ジウジアーロの流麗で美しいデザイン。ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーも射止めた傑作「初代アウディ80」

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8月までの暑さも過ぎ去り、急に秋の装いになってきたドイツ。飲食店のテラス席は相変わらず多くの人で賑わっていますが、現地の人々の服装も少しずつ厚着になってきました。日中も25度まで届けば暖かいほうで、夜になれば12度前後にまで冷え込みます。そんなドイツの街中で、真夏の海を連想させるような、鮮烈な青色のアウディを見つけました。今回ご紹介するのはアウディ80の初代モデル、その中でもさらに古い初期型モデルです。

丸目が印象的な前期型

アウディ80の初代モデルはB1と呼ばれ、1972年から1978年まで生産されました。その歴史の中でも前期型と後期型にわかれ、前期型はタイプ80、後期型はタイプ82と呼ばれています。今回撮影したのは前期型のタイプ80で、1972年から1976年まで生産されたモデル。ちょっととぼけたようなような表情の丸目2灯ヘッドライトが印象的ですね。丸型ヘッドライトは前期型タイプ80だけの特徴で、高性能グレードには丸目4灯も用意されていました。後期型タイプ82からは角形2灯式の、80年代のアウディでおなじみのデザインに変更されます。

初代アウディ80は、それまでアウディが培ってきた技術を元に、堅実で簡潔なメカニズム設計と流れるような美しいデザインを組み合わせることにより、非常に優れたトータルバランスを獲得。アウディ100の弟分として位置づけられてはいましたが、評論家やユーザーからの評価は非常に高く、並み居るライバルを押しのけて1973年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。

デザインを担当したのは巨匠ジウジアーロ

筆者が実車を目にして改めて感銘を受けたのは、古さをまったく感じさせない美しいスタイリングです。衝突に対する安全基準がどんどんシビアになっているので、ここまでスリークなデザインを現代で実現するのは難しいのかもしれませんが、それにしてもサイドからフロントの眺めは絶品ですね。各ウィンドウの面積も大きく取られているので、傍目にも室内は明るく快適そうに見えます。

この印象的なデザインを作り上げたのは、イタルデザインを率いる巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ。だいたい同時期にフォルクスワーゲン・ゴルフやロータス・エスプリなども手掛けていたことを考えると、大変な仕事量をこなしていたのだろうと想像できます。全長は4,200mm、全幅1,600mmで全高は1,360mmと、現代からするとかなりコンパクトなボディ。ボディタイプは4ドアと2ドア、北米輸出用にステーションワゴンタイプの3種類が用意されていました。

2000年代まで生き続ける傑作エンジン

エンジンは新規に設計された水冷直列4気筒OHCで、非常に頑丈で耐久性に優れていました。この時に設計されたエンジンの子孫は、2000年代まで脈々と製造され続けています。1.3リッター・55馬力のエンジンから、1.6リッター・110馬力のエンジンまで比較的多くの仕様が用意されていて、写真の個体の「LS」は1.5リッター・75馬力のシングル・キャブレター仕様となっています。トランスミッションは3速オートマチックもしくは4速マニュアルから選ぶことができ、4速マニュアルモデルの最高速度は160km/hと、なかなかの俊足を誇りました。シンプルなメカニズムの恩恵か、車重は900kgにも満たなかったので、当時としてはかなり燃費もよかったようです。

エンジンはフロントに縦置きされ、前輪を駆動しました。アウディの縦置きフロントエンジン・フロントドライブでは、エンジンを傾けて搭載することがありますが、アウディ80も例に漏れず右に20度傾けて搭載されています。傾けることによってできたスペースに補機類を詰め込むという、ユニークなレイアウトが採用されていました。

アウディ80の初代モデルB1は、前期型・後期型含め約110万台が生産され、日本へはヤナセの手によって約1万台が輸入されました。当時広告で見かけた方も多いのではないでしょうか。100万台以上生産された割には、現在のドイツではあまり見かけませんし、中古車市場に出回っている個体数も多くはありません。日本においても、とくに丸目の前期型を見かけるのは稀ではないでしょうか。年々数が減ってきている初代アウディ80。これからも長く走り続けてもらいたいですね!

[ライター・カメラ/守屋健]

守屋 健

鹿児島県出身。幼い頃、歯医者の待合室で偶然手に取った自動車図鑑、それに載っていた緑のポルシェ911ターボ(930型)に衝撃を受け、「将来必ずこのクルマに乗る」と決意するも、今日まで実現には至らず。1993年シーズンのDTMや1995年のル・マンでヨーロッパへの思いを募らせ、念願叶って現在はベルリンに居を構えるフリーランスのライター。自他共に認めるドイツ好きだが、何の因果か現在までの愛車はカングーやルーテシアといったフランス車ばかり。

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