Hナンバー車は除外。環境保護のためにドイツが進めている「環境ゾーン」制度とは?

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環境保護への関心が非常に高い国、ドイツ。この国は世界有数の自動車生産国でありながら、自動車の生産台数に影響を与えるような大胆な環境対策を次々と打ち出し、クルマの環境対策についても世界をリードし続けています。

今回は、そんなドイツから「環境ゾーン」についての話題をお届けします。日本では聞きなれない言葉かもしれませんが、ヨーロッパの大都市圏を中心に次々と導入されている仕組みのひとつです。一定の効果を上げている一方、様々な問題点も指摘されているこの制度について、あらためて紹介していきたいと思います。

ドイツでは58の都市で「環境ゾーン」を設定

Hナンバー車は除外。環境保護のためにドイツが進めている「環境ゾーン」制度とは?

▲環境ゾーンへの入り口を示す標識。緑のステッカーが通行可能

ドイツ、それから周辺のヨーロッパ諸国では、長らくディーゼル車が主流でした。ディーゼル車はガソリン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないというメリットがありますが、一方で有害性の高い粒子状物質の排出については、その影響が無視できないほど増加していきました。これらの粒子状物質については、肺がんやぜんそくの原因になるとして、特に大都市圏では大きな問題となっていたのです。

そこでドイツ政府は、2008年1月1日からベルリン、ケルン、ハノーファーの3つの都市で「環境ゾーン(Umweltzone:ウムヴェルトツォーネ)」の導入を開始しました。都市の中心部に「環境ゾーン」と呼ばれるエリアを設けています。そして、そのエリアに侵入するクルマを排気ガスの汚染レベルで区別し、基準をクリアできないクルマは入ることができない、という制度です。

Hナンバー車は除外。環境保護のためにドイツが進めている「環境ゾーン」制度とは?

▲インターネットでも購入できる緑ステッカー。空欄にはナンバープレートを書き込む

指定の自動車整備工場や陸運局などの機関で検査を受け、クルマにはフロントガラスの右下にシールを貼り付けることが決められました。シールは排気ガスに含まれる汚染物質の量によって色分けされており、排気ガスのきれいな順に、緑、黄、赤が割り当てられています。基準を下回るクルマには、ステッカーは発行されません。ステッカーの発行料は5ユーロから15ユーロです。のちに、排ガス検査設備のあるガソリンスタンドや、インターネットでも入手できるようになりました。

ドイツの環境ゾーンの導入は現在も拡大中で、58もの都市で実施されています。今後、さらにその数は増えていく予定となっています。

導入以降、少しずつ厳しくなっていく規制と罰則

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▲環状線内側の環境ゾーン。迂回しなくてもいいように、いくつかの道路はステッカーなしでも通行可能

ベルリンを例に挙げて、もう少し詳しく説明していきましょう。ベルリンの環境ゾーンは、東京での山手線内側に当たる、環状線(Ringbahn:リングバーン)の内側に設定されています。当初は緑、黄、赤のステッカーが貼られたクルマなら通行可能でしたが、現在では緑のステッカーを貼られたクルマのみが入ることを許されています。

また、当初は罰金が40ユーロに設定されていましたが、現在は80ユーロ(約9,600円)まで引き上げられています。2017年のデータですが、環境ゾーンへの違法侵入で、ベルリンでは6万5千件以上の違反が記録されました。もっとも「これだけ躍起になって取り締まりを行なっているのは、市の財政状況が厳しいベルリンだけだ」という批判も少なからず見受けられます。

また、2008年の環境ゾーン導入以降、ディーゼル車の粒状性物質対策も急速に進み、ベルリンに存在する131万台の登録車両のうち、97パーセントにあたる127万台(そのうち10万3千台がトラック)が緑のステッカーを獲得しました。つまり、ベルリンに存在するクルマのほとんどは、環境ゾーンを通行しても問題ない、というレベルまで排ガス対策が浸透したのです。

また、この環境ゾーンに入ることのできるクルマには、いくつかの例外が認められています。Hナンバーを取得しているクラシックカー、トラクターなどの作業用車両、2輪車および3輪車などです。特にクラシックカー愛好者にとって、「Hナンバー車は除外」の制度は好意的に受け止められています。

クラシックカーの通行はいつまで可能?

ドイツ全土で見ると、環境ゾーンが導入されている58の都市のうち、1箇所だけが黄ステッカーが進行可能、その他はすべて緑ステッカーだけが進行可能となり、実質赤ステッカーは効力を失ってしまいました。

ドイツは次の環境対策として、さらに一歩進んだ「青ステッカー」の導入を検討しています。2020年現在、導入時期に関してはまだ決まっていませんが、その対象となるクルマの範囲はかなり厳しく「電気自動車」「ユーロ6をクリアしたディーゼル車」「ユーロ6をクリアしたガソリン車」に限られます。そのため、今はまだ「導入には時期尚早だ」という声が多いのです。

また、近年自動車業界から「不公平だ」との声が上がっているのは、船舶への規制があまり進んでいない点です。ドイツ国内では重要な交通インフラである船舶輸送ですが、かなり古いディーゼル船が今も現役で使用されており「クルマのディーゼルはここまで厳しく規制してきたのに、船が放置されているのはおかしい」との意見が寄せられています。環境ゾーンそのものについても「環境改善への効果が薄い」「政府や関係機関の金儲けの手段でしかない」という批判も少なくありません。

「今後も、環境への負荷を減らす努力を続けていく」と公表しているドイツ政府。今後「青ステッカー」が導入されたとき、Hナンバーを取得しているクラシックカーは、環境ゾーンの通行を引き続き「例外的に認められる」のでしょうか。また、現在抱えている問題点をどのように解決していくのでしょうか。今後も引き続き注視していきたいと思います。

[ライター/守屋健]

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守屋 健

鹿児島県出身。幼い頃、歯医者の待合室で偶然手に取った自動車図鑑、それに載っていた緑のポルシェ911ターボ(930型)に衝撃を受け、「将来必ずこのクルマに乗る」と決意するも、今日まで実現には至らず。1993年シーズンのDTMや1995年のル・マンでヨーロッパへの思いを募らせ、念願叶って現在はベルリンに居を構えるフリーランスのライター。自他共に認めるドイツ好きだが、何の因果か現在までの愛車はカングーやルーテシアといったフランス車ばかり。

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