名前は同じだけど、車体は別物?どことなくユーモラスなヨーロッパ版スズキ・アルトを見かけて

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ベルリンのような都市圏で生活していると、どうしても目で追ってしまうのが、AセグメントやBセグメントといったカテゴリーに属している小型車たちです。狭い道路でもスイスイと入っていき、サクサクと縦列駐車をこなす小動物のようなその姿は、まさに「市民の足」と呼ぶにふさわしい存在です。

今回取り上げるのも、そんな可愛い「市民の足」に挙げられるクルマのひとつ、スズキ・アルトです。リアのエンブレムにはたしかに「アルト」と書かれていますが、パッと見た感じではなんとなく違和感が…。その違和感の元は「サイズ」なのですが、後々レポートしていきたいと思います!

衝撃の低価格で登場

スズキ・アルトといえば、日本では言わずと知れた2ボックススタイル・軽自動車の代名詞的存在です。アルトの初代モデルがデビューしたのは1979年。当時60万円以上が相場だった軽自動車の新車販売市場において、本体価格「47万円」で登場し、市場に衝撃を与えました。その徹底的なまでのコストを抑えた設計は、当時小型車の研究を進めていたゼネラルモーターズの目に止まり、大きなショックを与えたと言われています。その結果、スズキはゼネラルモーターズとOEM契約を結び、「ジオ」(ゼネラルモーターズの下位ブランド)向け車種の生産を受け持つようになるのです。

ヨーロッパでアルトが発売されたのは、意外にも早く1981年のこと。以降1984年まで、直列3気筒800ccエンジンを搭載した「SS80」型が生産・販売されていました。以降、インドで作られたモデルが導入されるなど、着実に販売が続けられ、2009年から2014年に発売されたヨーロッパにおける5代目アルトで、一旦アルトの歴史は終了します。アルトの後継車は「セレリオ」に取って代わられ、「セレリオ」は今でも、ヨーロッパにおけるスズキのエントリーモデルとして購入可能です。

サイズの大きい海外版アルト

写真のアルトは、2009年から2014年に生産されていたモデルです。ドイツには軽自動車規格が存在せず、また衝突安全基準についてはよりシビアであるため、フロントマスク等に日本の軽自動車バージョンの面影があるものの、車体サイズはより大柄で、よりずんぐりとしたスタイルに変更されています。先述した「違和感」の由来は、このディメンションの変更が元になっているのです。

国内7代目モデルの3サイズが全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,535mmとなっているのに対し、欧州5代目モデルは全長3,655 mm、全幅1,630 mm、全高1,470 mmと、長く、幅広く、そして背が低くなっています。こうしたヨーロッパ向けのアルトはインドで生産され、ドイツまで輸送されていました。

堅実な販売を記録

搭載されていたエンジンは、1リッターの直列3気筒DOHCエンジンのみで、ターボなどは特に装着されていませんでした。最高出力は68PSで、5速のマニュアルトランスミッションまたは4速のオートマチックトランスミッションが組み合わせられています。最高速度も5速マニュアルモデルで155km/hと、性能的に特筆すべき点は特にありません。

しかし、そこはベーシックカー。低価格と信頼性の高さを武器に、アルトはドイツにおいて堅実な販売を記録していきます。結局、2009年からの5年間で2万2000台以上を売り上げ、後継車のセレリオにバトンタッチしました。ちなみにセレリオのドイツ国内販売も比較的好調で、年間3000台から4000台以上を売り上げています。

スマートやフォード・Ka、フォルクスワーゲン・up!、ルノー・トゥインゴあたりが直接のライバルとなっていた、ヨーロッパ版スズキ・アルト。ライバルたちはみな、質素ながらそれだけではない「プラスα」があるモデルが多いですが、アルトはそうしたわかりやすい特徴はなく、ひたすら「信頼性の高さ」「価格の安さ」が武器の堅実なクルマでした。しかし、ドイツではまさに「信頼性の高さ」が評価され、着実な販売を記録するに至ったのです。決して目立つ存在ではないスズキ・アルトですが、「壊れにくい」ことを武器に、今後も長くヨーロッパの地で頑張っていくことでしょう。

[ライター・カメラ/守屋健]

守屋 健

鹿児島県出身。幼い頃、歯医者の待合室で偶然手に取った自動車図鑑、それに載っていた緑のポルシェ911ターボ(930型)に衝撃を受け、「将来必ずこのクルマに乗る」と決意するも、今日まで実現には至らず。1993年シーズンのDTMや1995年のル・マンでヨーロッパへの思いを募らせ、念願叶って現在はベルリンに居を構えるフリーランスのライター。自他共に認めるドイツ好きだが、何の因果か現在までの愛車はカングーやルーテシアといったフランス車ばかり。

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