意外?納得?ドイツにおける「Hナンバーの取得をあえて行わない」その理由とは

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自動車大国ドイツの旧車を守る文化として、日本でも徐々に知られつつあるHナンバー制度。

ご存じでない方のために説明すると、

●Hナンバーの条件を満たすクルマとは?
1.生産されてから30年以上経過している
2.オリジナルの状態が保たれている
3.走行に支障をきたす欠陥がないと判定された状態

これらの条件を満たすクルマは、ドイツで公式に「クラシックカー」として認定されます。その証ともなるのがHナンバーで、通常のナンバープレートの最後に歴史的(独:historisch)を表す「H」が付きます。

Hナンバーを取得すれば、車税が優遇されるうえに、有害ガス排気量の多さで走行が制限される「環境ゾーン」の走行も免除されます。古ければ古くなるほど、重税が課される日本とは真逆。古いクルマこそ優遇されるドイツ独自の制度なのです!

現在ドイツでは約34万台のHナンバー車が存在しています。しかし、条件を満たしている車両全体のうち、実際にHナンバー取得しているのは62%。残りの38%は「隠れHナンバー」ということになります。Hナンバーの取得台数自体は年々増えてきているのに、いったいなぜ?現在ドイツでは、Hナンバーを取得するか否かの意見が分かれています。

多くの理由は「税金面のメリットがない」

Hナンバー車への税額は一律で年間191ユーロ(約23,000円)と定められています。ドイツの自動車税は年式関係なく、排気量(ユーロ基準)で変わってくるので、はっきりとした税率の内訳はないのですが、年間100~600ユーロほどと言われています。

このように、かなり振れ幅の大きいドイツの自動車税。「191ユーロ」は果たして安いのか高いのか?現代のクルマでも、排気量が少なければ130ユーロ前後の自動車税額が多いようです。クラシックカーでも、排気量が少なければ191ユーロより税額が少なくなることがあります。特にガソリンエンジン、ディーゼルでも1980年代のモデルだと通常課税のほうがHナンバーより安くなることが多いようです。


▲先日のカーミーティングで出会ったロイド・アレクサンダーTS(1958)のオーナーも、排気量592ccmでHナンバーは取得していないとのこと

専門誌では、判断材料として触媒コンバーターなし、または排気量700ccm以上のディーゼルエンジンでればHナンバーで得をすると言われています。旧東ドイツの大衆車「トラビ」は、税率がかなり低いこともあり、Hナンバーを取得しているケースは皆無だといわれています。他にも、BMWイセッタやフィアット500、ホンダS800なども排気量が少ないため、Hナンバー取得における税金メリットはないに等しいのです。

排気量と有害ガス排出量の割合からしても、例えばBMW 3シリーズ(E30)はユーロ基準2、触媒コンバーター付きだと143ユーロですが、同様に触媒コンバーター付きでもユーロ基準1になれば、税額は倍にあたる302ユーロとなります。後者であればHナンバー取得のほうが得だといえるのです。ちなみに、メルセデス・ベンツ(W123)では、年間800ユーロも課税されるため、Hナンバー取得率2位というのも納得です。

VWゴルフ世代を中心に取得拒否が広がる

Hナンバー取得率の傾向として見られるのが、VWゴルフとオペル・カデットの申請割合がとても低いことです。2016年度のHナンバー人気ランキング8位と10位にランクインした2モデルですが、それぞれの登録台数は4,000~5,000台程度となっています。生産から30年以上経過している車両におけるHナンバー取得率は、VWゴルフはわずか28%、オペル・カデットは36%に留まっています。

Hナンバーを取りたがらない人たちは「ゴルフ世代」が多いと言われています。ドイツでは1965~75年生まれの人々を「ゴルフ世代」と読んでおり、彼らが大人になって買ったクルマは今までのビートルやシトロエン2CVとは違い、スピードとパワーのあるVWゴルフが多かったことからそう呼ばれています。

なぜゴルフとカデットなのか?というと、ゴルフⅡが発売されていた80年代から国から定められた触媒コンバーターの装着が始まっていたからなのです。これらのモデルは触媒コンバーター付きで、通常税の方が安くなり、そのためHナンバーを取らない人が集中しているのです。

Hナンバー、取るか否か?

クラシックカーのフォーラムにも、「クルマが30歳を超えたけど、Hナンバーはどうしよう?」と迷っている人が沢山いるのが現状です。自動車税「定額」191ユーロと聞けば、一瞬得するようにも思えるのですが、「最大」191ユーロまで払えばいいですよ、といっているようなもの。税金の部分だけ見れば、車種によっては損をしている場合もあります。そのため、Hナンバーのこの税額は、歴史的遺産の保存よりも「H」を買わせて国に安定した資金を落としているだけなのでは?と批判する人も少なくないようです。

一部の人はHナンバーの「歴史的工業遺産」という位置づけに疑問を持っており、専門的・技術的な部分には目を付けず、ただ古いからといってすべてを歴史遺産として称賛するのはおかしいという意見が出ています。また、Hナンバーを申請すると、もれなく現在のEU統一デザインに変わってしまうため、ドイツの旧型ナンバープレート(DINプレート)から変えたくないというのも1つの理由だといいます。

定額より車税が少ないのなら、税金優遇面はほぼなし。Hナンバーを取得しない唯一のデメリットは車検費用の減額がないこと、環境ゾーン(主に都市中心部)が走れなくなるということでしょうか。その部分も含めれば、191ユーロの支払いは妥当とも思えるのですが。少なくとも、国が古いクルマを排除しない姿勢を構えていることに筆者は拍手を送りたいのです。「こんなに旧車持ちにとって恵まれている国は、広い世界の他にないんだぞー!」と言ってあげたい・・・。

数年以内に、1990年代に生産されたクルマもHナンバー取得時期を迎えます。ゴルフ世代に続き、これからHナンバーを取らない人は増えていくのかもしれません。これからの動向が気になるところです。

[ライター・写真/NAO]

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NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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