忘れ去られるにはまだ早い!フィアットの小粋なボーイズレーサー『フィアット・チンクエチェント・スポルティング』

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フィアットのチンクエチェントと言うと、みなさんはどんなクルマを思い浮かべますか?2007年に登場した現行500でしょうか?それとも、1957年から1977年まで生産されていたNUOVA 500でしょうか?どちらも日本ではおなじみの存在ですし、ドイツにおいても現行500はアバルト・モデルも含め大人気です。コロンと丸いユーモラスなフォルムは、老若男女問わず人々を惹きつける魅力があります。

そんな中にあって忘れられがちな存在が、500をイタリア語読みしたCinquecento(チンクエチェント)というモデルです。イタリア車が好きな人でも「ああ、そんなモデルあったよね」というくらい、影の薄い存在ではないでしょうか?そんなかわいそうな立ち位置のチンクエチェントですが、そこは小型車を作るのが得意なフィアット、このクルマにもアバルトの息がかかった魅力的なモデルが存在しました。それが今回の主役、ベルリンの街角で見かけた『チンクエチェント・スポルティング』というモデルです。

ドイツでも希少な『チンクエチェント・スポルティング』

フィアット・チンクエチェント・スポルティング
▲『ジアッロ・ジネストラ』と呼ばれる鮮やかな黄色が印象的。他にもブラックやレッド等が用意されていました

かつてのダイハツ・ミラやスズキ・アルトなど、日本の軽自動車を彷彿とさせる直線基調で素っ気ないエクステリア。同じ発音で語られるモデルとは思えないほど、NUOVA 500や現行500とは共通項のないデザインですが、初代フィアット・パンダから引き継がれたクリーンなライン、これはこれで魅力的です。日本では結局正規輸入されず、少数が並行輸入されたのにとどまっていて、現在中古車情報サイトで見られるのは、より上級のスポーツ・モデル『チンクエチェント・スポルティング・アバルト』の方かもしれません。

『スポルティング・アバルト』は『スポルティング』をベースに、エアロパーツやフロント・フォグランプ、レザーステアリングやレザーシフトノブなどの専用パーツを組み込んだモデルですが、エンジンのチューニングは変わらず、むしろエアロパーツの付かない『スポルティング』の方が、チンクエチェントのデザインの美しさを損なっていないように思います。ドイツでは素のチンクエチェントを時々見かけるくらいで、『スポルティング』や『スポルティング・アバルト』と遭遇することは滅多にありません。

ラリー専用車『トロフェオ』の成功が、『スポルティング』市販のきっかけに

フィアット・チンクエチェント・スポルティング
▲路上でチンクエチェント・スポルティングを見かけると、女性が運転していることの方が多いです。マニュアルトランスミッションを使いこなすその姿は、颯爽としていてとても絵になります

フィアット・チンクエチェント・スポルティング
▲ドイツでよく見かける同じようなサイズのホットハッチといったら、フォルクスワーゲン・ルポGTIでしょうか。チンクエチェント・スポルティングとは逆に、男性ドライバーの方が多い印象があります

チンクエチェントは、フィアット・パンダの後継車として1991年にデビュー。ポーランドのティヒ工場で1998年まで生産されていました。1993年にはイタリア国内のワンメイク・ラリー専用車『チンクエチェント・トロフェオ』が登場します。ごく少数ですが日本にも渡ってきたこの『トロフェオ』、開発したのはアバルトを前身とするフィアット・アウト・コルセでした。

『トロフェオ』はコンプリートカーではなく、キットパーツで販売する方式が取られ、若いドライバーが中古のチンクエチェントにパーツを組み込むことで、少ない費用でレースに参戦できるよう工夫されていました。パワーユニットは水冷直列4気筒OHV903ccエンジンで55psを発生。ノーズには4連の補助灯が追加され、ビルシュタイン製ダンパーやスピードライン製ホイール、ロールゲージやフルバケットシート、4点式シートベルト等が組み込まれた小粒で戦闘的なルックスの『トロフェオ』は、イタリアのみならず、ドイツやスペインでも開始されたシリーズ戦でも大活躍しました。

フィアット・チンクエチェント・スポルティング
▲全長x全福x全高は3230x1490x1435mmと非常に小柄なボディ。狭い山道を攻めてみたくなります

『トロフェオ』のデビューの1年後、やはり市販化を求める声が大きかったのでしょうか?『トロフェオ』の公道モデルとも言える『スポルティング』が発売されます。エンジンは『FIREエンジン』と呼ばれる水冷直列4気筒SOHC1108ccに変更、55psで車重780kgのボディを最高速度158km/hまで引っ張りました。イタリアの小排気量車の伝統でしょうか、エンジンは非力ですが、上までよく回りますし、トランスミッションは1速から4速まではクロス気味、5速は高速巡行に適したギア比になっていて、ワインディングの楽しさと長距離移動を両立させているあたり、フィアットはこういったクルマを作らせると本当に上手だな、と実感します。

『チンクエチェント・スポルティング』の旬は、むしろ今なのでは?

フィアット・チンクエチェント・スポルティング
▲よく見たら左右のドアミラーの色が違いますね。ボディのあちこちの傷などから、あまり細かいところに気を使わず、日常の足として使い込んでいる様子が伺えます

こうした小さく軽いクルマを、非力だけれど元気よく回るエンジンとマニュアルトランスミッションの組み合わせで走らせる楽しさというのは、いつまで経っても変わらない普遍的なことのように思います。『ホットハッチ』や『ボーイズレーサー』と呼べるような、安価で運転が楽しい小さなクルマは少なくなったように感じますが、スズキ・アルトワークスが2016年に復活したり、アバルト595や現行MINIが300万円を切る価格で新車販売されていたりと、その血筋は細々とですが、今も受け継がれています。

それに、中古車市場に目を向ければ、諸費用込み100万円の予算でも、運転が楽しいコンパクトカーは国産・輸入車問わずまだまだたくさん見つかります。そんなクルマをお探しの方、ラテン生まれの小粋なコンパクトハッチバック、『チンクエチェント・スポルティング』(とスポルティング・アバルト)をぜひ候補に入れてみてはいかがでしょうか?現行500の陰に隠れてはいますが、忘れ去られるにはまだ早過ぎる、とても楽しいクルマですよ!

[ライター・カメラ/守屋健]

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守屋 健

鹿児島県出身。幼い頃、歯医者の待合室で偶然手に取った自動車図鑑、それに載っていた緑のポルシェ911ターボ(930型)に衝撃を受け、「将来必ずこのクルマに乗る」と決意するも、今日まで実現には至らず。1993年シーズンのDTMや1995年のル・マンでヨーロッパへの思いを募らせ、念願叶って現在はベルリンに居を構えるフリーランスのライター。自他共に認めるドイツ好きだが、何の因果か現在までの愛車はカングーやルーテシアといったフランス車ばかり。

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