180㎞/hオーバーでも安全?在独日本人も驚く!交通マナーのあり方をアウトバーンに学ぶ

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速度無制限で知られるドイツのアウトバーンでは「なぜあれほどスピードを出していて事故が起きないのか?」と疑問に思うときがあります。筆者が助手席に同乗してアウトバーンを走る際、180㎞/hを出されたあたりからそわそわ・・・、200㎞/hを超えると無意識にドアのグリップをぎゅーっと握り、いやな汗がじわりと出てくるのです(笑)。助手席だとなおさら恐怖感が増して、ゴーッ!っと切る風とモーターの音。「ああ…今ハンドルを違えてしまったら…隣車線のクルマが近づいてきたら…」とひやひやしながら考えてしまい、ドライバーとの会話はこのとき頭に入っていないことがほとんどです。

アウトバーンはたった一度の判断ミスや操作ミスが、大きな事故につながる危険が一般道よりはるかに高い場所です。しかし、アウトバーンでの事故は全体の国内死亡事故数のうち約15%と案外少ないそうです。それは道路がほぼ直線状の造りで視界がよいというのもありますが、ドライバーがアウトバーンでの走行ルールをしっかり守っていることが一番の理由です。

規則を守らぬもの、アウトバーンを走るべからず

アウトバーンでは、ゆっくり走るクルマが速いクルマを先に行かせるというルールがはっきりしています。追い越し車線で走っていても、うしろからさらに速いクルマが来ると、すぐに右の走行車線へ戻ります。追い越しをするとき以外は、走行車線を走らなければなりません。追い越したいクルマを追い越せば、さっと走行車線に戻ります。追い越し車線をダラダラと走り続けるのは厳禁で、交通違反となります。

アウトバーンはだいたいが3車線ですが、右から時速100~120km/h、150km/h前後、180km/h以上というスピードが目安となっているようです。追い越すクルマは車線左寄り、追い越されるクルマは右寄りと左右の車間距離にも気を配っています。お互いに、できるだけ距離を保ちながら走ります。それに、みな自分の運転するクルマの性能をよくわかっていて、いたずらに飛ばさず、そのクルマにあった走り方をします。

走行マナーのよさはアウトバーンだけでなく、一般道でも同じ。在独日本人が口をそろえるのが「ドイツ人は交通マナーがいい」ということです。ドイツは一般道であっても制限速度を順守することが徹底されています。これは一般道でオービス(速度取り締まり機)が多く、制限速度地域が細かに設置されていることもあります。日本とくらべてドイツはスピード取り締まりが厳しく、6km/hオーバーするとすぐオービスに写真を撮られてしまいますので、それゆえドライバーたちも制限速度をしっかり守ろうという気になれるのです。


▲ドイツのカーナビでは、走っている道路の制限速度と実際の速度が出るので便利。さらに街にはスピードレーダーで速度を測り、「いまあなたは〇〇km/hで走っていますよ」と電光掲示で知らせてくれるものもある


▲住宅街は基本30km/h。学校周辺など子供が多い地域は7㎞/h設定が多い


▲日本ではまだ少ないロータリー(環状道路)出口は歩行者優先。いつもきっちり止まってくれる

ドイツと日本の交通事故における死亡者数はそれぞれ4000人前後と変わりないですが、状況別にみるとドイツで歩行者死亡事故率が17%なのに対し、日本は36%と差があります。

日本とドイツでは道路の構造が大きく違います。ドイツではクルマと歩行者、そして自転車がしっかり分離されている道路が多く、歩行者が事故にあう可能性は日本より低いかもしれません。それにさきほど書いたように、取締りが厳しいため、高速道路以外の一般道でも細かな注意をはらって運転していることが大きな理由だと思われます。

規則はゼッタイのドイツ国民性

このように交通マナーがよいとされるドイツ人。これはドイツの「規則を守る」国民性にあるのかもしれません。以前、世界各国の国民性をあらわすブラックジョークが有名になりましたね。沈みかけの船で各国出身の乗客に海へ飛び込むよう指示するには、ドイツ人には「これは規則だから飛び込め」と言えばよいと…。(日本人には「もう全員飛び込んだがどうする?」という同調圧力をかけたものでした)

こんな皮肉も肯定したくなるほど、ドイツ人は規則と法律の中で生きています。日本もルールには厳しい国ですが、日本人でも嫌になってしまうほどのドイツは規則オンパレードの生活です。この規則を忠実に守る両国の違いは「例外を認めるか否か」です。筆者は、日本は案外お情けやグレーゾーンが許される国だと思っています。結果だけではなく、それまでのプロセスや努力、背景を考慮して決断を下すイメージがあります。しかしドイツは白黒つける結果論。期日が遅れたら、サインがなければすべてアウト。なぜなら規則には「この日まで」「サインをしなければならない」と書いてあるから、そうでないものは「ありえない」のです。

規則通りにしなければ、自分だけが損をする。そのため規則をみずから破ることはあまり好まれないですし、守らない人への対応というのはかなり冷たくなります。

アウトバーンが速度無制限なのはドイツだからこそなのかもしれない

最近は速度規制区間もふえてきたアウトバーンですが、いまだ速度無制限区間は残っています。先日アウディのテストドライバーがアウトバーンを253km/hで走行することに成功したとニュースがありました。このような200㎞/h越えのクルマも多くいるなかで自分も走るのですから、もちろん危険も伴います。「速度無制限=好きなだけ」とも捉えられますが、これを実現するにはドライバー個人単位でのルール順守、マナーの徹底が重要となります。 走行車線と追い越し車線を区別し、それぞれの性能に合わせてドライバーが道を譲り合うことで、安全かつ迅速な走行を確保するというのが原則となります。

制限速度が低く設定され、警察が取り締まりに目をぎらつかせる日本と、一般道でも100km/h、高速は無制限で走ることができるドイツと死亡事故率は変わらないのです。ドイツのメリハリつけた速度制限規制や、交通ルールの徹底、これは「規則はゼッタイ」精神からくるものもありますが、日本もいくらか学べる点があるのではないでしょうか?

[ライター・写真/ NAO]

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在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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