緊急調査・イギリスのEU離脱に伴う欧州自動車業界の影響とは?ドイツ国民の反応を探る

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2016年6月23日、国民投票によりイギリスはEUから離脱する意向が明らかとなった。ロンドン市民は7割以上が残留派だったのに対し、郊外では離脱支持の数が多かった。

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正式な離脱時期は未定だが、残留派キャメロン首相の辞任やポンドをはじめとする通貨の暴落など、世界の政治経済面でも非常に混乱している状況である。その中でもEU離脱が欧州自動車業界にどのような影響を与えるのか、下記にまとめてみた。

イギリスのEU離脱に伴う、欧州自動車業界の影響は?

■ 1.関税の復活
国の全体輸出量の半数を欧州諸国に輸出していたイギリスがEU離脱となると、EU間では無課税であった関税制度が見直しとなり、同国の貿易規模は縮小すると考えられる。イギリス主要産業の1つでもある自動車産業であるが、関税が復活すればイギリスメーカーはもちろん、ドイツや日本などの海外メーカーにとって大きな打撃となる。特にイギリス内に生産工場を置いているメーカーは部品輸出入などにもコストがかかるため、工場の拠点がイギリスから他のEU諸国に流れる可能性が高い。イギリス車も関税分上乗せの価格となると、EU諸国から遠巻きにされてしまう恐れもある。

■ 2.労働力の確保
EU国籍であれば、EU諸国内を移動する際に旅行ビザ取得やパスポートの提示は不要。そのため、経済的に弱い東欧からの出稼ぎも非常に多い。自動車業界では工場勤務を中心とした労働力の需要が多く、社会保障も手厚いイギリスは人気の国であった。しかしイギリスがEUから離れるとなると、入国・滞在する際にもビザが必要となるため、人の移動に制限がかかり、企業の人材確保も困難となる。

■ 3.海外メーカーへの打撃
欧州トップである自動車大国ドイツの最大輸出市場はイギリスである。イギリスの年間新車販売台数の半分がドイツメーカーである。ドイツがイギリスに輸出している数は約81万台。さらにドイツはイギリス内に100以上の生産拠点を持っており、そこで造られた車の57%がEU諸国に輸出されている。ベントレーやロール・スロイスなどイギリスメーカーをグループ傘下に入れているドイツとしては、イギリスのEU離脱は他人事にはできない事情がある。

イギリスに欧州展開の拠点を置く日本メーカーのトヨタ・日産・ホンダも離脱の結果を受けとめ、慎重に対処するとコメントしている。中でもトヨタは年間19万台をイギリス工場で生産しており、その75%以上がEU諸国に輸出、イギリス内での販売はわずか10%となっている。上記でも述べたように、EU離脱となると関税復活によるコスト増加により、イギリスのメーカーだけではなく、生産している海外メーカーの車においてもEU諸国への販売規模の縮小が見込まれている。

やはり一番大きな影響は関税である。ドイツをはじめ、海外の自動車メーカーも今回の国民投票の結果を受けて戸惑ってはいるが、今後のはっきりとした対策はまだ発表されていない。VWグループも「投票結果の影響を評価し、今この時期で今後の欧州の販売市場を懸念するのは時期尚早である。」とコメント。しかし現在欧州自動車業界では、イギリスとEU国間での自動車輸入において無課税のフリートレードを求める声も挙がっている。

イギリスのEU離脱に対するドイツ国民の反応は?

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※筆者の周りにインタビューした意見を一部抜粋。

●残留するだろうと思っていた。イギリスはもともとEUに加盟していても、ユーロ通貨に統一もせず少し距離を置いているイメージがあった。離脱してもイギリス内ではあまり状況は変わらないのではないかと思っていたが、我々EU加盟国民にだってメリット・デメリットがある。全体的に考えればEUに留まるほうがメリットは多いはずだし、残るべきだったのでないか。共にEU経済を担っているドイツだからこそ注目しなければならない問題だと思う。

●元々ドイツ国民はイギリスに対してあまり好感を持っていない。難民受け入れに難色を示していたイギリスだからこそ出た結果であろう。経済レベルはEU内でもトップなのにも関わらず、ドイツにすべての責任を擦り付けた。自分本位でしか考えない国。今回の結果は非常に残念であるし、腹立たしくも思える。

●ロンドンはただでさえ物価が高いのに、離脱して関税がかかるようになったらどうやって生きていくのだろう?イギリス国民はもうどこにも出かけられないのではないか。

●イギリスはドイツ人学生にも人気の留学先。イギリスがEU離脱となると留学システム(※)も多少は変化してくる。学生たちにもこれからは不便な点が出てくるであろう。※EU間の大学には統一された単位互換制度があり、EU国籍の学生は欧州留学がとてもしやすい。一学期のみ他国の大学で自分の専攻を勉強するというのも珍しくない。

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現在のイギリス民の反応を見ればわかるように、国に不満はあれどいざ離脱となると様々な面で準備が全くできていなかった印象がある。ドイツメディアはイギリスのEU離脱は経済的自殺行為だと非難しながらも「しかし出たいと言うのならさあどうぞ。」という意見が多かった。ドイツ国民の反応としては、イギリスの難民受け入れに関する批判が目立つ。EUは一つの連合であり、欧州の平和を目指して一丸となってあらゆる問題を解決しあってきたのにも関わらず、ここでイギリスが独立を希望したことや、難民問題・ギリシャ経済危機をはじめ今後EUの社会的・経済的リスクをドイツ1人で背負わなければならないことに不満があるようだ。

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NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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