生産から30年後も60%が現役!ドイツはクルマとオーナーにとって幸せな国だ

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「自動車大国」と聞いて真っ先に思いうかぶ国は日本でしょうか、それともドイツでしょうか?

どちらの国も、自動車分野ではテクノロジーも最先端であり、世界的にも大きな地位を確立しています。以前、ドイツ人の友人から「日本のアウトバーン(高速道路)は、なぜ100km/hまでしか出せないんだろ?(クルマが)もったいないね。」といわれたことがありました。

この点に関しては法律で決まっていることなので、筆者がどうこういえる問題ではないのですが、はたして日本を走るクルマは「もったいない」のか?とふと思いました。たしかに、ポルシェやフェラーリといったスピードを出すことで性格の違いがわかるクルマというのも多々あります。法定速度の部分だけでみると、そのような力みなぎるクルマたちが100km/hで我慢しているのはもったいない(?)かもしれない…。そもそも、クルマそのものにとって暮らしやすいのはどちらなのでしょうか?本当の自動車大国といえるのは、果たして?

カレントライフでは、いままでドイツのHナンバーについて、特に古いクルマの扱い方についてご紹介してきました。日本の自動車事情と比べながら、ドイツ在住の筆者も「日本もこうだといいのになあ」と執筆しながら思うこともありました。税金事情等、もろもろ含め、なぜ日本ではクルマ、特に旧車を持つことが負担になるのか?そして、なぜドイツが対照的に称賛されるのか?ドイツがクルマにとって、そしてクルマを愛する人にとって幸せになれる国であるのかを今回まとめてみました。

1.クルマをもつための選択肢

まず、「クルマをもつ」という点からみていきましょう。ドイツ人にとってクルマは日本以上に身近で、必要不可欠なものです。ドイツの自動車保有率は63%、単純に考えれば国民の2人に1人以上がクルマを所有している計算です。鉄道整備などが完全でないことから、自動車での移動が非常に重宝されていました。とりわけ郊外部は公共交通機関網が十分に行き届いておらず、都市部までマイカー通勤する人も少なくありません。

しかしながら、ドイツの新車価格は世界的に見ても高いのです。そんな国で、一体どうやってクルマを買うのか?ドイツではクルマを所有する選択肢として、中古車購入とリースまたはカンパニーカーを利用するという考えが一般的となっています。ドイツのカンパニーカー制度は福利厚生としてプライベート用としても使えることがほとんどです。日本なら役職クラスから支給されますが、ドイツでは課長クラス、または出張など外勤の多い職種なら一般社員にも与えられます。

これらのカンパニーカーはリース購入が多く、貸与期間が終わったカンパニーカーは中古車市場へと流れていきます。そこで若い年齢の購入希望者であったり、カンパニーカーを支給されない一般社員が社内でリース後落ちてきた中古車を購入するというしくみになっています。

クルマが古くなっても、中古車としての需要が多いために、市場へ流れていくのです。そういった背景もあり、ドイツの中古車市場は非常に盛んです。ドイツ人は購入時からすでに売却のことを考えて、のちに売れやすい色やモデルを選びます。そのため、常に需要の高いモデルが出回り続けます。ディーラー購入だけでなく、個人売買もドイツでは主流となっているため、安くクルマを購入&所有する方法とチャンスはいくらでもあるのです。

2.クルマに対する考え方

さあ、クルマは手に入れました。次は、これからどのように乗っていくかです。ドイツではモノに対して「いいものを長く使う」という精神文化が根づいています。これはクルマに対してもおなじで「1台のクルマを長く乗る」傾向があります。1台を長く乗るのであれば、当然何年、何十年のあいだにガタはくるものです。その際に、ドイツと日本ではどう対応するかです。

エンジンマウント、タイミングベルト、ウォーターポンプやブレーキパッド…このような消耗部品でさえ、日本では替えないまま売却・・・ということもあります。 「トラブルが起こった=壊れたからもう使えない」というわけではなく、あくまで「消耗部品が劣化したのだから、取り替えればいい話じゃないか!」という考えなのがドイツ人。いってしまえば、クルマ自体が消耗品。使えば使うほど、ガタはくるもの。ただし、ガタがきたときにドイツ人はそれを簡単に捨てることはしないのです。いくらでも部品を取り換えてあげれば、また乗れる、そして日々メンテナンスを怠らなければ、いくらでもクルマを長生きさせることはできるのですから。

ドイツ国民がそれぞれ1台を大切に長く乗ることで、世には古いクルマが残っていきます。走行距離が10万km超え、登録してから15年経ったクルマ…いずれもこの国ではめずらしくはないものです。ドイツ国内では現在製造30年を越えている旧車(クラシックカー)は約50万台も存在しており、そのうち60%はいまだに現役で乗られています。それほど多くの旧車が活躍している理由は、ドイツ人たちの徹底したメンテナンスのおかげもありますが、大きくはドイツのクルマに対する政策にありました。

3.クルマに対する政策

Hナンバー制度
カレントライフではすっかりお馴染みになったであろう「Hナンバー制度」。製造30年以上のクルマに与えられる、ドイツ政府公式のクラシックカー認定制度です。

Hナンバーの条件としては:
1.生産されてから30年以上経過している
2.オリジナルの状態が保たれている
3.走行に支障をきたす欠陥がないと判定された状態

これらの条件を満たしたクルマは国の工業遺産とみなされ、「Historisch(歴史的な)」の頭文字Hがナンバープレートにつきます。Hナンバー車は自動車税が一律192ユーロになるほか、車検代減額や、本来排気ガス量により規制される環境ゾーン内の走行免除など優遇措置がうけられます。

