カーシェアリングは一過性のブーム?技術革新で人が「クルマを買わない」時代が到来するか

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「カーシェアリングは10~15年後には消えている」。ダイムラーのリサーチ・システム開発部リーダー、アレクサンダー氏が先日放ったこの言葉が、最近ドイツで話題となっています。同氏曰く、カーシェアリングは「一過性のブームにすぎない」とコメントしたのです。

ダイムラーが展開しているカーシェア事業「car2go」は、今やドイツ都市部ではどこでも見かけるようになり、現在の日中利用率は80%以上となっています。それでも、ダイムラー側が言うように、カーシェアリングは本当に近年で衰退してしまうビジネスなのでしょうか?

モノを持たないというよりは、合理的かつコンパクトになってきたと感じられる時代となりつつあります。書籍、パソコン、電話、テレビ、これが今ではスマホやタブレット1台あればなんでもできてしまう。買い物ですら、重い荷物をクルマに積んで走らずとも、複数の店をはしごせずとも、クリック1つですべてまとめて届けてもらえるようになりました。そして「シェアエコノミー」の考えに基づき、クルマもシェアする時代です。そこで、本来であれば1台でも多くクルマを売りたいはずの自動車メーカーも、このカーシェアリング事業へ積極的に参加するようになってきました。

ダイムラーが意図しているのは今のカーシェアブームの衰退だけではなく、昨今のクルマの在り方も指しています。このカーシェアブームで、クルマが所有から共有される時代になりつつあります。そして将来は、自動運転車の普及で「自分で運転する」プロセスがなくなり、今のカーシェアリング自体も共に衰退していくだろうということです。

現在のような、自動ブレーキ、自動駐車などの半自動運転車は増えつつありますが、完全自動運転車は実用化・・・ましてや量産化にはまだ遠い話で、早くとも10年は先ではないでしょうか。しかし、普及すればクルマの価格帯は今よりさらに上がることは間違いありません。そうすれば、マイカーを買い渋る人も増え、結局カーシェアリングは自動運転時代になろうとも生き残れるのではないか?とも考えられます。

しかしその一方で、マイカーという存在は消えていってしまうのでしょうか。クルマの在り方が所有から共有に変われば、「自動車」という乗り物は、いつか「公共交通機関」となってしまうのではないでしょうか。カーシェアリングが増えれば、俄然1台の稼働率は増えますが、個人向けの販売数は明らかに減っていくでしょう。すると1台あたりの価格は上昇し、個人車を購入できるのは一部の高所得者のみの「超ぜいたく物」となりうるのか?そして今の自動車技術開発が目指す自動運転化が進めば、クルマは人々にとってスマホと同じく便利な機械、大きなロボットと同じくくりにされてしまうかもしれません。

そうなったときの未来をふと考えて思いました。

クルマは自分で運転するから、持つ意味があるのでしょう。自ら所有し、運転することで愛着がわき、それぞれの性格や見た目で多種多様なクルマを選ぶのが楽しいわけでもあるのです。もし自動運転で、ベース車がすべてが同じなら、今あるクルマの個性はどうなっていくのでしょう。自分勝手なことを考えれば、これから先もカレントライフで私は多様な記事を書いていけるのか、と不安になったり・・・。

しかし何より、今まで多くのクルマ好きな方とお会いしたり、マニアックさを極めた興味深い記事を拝見している中で、その方たちの楽しみが半減してしまうのではないかと思うのです。このまま時と技術が進めば、クルマを買わない・持たない時代がやってくるのでしょうか?アクセルを踏み込んで、足元やハンドルから感じる力強さと共にクルマを走らせる喜び、この感情がいつか薄れるときが来るのかはまだ想像できそうにありません。

[ライター・写真/NAO]

NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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