込:そこですね。まだまだパイロット導入の寄せ集め見たいな段階であったように思えたもので、あれで撤退を決定したことが意外でした。

江上:すべてのインポーターがこうだとはいいませんが、これまで各ブランドとお仕事をさせていただいた印象としては

・小規模の市場にわざわざ注力する必要がない?
・日本市場を理解していない(しようという気がさらさらないのかも?)
・自分たち(本国)の都合を押しつけることもある

でした。そこで、担当の方は本国と日本市場のはざまで苦悩することになるんですが・・・。

中込:ルノーなんかは5000台越えたことの重みを今、噛み締めてますよ。あれでいろいろできる。いろいろ話しを聞いてもらえる、と。確かにそこの計画の増やし方と実際の増え方に関してのアピールはもしかすると弱かったのかもしれませんね。

日本におけるアメ車=大型車のイメージを払拭できなかった?

渡辺:どうもアメリカ三大ブランドは日本では弱いですね。日本はアメリカの子会社、だから日本は得意の自動車作りで稼がせてアメリカを支える、自国ブランドは子会社に売り込むよりヨーロッパ諸国で大勝負する?

中込:ですね。

山本:でも、アメ車のイメージってやはり大型車なんですかね?日本で敬遠されてしまうのは燃費が悪いと言うイメージなんですかね?

渡辺:クルマに詳しくない僕でも、大型で燃費が悪い、そのイメージがありますね。

中込:フォードはヨーロッパでは小型で燃費の良いモデルをバンバン展開していて大人気なんです。

渡辺:今回の関連の記事をみて、そうなんだ、と知りました。大衆車として展開しているのですね。

中込:そうなんです。GMやクライスラーも、いいクルマ・個性的なクルマが多いので、アメリカ勢には特に頑張ってほしいです。

渡辺:エクスプローラーを買うなら、レンジローバーへいきたいイメージがあります。レンジローバーはSNSでのプロモーション展開などをみると、ブランド浸透も上手いなって思いますから。

中込:中身同じのとかあるんですがね。そういうことなんだと思います。

山本:レーザーとファミリア、カデットとジェミニ、ザフィーラとトラヴィックのような販売方法や、センチュリーとリーガルのように、車名の問題で定着がなかなかできなかったクルマもありましたね。

渡辺:なるほど。本当にブランドイメージ次第なんですね。

中込:実はそんなでもないんですけどね。そして最近になって登場したエコブーストエンジン、いわゆるダウンサイジングターボエンジンが、回すとそれなりにガソリンを食うという…。

総括:フォードの撤退と、日本における輸入車市場の今後は?

ご存知の方が多いかもしれませんが、一部をのぞき、多くの輸入車メーカーにとって日本市場の規模は大きなものではありません。それは、各メーカーの「本国サイト」の言語選択に、中国語があっても日本語がないことでも分かります。

ホンの10数年前なら「世界の三大モーターショー」のひとつに数え上げられていた東京モーターショーも、いまや極東の1モーターショーの扱いです。その証拠に、ワールドプレミアの数が激減し、仮にあったとしても中核を成す重要なモデルのお披露目ではなくなりました。

「選択と集中」という言葉がありますが、フォードがまさにそれを断行し、日本とインドネシア市場は、その枠に収まらなかった、ということなのかもしれません。フォードの次世代車にアマゾンが関わるという報道もあります。これこそが、本国の首脳陣が「選択と集中」したい本当の狙いなのかもしれません。

今回のフォードや前述の東京モーターショーのように、輸入車メーカーに日本市場が「見限られる」ケースが今後もあるかもしれません。

[ライター/江上透]

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松村 透

輸入車の取扱説明書の制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトのリニューアルを担当し、Webメディアの面白さに目覚める。その後、大手飲食店ポータルサイトでコンテンツ企画を経験し、2013年にフリーランスとして独立。現在はトヨタ GAZOO愛車紹介の監修・取材・記事制作や、ベストカー誌の取材等で年間100人を超えるオーナーインタビューを行う。外車王SOKENは2015年より参画。副編集長を経て、2019年、編集長に就任。現在の愛車は、1970年式ポルシェ911Sと2016年式フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン。9月11日生まれの妻と、平成最後の年に産まれた息子、動物病院から譲り受けた保護猫と平和に(?)暮らす日々。

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