このHナンバー制度が、旧車もちにとっては一番ありがたく、そして日本にはないドイツ独自の政策ですね。これは旧車を守ろうという国の姿勢のうらに、自動車大国ドイツの「質」を守る意地もあり、「こんなに古いクルマでもまだ走れる、ドイツの技術力を見たか!」と世界へアピールするものでもあるようです。

自動車税
クルマを所有すると、1番気になるのは税金と維持費です。特に旧車ともなるとなおさらです。そこでドイツでは、Hナンバーにかぎらず、現代車でも共通して購入後の絶対的支出となる維持費は自動車税と車両保険です。車庫証明もドイツでは必要ないため、駐車場代の支出は基本なく、路上駐車が一般的です。そして日本の自動車重課税の問題とされている、重量税や取得税なども存在しません。

ドイツの自動車税はそのクルマの排気量とCO2排出量に準じた自動車税を支払うだけでよいのです。CO2排出量が少ないほど税額が安くなり、走行1kmあたりの排出量が100g未満のクルマは自動車税が免除になります。

また、シーズンナンバー制度とよばれる、決められた期間のみ走行・税金支払いできるシステムもあります。夏場に乗ることの多いキャンピングカーや、オープンカー、クラシックカーなどによく使われます。これでさらに余分な税金支払いをおさえられるわけです。ドイツの税額はそれぞれのクルマによって変わってきます。しかし、これらの制度を活用して、オーナー自身で調節することも可能なのです。


▲この場合4月から10月まで公道走行してよい、という意味になります

メンテナンスと保険制度

ドイツは旧車文化が根強い分、それらに対応する修理工場や保険会社などのサポートが豊富です。モデルにもよりますが、パーツは日本よりも探しやすく、比較的安価に手に入る可能性が高いのです。パーツが安い理由としては、さきほども述べたように「クルマはメンテナンスするのが当たり前」という傾向がドイツでは強いからだと思われます。日本に比べて、ドイツで走行距離も多く、そしてアウトバーンでは超高速で走るため、エンジンも高回転となりがちで車両に負担がかかるのは早くなるでしょう。つまり日本よりも過酷な状況で長距離を走るため、不具合が出るのを想定してパーツの供給率を高くしているとも考えられます。

保険は、クラシックカーなどの年数の経ったクルマでも、一般的な自動車保険会社で加入するのは日本よりは難しくありません。クラシックカーに対応したプランも多くあり、専門の保険会社もドイツには18社あります。社会へいかにクラシックカーが受け入れられているか、というのはこのようなケアサービスにおいてもドイツが一歩リードしているのではないでしょうか。

4.「古いクルマ」の価値をどう捉えるのか

なぜドイツがクルマにとって幸せなのか。それはやはり個人だけではなく、国単位でのクルマに対する考え方のちがいではないでしょうか。日本では廃車同然とみなされるような古いクルマでも、海外に出てみると重宝されるのはよくあることです。

日本をはじめとするアジアでは、新車を購入する傾向が65%と世界でもっとも高く、中古車を購入すると答えた人はわずか7%です。日本では、見た目や燃費などの性能を重視してクルマを購入する人が多いように思います。1度の破損や故障が原因で乗り換える人もいますし、部品を交換すれば乗れるはずなのに、すぐ廃車にしようと考えてしまう人がいます。しかし、そのような認識にさせてしまったのは、新車主義が強い日本の自動車市場、そして自動車税制でしょう。

というのも、登録より10年以上経過していたり、日本でクルマの寿命とされる10万km以上の走行距離を超えたクルマは、日本国内の中古車市場ではほとんど売買されない(=売りものにならない)からです。国産車だけならず、パーツも国内では見つけにくい輸入車となればさらに肩身がせまくなってしまうのではないでしょうか。元々高額な自動車税も、「13年経過」と「18年経過」を節目に増税され、旧車はさらに苦しい状況に立たされます。1年でも長く乗ってあげたいという想いはあるのに、国からどんどん攻めたてられる重課税。長く乗れば乗るほど損をするシステムになり、燃費重視の政策に泣く泣く愛車を手放した人も多いのではないでしょうか。

新しいもの好きの日本とは対照的に、ドイツはものづくりにかける強いこだわりがクルマ文化に反映されています。クルマの価値を歴史工業遺産としてブランド化させ、カタチに残すことで末永く次世代へつなげてゆく姿勢が見えます。そしてその価値を守る人たちを国が支えています。Hナンバーやシーズンナンバーというシステムは日本の旧車オーナーへもきっと助け舟の役割を果たすにちがいないのです。

維持費、税金のデメリットが日本より少ない分、ドイツではより車を楽しむ文化があるように思います。晴れた日はオープンカーでドライブする人をよく見かけますし、走らせる機会が多い分メンテナンスも非常にこまめに行います。みずからクルマへ手を加えることで、愛情をかけ、ともに人生を歩む家族の一員にしていくのです。

故障が多い、燃費が悪いと手をやく古いクルマであっても、それを含めて「クルマそのもの」を楽しんでいる印象があります。それはクルマにとっても、乗る人にとっても「幸せ」だといえませんか?そしてその幸せはドイツであれ、日本であれ、クルマを愛する人なら誰もが望む「クルマとの暮らしかた」なのではないでしょうか。

[ライター・写真/NAO]

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在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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