「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

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「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

ドイツ東部に位置するドレスデンという街をご存知でしょうか?日本ではあまり知られていない街かもしれませんが、昨年末、この街で反イスラム団体PEGIDAが発足して大規模なデモが行われたり、2015年度のG7の会合が開催され、麻生財務相が訪れたことで、今年はドレスデンの名が日本でも報道されることが多かったように思います。10月初め、ドイツが統一して今年で25年を迎えました。筆者もこの街に住み始めて5年が経とうとしていますが、旅行などで西ドイツを訪れるたびにやはり東西の違い・格差を未だ感じます。ドイツ人に聞いてもドレスデンは旧東ドイツの共産主義イメージが強く、同時に美しい芸術都市であるという認識もあります。そしてクルマ好きの方に聞けば有名な「ガラス張りのクルマ製造工場がある」街だという答えも返ってきます。ドレスデンとは一体どのような街なのでしょう?今回は皆さんにドイツの古都ドレスデンをご紹介いたします。

オペラなどの芸術文化が発達した芸術都市

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

ドイツ東部ザクセン州の州都であるドレスデン。ザクセン州はポーランドやチェコの国境に面しており、ドレスデンからプラハまで列車で約2時間、陶器で有名なマイセンまでも30分でアクセスできます。人口は50万人ほどのエルベ川の谷間にある街で、エルベ川から眺める旧市街の景色は「エルベのフィレンツェ」と呼ばれるほどの美しさ。その街並みと数多くの歴史的建造物があることからその名が付きました。ゲーテやワーグナーをはじめ、古くより多くの音楽家や画家たちから愛され、オペラなどの芸術文化が発達した芸術都市でもあります。かの森鴎外もこの地を訪れ、ドレスデンを舞台にした作品も書き上げているのです。そのため、一年を通して芸術に関するイベントが常に行われており、世界的に評価・注目されています。さらに城などの建物に関しては昔イタリア人の大工たちが宮殿や城を建てたことからイタリア・バロック建築の影響を強く受けているので、荘厳さを感じる石造りの姿は他のドイツの都市の建物とは一味違います。そして旧東ドイツの名残が今も強く、市街地を出ればアパートや大学施設はじめ、ソ連時代に建設された無機質な建物も未だ多く残っています。

「失われた街」と呼ばれる由縁

そんなエルベのフィレンツェと呼ばれる名称を持つドレスデンですが、ドイツでは「失われた街」としても有名です。そう呼ばれたる由縁は、第二次世界大戦の徹底的な空爆によって街の約9割が破壊され、市街部は壊滅状態で瓦礫の山と化したことから来ています。その後復興作業によって以前の街の美しさを取り戻したドレスデンですが、今でも空爆された2月13日には毎年追悼セレモニーが街をあげて行われ、多くの市民が参加しています。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

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その中でも有名なのが街のシンボルでもある聖母教会。こちらも空爆で破壊され、戦争の酷さを忘れぬよう瓦礫のままの状態でつい最近まで放置されていたのです。しかし再建に世界中から182億円もの寄付が集まり、2005年ついに復興工事を終え、元の姿を取り戻しました。ところどころに見える黒ずんだ部分は空爆当時の瓦礫から掘り出したもので、コンピュータ技術を使って以前の場所を割り出し、同じ部分へ使用。新しい部材との組み合わせがモザイク模様を描き出しているこの建物は、「ヨーロッパ最大のジグソーパズル」と呼ばれています。

ドレスデン中心部に位置する「ガラスの工場」

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

ドレスデンの経済を担うのは観光や芸術だけではなく、半導体・電子産業も発展しており欧州拠点の一つとなっています。そしてもう一つが自動車産業としてフォルクスワーゲン(以下VW)の製造工場があることも非常に有名です。なぜ一つの工場がそんなに注目されるのか?そのワケは工場の外観はもちろんのこと、VWの高級ライン「フェートン」がこの工場で生産されていることでしょう。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

「Die glaesene Manufaktur(グレーゼネマニュファクトゥア)」と呼ばれるこの工場は、訳せば「ガラスの工場」の意で、2002年から操業しています。この外観を見てお分かりだと思いますが、その名の通り、ほぼ全面がガラス張りでできています。オフィスや工場ラインなども外からは丸見えです。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

建物右側の円筒上のエリアにはフェートンがずらりと並んでおり、まるで大きなショーケースのよう。オーダーモデルも生産しており、こちらもすべて納品されていくフェートン達。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

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この工場ではすべてのフェートンと一部のベントレーが造られています。一日の生産台数はわずか25台のみ。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

工場と言っても排煙廃液なしで、製品パーツ組立のみなのでとても綺麗で近未来的な内観。毎日開場時間のあいだなら生産ラインを見学することも可能です。見学は生産ラインが動いている平日の方が見応えたっぷりです。

世界でも類を見ないパーツの運搬方法

そしてもう一つ注目したいのが、工場までのパーツの運搬方法。世界でも類を見ない路面電車運搬方式を採用しています。「カーゴトラム(CarGo Tram)」と呼ばれる貨物列車でドレスデンの街を走る公共交通路面電車と同様の路線を使ってこの工場まで運ばれています。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

VWからフェートンを載せて出荷する路面電車を目撃しました。近くにフェートンの工場があるそうです。電車に窓がなくVWのマークがあります。地元でも目撃は珍しいようです。

「ガラス張りのクルマ工場」がある、美しきドイツの古都・ドレスデンとは?

歴史・経済・文化にわたってドレスデンの街をご紹介しました。今回ご紹介したのはほんの一部ですが、中世から戦争、壁崩壊を経ての再統一、ドイツという国が現在に至るまでの歴史を全て物語っているような街です。伝統的なドイツといえば南部のイメージが強いのですが、地方によって全く違った魅力があります。ドイツに来る機会があれば、今もバロック時代の栄華と社会主義の面影が共存するドレスデンを是非訪れてみてください。

[ライター・カメラ/NAO]

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NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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