オリジナルが至高の価値観を変えるか?クラシックポルシェのカスタムはドイツでも人気となるのか

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近年、クラシックポルシェをカスタムする業者が増えてきました。その中でも世界的に有名なのは、アメリカのシンガーですね。ポルシェ911(964)などをベースにしたナロー風カスタムが、彼らの成功をきっかけに世界でクラシックポルシェの需要が増し、ポルシェの本国にあたるドイツでも広まりつつあるようです。

Kaegeの登場で、ドイツでもクラシックポルシェカスタムが話題に

ドイツのシンガーと呼ばれている企業があります。ワインで有名なプファルツ地方にある小さな街でチューニング工場を営む「Kaege[http://www.kaege.de]」です。


(Kaege公式サイトより)

「ポルシェ史上最高に美しいスポーツカーに、空冷993の遺伝子を掛け合わせるとどうなるのだろうか?」

このコンセプトがKaege Retroの始まりとなり、1972年製ポルシェ911(Fシリーズ)をベースに、より現代的な993のエンジンを載せたこのモデルはたちまち話題となりました。

見た目はまったくのクラシックカー、ポルシェ911です。しかし中身は993の技術が詰まっており、空冷3.6リッターフラット6エンジンをスワップ、リアサスペンションもマルチリンクへと変更し、6速トランスミッションも993のものをそのまま移植。内装も、エアコンやエアバック、ラジオ・カーナビ、OBD、リトラクタブルリアスポイラーなどの機能は、まさに現代版の911とほとんど変わりありません。


▲ベッカー製ヴィンテージルックなラジオカーナビ、カッコいい!(Kaege公式サイトより)

Kaegeのこだわりとして、ヘッドライトはポルシェ純正ライトパーツを手掛ける大手オスラム社の技術を基に開発したLED仕様にするこだわり。そしてヒューズボックスを含めたボディ各部をカーボン化、約100kgの軽量化を図っており、総重量は1195kg。 ボディカラーは現代モデルやレトロの色も選択でき、内装やアクセサリも、オーナーの要望に応えて仕上げてくれるようです。

Kaegeでのカスタムは1年に2台までしか受け付けないそうです。カスタム料金は日本円で3,600万円〜という、なかなかのお値段。ちなみにベース車代金はここに含まれておらず、911を自ら「持参」することになるのです。シンガーと同様に、Kaegeもユーザーが現存するポルシェ911を持ち込んでカスタムを依頼するシステムとなっています。カスタムのベース料金はジンガーとほぼ同額。しかし。ジンガーのカスタマイズは細部におよぶため、納車時の金額はかなり差が出てくるのではないかと思われます。


▲ドイツPS Automobil社はジンガー同様964ベースの911カスタムを行っている。ここはカスタム料金は2,500万円ほどから(PS Automobilサイトより)

ポルシェはオリジナル志向のオーナー多し

Kaegeを筆頭に、ドイツでもクラシックポルシェをカスタムする業者が増えてきました。ポルシェ社自体もレストア事業の展開をはじめ、初代911を使ったレストア例などを公開しています。

しかし、これからクラシックポルシェのカスタムはドイツでも浸透していくのでしょうか?「ポルシェはある種の宗教だ」などという言葉もあるほど、ドイツはもちろん日本でもポルシェにこだわりを持つ人は多いのです。そしてドイツのクラシックポルシェオーナーは特に細かく、そしてオリジナル志向が強いと言われています。

このオリジナル主義、一体なぜなのか?クラシックポルシェを中心に取り扱う販売業者のオーナーであるドイツ人知人に話を聞きました。

彼曰く「確かにクラシックポルシェはオリジナルを守るオーナーが多い。販売している側にとっても、オリジナルであることは俺のところでは絶対条件だね」とのことです。そして、ポルシェ好きは複数台所有のコレクターが多い傾向があるそうです。

「コレクションするうえで、ポルシェは『既に完成された芸術品』。だから敢えて手は加えない、そのままを見て乗って味わうのが理想的」という、オリジナル絶対主義の1人であるオーナーさんの意見をここに書かせていただきました。ありがとう、オーナー。

ポルシェにはポルシェなりの方程式があって、そこから導き出されたものがある。それをむやみにかき乱すのを、ポルシェオーナーたちは望んでいないのかもしれません。永遠の憧れ、クラシックポルシェの代表とも言える911のレイアウトが何10年にも渡ってほぼ変更されていないのも、ポルシェの意地と誇りであり、彼らなりの完成された答えなのでしょう。

クラシックポルシェをもっと日常使いしたいという想いも

最近、このようなクラシックカスタムが増えてきたのは、「クラシックモデルでも普段乗りにしたい」という傾向が強まってきたからだそうです。旧車に寛容なドイツでさえ、排ガス規制などの環境政策でクラシックカーの自由度は減ってきました。この先5年でもかなり状況は変わると思われます。ポルシェは人気がありますが、維持費、修理費が高いこともあり、普段乗りするにはコストがかかりすぎるということもあります。そうなると、クラシックポルシェのボディの下に、現代技術カスタムを施し、日常使いに…というのも1つの選択なのかもしれませんね。カスタマイズの費用は決して安くありませんが、乗る機会は格段に増えそうです。

レトロと現代の双方いいとこどりのカスタムカー。オリジナル志向が強いクラシックポルシェの中で、今はまだ少数派ですがカスタムして乗る風潮がドイツでも広まっていくのかもしれません。

[ライター・写真/NAO]

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NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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