地元愛とクルマの味にこだわりが強いドイツ。バイエルン州出身なら愛車はBMWは外せない?

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ドイツでは「Geschmackssache(ゲシュマックスザッヘ=好みの問題)」という言葉があります。Geschmackはもともと「味」という意味なのですが、人がモノの好みを表す場合にも使われています。

そこから派生して「Autogeschmack(アウトゲシュマック=クルマの味)」という言葉も存在します。ドイツの自動車マーケティングでも「クルマの味(好み)の変化」という表現で使われますし、友人と好きな自動車メーカーの話をするときにでも「このメーカーのクルマは自分の味じゃないな」とも使います。

人の好みなんてそれぞれなんだから、クルマのことまで細かくいうな!と思われるのもごもっともなのですが、ドイツでは案外このクルマの「味」にかたよりが出てきます。それがはっきり表れるのが、州別の人気自動車メーカーです。日本では地方によってよく乗られる自動車メーカーのかたよりは少ない印象ですが、ドイツではなぜそうなるのでしょうか?

地元愛が強いドイツ

ドイツは連邦制。16の州から成り立っており、それぞれの州によって条例や祝日、教育・職業システムなども異なります。その州立制の影響もあってか、ドイツ人は地域意識や地元民との結束がとても強いのです。その分、あらゆる地方からの人が集まると、ご当地自慢で話が沸くに沸くドイツ人。地元サッカーチームのファンであることはもちろん、地産地消にこだわり、ビール大国といわれてもレストランでは地元の銘柄しか売らないし、飲まない。クルマにしても同じであり、それぞれの地域(州)によって乗られている人気のクルマ、つまり彼らの好みが出身地によって違ってくるのです。

州別にみるドイツ人のクルマの味

世界的に見ても、ドイツはすでに先進国、経済産業面からも成功している国ですが、国内ではベルリンの壁崩壊から28年経った今でも東西間に経済差があります。筆者が東ドイツに住んでいたころ、クラシックカーはもちろん、ポルシェなどの高級車を目にするのはかなりめずらしいことでした。当時、ドレスデンの観光中心地で働いていましたが、そこでこそ高級車を拝められた日々。しかし、そのほとんどが観光客で、そのクルマも大都市ナンバー。そして西ドイツで暮らす現在は、ポルシェは毎日見るし、高級店がならぶ大通りではエンジン音合戦を聞きながら信号待ち…というのにも慣れてきました。(デュッセルドルフ市内中心部にあるケーニヒ通りは高級スポーツカーがバンバンと通るため、クルマファンのなかでは有名です)西と東、これだけでもだいぶと違うものです。

ドイツの大手保険会社が調査したところによると、ほぼ全州で保有数1位なのはフォルクスワーゲン(VW)でした。やはり「大衆(フォルクス)車(ワーゲン)」という意味だけあり、ドイツ国民の代表的なクルマなのですね。しかし2位以下は州によってそれぞれですが、注目すべきところは「自動車メーカー本社がある州」です。


▲ドイツ各州の人気メーカーランキング(Finanzcheckサイトより)

南ドイツはパワー重視のクルマ
州別のクルマの好みとして一番代表的なのはバイエルン州ではないでしょうか。BMWのおひざもとであるドイツ南部バイエルン州ではBMWのクルマが圧倒的に多いのです。(バイエルン州13.6%、他州平均7%)警察車両も他の州ならVW、メルセデスベンツが一般的ですが、バイエルン州は徹底してBMW。州の公用車も例外ではありません。「ミュンヘン出身なら絶対BMW!」という考えが強いのです。

そしてバイエルン州に拠点を置くもうひとつのメーカーといえば、アウディです。バイエルン州民の所有するクルマの平均馬力数は129PSと国内トップとなっています(他州全体の平均は122PS)。バイエルンはパワフルなクルマが好みか…とも思いますが、同じくパワーパフォーマンスでは負けないメルセデス・ベンツは、同州では苦戦しているようです。しかし、ホームであるシュトットゥガルトでのメルセデス・ベンツの割合は23%と他州平均のほぼ2倍となっています。やはり、それぞれ地元のメーカーという思い入れと誇りがあってのセレクトなのでしょう。

東ドイツ:国境近くは隣国メーカー多し

▲VW、BMW、プジョー、シュコダの保有率が一番高い州と低い州を示している(Verioxサイトより)

東ドイツで優勢を保っているのは、シュコダ。チェコのメーカーであるシュコダは、チェコ国境近くの州だと保有数が西ドイツと比べて圧倒的に多いのです。特に東ドイツはチェコやポーランドからの移民が多い地域となっています。そして南西部のザールランド州はスイスとフランスの国境近くに位置しています。そのためフランスメーカーのプジョーの割合が多くなっています。どちらの州も国境近くということもあり、親しみがあるのでしょうか。また、経済的メリットを求めて隣国の人が国境すぐそばのドイツ都市へ移り住んでいることも多いため、ドイツに住めど彼ら自国のメーカーに乗りたいという想いもあるのかもしれませんね。

北・東ドイツVS南・西ドイツ
ハンブルクなどの北ドイツはアメリカ車であるフォードの割合が多くなっています。その次がオペルと並ぶのですが、北・東ドイツはドイツメーカー、とりわけBMWのような高級ラインメーカーの保有率が少ないようです。ドイツでは自動車の品質を保つべく、国産車に一番高い税率がかけられています。西ドイツとくらべ、北・東ドイツは国民の所得額も少ないため、税率の低い外国メーカーに乗るか、ドイツメーカーの中でも比較的価格が低いオペルが選ばれています。

それとは逆に、西ドイツの州のトップ3はほぼドイツメーカーでBMW、アウディ、メルセデス・ベンツが並びます。「稼ぎたいなら西に行け」といわれるほど、ドイツの経済は西に集中しています。そのため、大企業・富裕層が多く住む場所に、自然と高級ドイツメーカーユーザーも集中する結果になるのでしょう。

近年は「味」の変化も

2015年あたりから、いわゆるドイツ人のクルマの味の傾向は「よいもの」から「カラフル」になったといわれています。これは、信頼するドイツメーカーだけならず、海外メーカー車も積極的に乗られるようになってきたという多様性の傾向を表現しているものです。ドイツでは現在登録されている乗用車のうち、国内メーカーは72%を占めています。ちなみに日本は90%が日本車であり、輸入車はかなりのマイナーということになるのですね。

ドイツ人のゆるぎない地元愛は以前より認識していましたが、まさか乗るクルマにまで影響しているとは思いませんでした。ただ、ドイツでもクルマにこだわりを持つ人だと、マイカーを持つにあたってメーカーと出身地の関係以上に個人の「味」が重要になってくるのでしょう。日本で「愛知県民だからトヨタ一筋!」といわれると、驚かれることもあるかもしれません。しかし、案外ドイツではその考えがクルマを選ぶにあたっての重要な指標になっていたりするのです。

[ライター・写真/NAO]

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NAO

NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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