旧車の6割が現役なのはなぜ?気になるドイツでのクラシックカーの維持費を調べてみた

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ドイツのクラシックカーにおける優遇制度は「Hナンバー」の話題を中心に、カレントライフでもご紹介してきました。Hナンバーを探しに、クラシックカーミーティングに参加してみて印象的だったのは、若い世代のオーナーさんも結構いらっしゃるということです。まだ小さい子供を連れているお父さんや、20代の若者だったりと、若くしてスゴイなと感心していたときに気になったのです。「20代でクラシックカー持ち・・・。果たしてやっていけるのか?維持費がすごく掛かるんじゃないの?」と…。

気になって調べてみると、現在ドイツでは、61%のクラシックカーが日常使いされているという事実に驚きました。Hナンバーの車税優遇があるとしても、現代車と比べれば年間の維持費はかなり違うはず。なぜ、日常使いができるのか?気になるドイツでのクラシックカー維持費を調べてみました。

平均年間維持費は約25万円

まず、ドイツ自動車工業協会(VDA)の発表した全体的な旧車の年間維持費は以下の通りです。(※金額は1ユーロ=120円換算)

平均年間維持費(税金、保険料、車検代、保管料含む、燃料費は除外)
ネオクラシックカー(製造後10~20年):788ユーロ(94,560円)
クラシックカー(製造後30年~):2133ユーロ(255,960円)

そしてそれぞれの支払いの仕組みを見ていきましょう。

・車検
クラシックカーは2年に1度の車検(Hauptuntersuchung)が義務づけられています。Hナンバーは一律の60ユーロ(7,200円)となっています。通年ではないですが、Hナンバー申請時に通常車検とは別に、走行支障をきたす欠陥がないか調べるクラシックカー限定の車検があり、別途120~140ユーロを支払う必要があります。

・自動車税
ドイツでのクルマ購入後の絶対的支出となる維持費は自動車税と車両保険です。ドイツのクラシックカーでHナンバーを所有している場合は、自動車税が年間192ユーロ(23,000円)。これは定額なので、車種や排気量、製造年などは関係ありません。Hナンバーを取得していないクラシックカーは排気量に応じて課税がされますが、700㏄m以下排気量のディーゼルエンジンモデルだと192ユーロより安い場合が多いです。

・保険料
日本では車購入時に自賠責もディーラーに払い込み、車検ごとにまた払っていきますが、ドイツでは自賠責にあたる強制保険と任意保険ともに保険会社で手配する仕組みです。クラシックカー専用の車両保険はドイツ国内で18種類(企業)あります。一般的な自動車保険会社でも加入するのは日本よりは難しくありません。

一般保険会社であれば走行距離別プランで、年間8,000㎞以下だと年間約105ユーロ(12,600円)となっています。(ドイツ国内ドライバー全体の平均年間走行距離は14,350km、ネオクラシックカー/製造後10~20年が6,070㎞、クラシックカー/製造30年後以上 は2,800㎞)

ネオクラシック&クラシック

クラシックカー専門の保険会社だと、保険料は製造後年数か、馬力(ps)かで分かれていることが多く、平均は50~110ユーロ(6,000~13,200円)とされています。

例:ADACクラシックカー保険(馬力別)
45年以上 :~75ps :52.32 ユーロ(6,278円)、 150ps: 58.13ユーロ(6,975円)、150ps以上: 63.93ユーロ(7671円)
30~44年:~75ps: 62.23ユーロ(7,467円)、150ps:69.14ユーロ(8,296円)150ps以上:76.05ユーロ(9,126円)

メンテナンス費用はやはり大きく差が出る

平均年間メンテナンス費(修理含む)
ネオクラシック(製造後10~20年):205ユーロ(24,600円)
クラシック(製造後30年~):1437ユーロ(172,440円)
全体(年数関わらず):235ユーロ(28,200円)

・修理費用
車検や自動車税などのかかるべき維持費とは別に、車種によって大きく差がつくのが修理費用です。ドイツの自動車誌Automotor Sportで紹介されていた、以下3台を例に取ってみます。

定期検査(1回分、オイル交換費含む)
VWビートル:3,000円(250ユーロ)
アルファロメオ スパイダー:54,000円(450ユーロ)
ジャガーXJ6:96,000円(800ユーロ)

エンジンオーバーホール費用
VWビートル:240,000円(2000ユーロ)
アルファロメオ スパイダー:720,000円(6000ユーロ)
ジャガーXJ6:1,080,000円(9000ユーロ)

税金面ではクラシックカーならそろって同じだったコストも、メンテナンス面ではこのようにモデルによって何倍にも変わってきます。故障しやすいモデルだったり、オイル交換を年間でも複数しなければならなかったりなど、修理とメンテナンス費用は当たり前ですがクラシックカー購入前によく考えたいポイントです。


▲クラシックポルシェ専門のメンテナンスパケット一覧表(Grand Classicサイトより)

ちなみに、ドイツのクラシックカー専門工場では、メンテナンスパケットとよばれるプランを展開している所も多くあります。一律料金で、必要なメンテナンスを全て行ってくれるプランです。メンテナンススパン(何キロ走行)によって内容は変わりますが、細かなところまでかなり丁寧に診てもらえるのと、点検後の走行テストまで全てカバーしてもらえます。

日本と状況比較すると…

日本の税制は、保有税率が世界トップレベルです。JAFの調査によると、日本の自動車にかかる税金は現代車でさえ、ドイツの4倍、アメリカの50倍なのだそうです。そうなると、初度登録から13年を超えている場合は約1.3倍弱、18年超えの場合は1.6倍弱となるクラシックカーはなおさら重課税です。

任意保険も、会社によってはある一定の年式以上のものは加入もできなかったり、車両保険に加入できなかったり…旧車持ちはかなり厳しい扱いをされることが多くなっています。特にインターネットでの通販型自動車保険はその傾向が高くなるので、旧車を手に入れたら代理店型自動車保険に入らざるを得ず、税金面で節約は難しいと言えるでしょう。

今回ご紹介したVDAの統計では、燃料代は維持費には含まれてはいません。しかし、ドイツをはじめ欧州の消費税は約20%と高いことから、燃料代に関しては、日本の方が安くつくと思われます。しかし、それをもってしてもトータルコストはドイツの方が割安にはなるでしょう。

他にドイツでの維持費が安くなる理由としては、
・車庫証明が不要なので、ガレージ・駐車場代はマストではない
・シーズンナンバー制度など、決められた期間のみ走行・税金支払いできる制度があるので、さらに税金を抑えられる方法もある
・旧車文化が根強い分、日本よりパーツが探しやすい&比較的安価に手に入る可能性が高い(但しモデルによる)

同じモデルを持ったとしても、日本とドイツで比べると数字がかなり変わってくるのではないでしょうか。その大きな原因は自動車税ですが、日本国内で旧車に強い保険プランがないことも挙げられます。今回紹介したように、ドイツでは保険やメンテナンスなど、クラシックカーに特化したサポート団体が国内約450カ所存在します。旧車に対して国や企業がどのような態度を取っているかで、旧車オーナーの支出事情もガラリと変わってくるものですね。

[ライター・写真画像/NAO]

NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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