ベスパのエンジンを積んだイタリア製の働き者。3輪車「アペ50」はドイツでもまだまだ現役!

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イタリアの小さな働き者、「アペ」をご存知でしょうか?イタリアのオートバイメーカー、ピアッジョ製のアペ。「ローマの休日」で有名になった同社製「ベスパ」のエンジンを積んだ「ベスパカー」と呼ばれる種類です。

ベスパ(vespa)がイタリア語でスズメバチを意味するのに対し、アペ(ape)はミツバチ。その名のとおり、ベスパの車体をより小型化させたモデルです。ベスパの中でははじめてオートバイのカテゴリから外れ、軽輸送車としてデザインされました。当初はピックアップタイプでしたが、その後、ワゴンタイプやボディを大型化するなど、バリエーション豊かなモデルとなりました。

ある日、ドイツの街中で「アペ50」を見つけました。アペ50は、アペファミリーの中でも最も小さなモデルで、120cm(W)×90cm(H)×125 cm(D)の荷台がつき、最大200㎏の積載量。それほど積載量がないため、ドイツでは青果店や花屋、アイスの移動販売に使われていることが多いようです。

バーハンドルは中央に位置しており、トランスミッションは4速MT。エンジンは単気筒2ストローク50cc、3馬力ということで、決してキビキビ走る部類のモデルではなさそうです。しかし、(頑張れば)最高45km/hまでだせるようです。このパワーなら、最大積載量の200kgぎりぎりで荷物を載せると、走る速度が心配になってしまいそうですが…。バーハンドルも、操縦するのにある程度テクニックが必要になりそうです。

サイズといい、燃費といい、小回りもよく、近場移動には持ってこい。とくに道の狭い欧州では使い勝手のよいモデルとされています。坂道の多い本国イタリアでは、今でも現役として多く使われていますが、ドイツでは珍しくなってきた存在です。今回見つけたアペは50ccですが、イタリアではパワーを上げた120~150㏄のモデルも生産されており、現在はそちらが人気なようです。いかにイタリア人の重要な足となっているかがわかります。きっと地中海ひろがるイタリアの景色に走る姿も似合うのでしょうね。


▲ローマ広場。飲食禁止となり、ベスパに乗れてもオードリーのようにジェラートはもうここでは食べられませんが…

イタリアでは、14歳以上であれば50㏄までの乗りものは無免許で走行可のため、10代でアペ50で運転デビューするのが主流なようです。アペ50に乗って、新聞配達のアルバイトをしたり、友達宅へ行く足として使ったり…。そして自分好みにアペをチューニングする若者も多いようです。

ちなみに、ドイツではアペ50の派生モデル「アペTM」が、警察車両としてノルドライン=ヴェストファーレン州で2009年に採用されていました。ほぼPR目的の採用でしたが、路地が狭く、従来の警察車両が入りこめない場所への緊急用として活躍していました。その後、1年経たないうちに事故に遭い、大きく破損してしまったため、今はそのまま管轄の警察署にて展示されているのだとか。(それもそれですごいですね)

ドイツ誌Auto Bild Klassikの独自走行試験で、アペ50は「自転車や犬より遅い。できることはほとんどない」と散々書かれていたのです。しかし、アペ50で長距離を走る人もいないでしょうし、荷物を積んで「ちょっとそこまで」なノリで今も使われているのでしょう。今、ドイツでは、商用車としてちらほら見かける程度のようですが、まだまだ現役で働いているようです。

日本では、アペはミニカーの部類に入り、最大積載量も30kgに制限されています。かつてベスパ製スクーターを取り扱う成川商会で初期モデルが、その後アルク社からアペは輸入されていましたが、2010年前後から見かけることは少なくなったようです。今では使われずにモニュメントになっていたり、ガレージに眠ったまま…というのも多いのではないかと思います。レアな存在にはなってきましたが、日本でも現役で走るアペ、どれほどいるのでしょうか?ちょっと気になるところですね。

[ライター・写真/NAO]

NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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