想像以上に過酷なドイツの駐車事情。ドイツ暮らしならではのクルマ選びとは

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ドイツに住んで暮らすとしたら、皆さんはどんなカーライフを想像されるのだろうか?
アウディ、BMW、 メルセデスの定番プレミアムカーを本場で満喫するのもよいだろう。日本ではまず乗る機会がないシュコダ、セアト、ダチアのようなベーシックカーに乗ってみたり、日本では売っていないヨーロッパ仕様のエンジンが積まれた日本車を選んでみたり、というのも面白いかも知れない。

夢見ていたドイツでのカーライフ

日本にいるときから、筆者はドイツで暮らすなら、このクルマに乗ってこんなカーライフが送れないかと勝手に日々妄想を重ねていた。速度制限のないアウトバーンを、日産GTRやポルシェ911で駆け抜けてみたい。おもむきのある旧市街の石畳をシトロエンDSで流したい。VW UP!やFiat 500のようなベーシックカーを使い倒してみたい。ニュルブルクリンクにルノー・メガーヌRSで通いたい。レンジローバーやカイエンのディーゼルに荷物を満載して、陸路遠く離れた国までバケーションに行きたい。乗るクルマによって、やりたいことや、ライフスタイルまで変わってくるのがクルマ選びの楽しいところ。妄想は尽きない。

そんなとき、ドイツの現地企業で働くチャンスがあり、3年前から本当にドイツでカーライフを送ることになった。しかし実際に住んでみると、クルマ選びに日本では想像しえなかった制約がたくさんあることが分かってきた。

想像以上に過酷なドイツ都市部の路上駐車

▲ところ狭しと路上駐車された車たちが並ぶボンのブライテ通り

まずは住宅・駐車事情。

ドイツの都市部の住宅街は、慢性的に駐車スペースが不足している。空き地を利用した日本のコインパーキングのようなところはまったく無く、基本的には路上駐車で、片輪を歩道に乗り上げて駐車するところも多い。ドイツでは、自動車の登録に車庫証明は必要なく、理論上は一人で何台でも登録して路上駐車しておくことが可能。それもあって、住宅街の路上にはクルマがところ狭しと停められており、自動車通勤の人たちが帰宅した夕方以降は、なかなか停められるスペースが見つけられないものだ。奇跡的に空いているスペースは、スマートしか入らないようなサイズだったり、歩道に乗り上げるのにバンパー下部をぶつけそうな高さの段差があったりとハードルが高く、停められる場所を探して長くさまよったり、家から遠く離れたところにしか停められないことも多い。

昨今、下車してからドアの開け閉めができない狭いスペースに、自動駐車するテクノロジーをアピールするドイツの自動車メーカーやサプライヤーが多いが、こういった機能は切実に求められているのである。

いたずらや車上荒らし、ドアミラーをぶつけられたり、大粒の雹でボディが凹んだり(ヨーロッパではHail Damage=雹害は珍しくない)、時と場所によってはフーリガンやデモ隊に破壊されたり、路上駐車を長期的に使うのはなかなか安心できないものだ。当然、自動車保険の保険料も割高になる。

安全だが制約の多い地下駐車場

▲典型的なスイング昇降2段式の地下駐車場

路上駐車の次に多いのは、個人宅やアパートの地下駐車場だ。ドイツでは、ドッペルハウスやライエンハウスと呼ばれる比較的大きな建物に2~8家族くらいが住むところが多く、都市部の場合そういった建物にかなりの確立で地下駐車場がついている。大体月に1万円前後の費用で、毎日の路上駐車探しからも開放され、愛車も雨風から守ることができるのだが、いかんせん古くて狭い設計の駐車場が多いのだ。

狭いスペースを有効利用するため、日本では珍しいスイング昇降2段式が数多く使われている。このスイング昇降が曲者で、アプローチアングルが高く、フロントオーバーハングの長い車は鼻先を擦ってしまう。さらに上段をスイングしたときに天井がルーフに近づいてくるので、全高1500mmのワゴン車がボーダーラインとなる。

▲全高1500mmのオペル・アストラ・スポーツツアラーは、アンテナが当たって入らなかった

制約の多いなかでのクルマ探し

日本と比べると、路上駐車が可能だったり車庫証明の必要が無いなど、経済的には恵まれたドイツの駐車環境ではあるが、大事な愛車を停めるなら地下駐車場が無難だろう。

しかし、そうすると冒頭の日本で妄想していたクルマたちは、残念ながらほとんど没になってしまった。カイエンやレンジローバーは車高が高すぎて、地下駐車場内に入れず、GTR、911、メガーヌRSは最低地上高が低すぎて、スイング式の傾斜で擦ってしまい、意外と全高が高いVW UP!が天井ぎりぎりといったところ。こういった駐車場にぎりぎり入るであろう、VWパサートヴァリアントやBMW 3シリーズツーリング、アウディA4アバントのようなDセグメントワゴンや、アウディA5スポーツバックやBMW3シリーズGTのような5ドアクーペの人気が高いのも納得だ。

常に制約との戦い

駐車事情だけでも、日本とは違う制約があるのを感じて頂けただろうか?

もちろん都市部から、郊外の敷地内にガレージがある物件に引っ越すという選択肢もある。だがクルマ探しとは、常に制約との戦いである。これまた一興。メルセデス・ベンツW124のワゴンなら間違いなく入るだろうが、アウディA4オールロードクワトロのルーフレールが天井に接触してしまうだろうかなど、まだ買えるあてもないのに、夜な夜な妄想する日々である。

[ライター・画像/林こうじ]

林こうじ

ドイツ在住の自動車技術者。某国産自動車メーカーを経て、現在はドイツ系サプライヤーで設計を手がける。夢は自らの少量生産自動車メーカーを起業し、本当に乗りたいクルマを作ること。

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