アウディR8で月面旅行も可能な時代に?アウディの新たな販促プロジェクト「VR Experience」とは

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VR元年とよばれた2016年。仮想現実と意味するバーチャルリアリティ(VR)を利用したゲームも発売され、ここ1年でVRの認知率が世界でもぐっと上がったのではないでしょうか。今後、さまざまな分野でVRが導入されていくことが予想されるなか、ドイツの自動車業界でも、そのVRを活用した販売方法がひろがりつつあるようです。

なぜVRなのか?

ドイツでは、はじめて新車を購入するのは40代からといわれています。ドイツはクルマの価格帯が世界的にも高いこと、さらに中古車市場がさかんなこともあり、ほとんどが中古車購入です。そのため、ただでさえ新車購入目的でディーラーへやってくる人は少ないのです。ドイツで新車を購入するユーザーはほとんどがインターネットでモデルを見て、候補を比較&決めることが多く、実際購入までにディーラーに通う回数は平均1~2回だといいます。ディーラーを訪れる理由としては、価格(または交渉)を聞くのが第一で、オプション追加などの相談はごくわずかなのだそうです。

インターネットの普及で、自宅からでも十分な情報が得られ、注文・購入までなんでもできる時代。「もっとクルマをじっくり自分の目で見てほしい」。この願いのもと、ドイツの自動車メーカーは、いかにユーザーにショールームへ来てもらえるか?と考えました。そして、クルマを購入するまでのショールームへの訪問回数、滞在時間が少ない現状を改善するため、VRを利用した販売促進法を提案。顧客をショールームへ誘引し、購入する際の選択肢を増やすねらいもありますが、販売側にとって、空間・時間的要因を問わない新たなクルマの宣伝メソッドとして注目されています。

ドイツメーカーの中ではアウディが開発トップ

現在VRを自動車市場へ起用するべく、研究開発しているのはアウディ、VW、BMW、メルセデス・ベンツ、ランドローバー、ジャガーです。そのなかで、アウディは2012年よりVR戦略をかかげ、すでに実用段階まできている唯一の企業です。

アウディが発表したVRプロジェクトの名は「VR Experience」。アウディモデルのインテリアやエクステリアを3Dバーチャル空間上で見ることができるシステムです。VR機はHTC製を採用しており、このシステムのために特別開発したヘッドホンとサウンドシステムで、まるで実物に乗り込んだような機械音(エンジン音)を体感できるのがウリとなっています。

「VR Experience」は、5×5㎡のスペースの中に大画面スクリーンとVRヘッドセット、コントローラーがついた体験キットが用意されています。画面はタブレットにより操作され、ゴーグルをかけたとたん、目の前にはアウディのクルマが!モデル、ボディカラー、背景やシチュエーションまでも自由に選択でき、なんと月面にまで飛べるというあそびごころも…。

ユーザーは、立っても座ってもVRを楽しむことができます。例えば、座ったままの場合、外観または内装をタブレット操作によって360°視点から見ることができます。立った場合は、みずから(VR画面上の)目の前にあるモデルまで歩いて近づくことが可能で、体をかがめれば車内も覗きこむことができます。

内装はステアリングのステッチの縫い目やシートの材質感まで詳細に再現され、アウディのこだわりが感じられます。そして外装・内装だけではなく、各パーツに近づいて覗きこむと、透明のグラフィックに変換され、エンジン内部やあらゆるパーツの細部まで構造がわかるしくみとなっています。

VR Experienceのメリット・デメリットとは?

VR Experienceにおける一番の特徴といえば、グラフィックとは思えないリアル感でしょうか。VR体験をしたドイツ自動車ジャーナリストのほとんどが「信じられないほどリアルな質感が目でわかる」とビジュアルクオリティに関して高い評価をしています。3D画像は1秒あたり90枚の画像を流すことで(2Dの場合は1秒あたり約40枚)、動いてもなめらかでリアリティのある映像を実現しています。

色、内装、シートの材質など細かな部分まで自由自在に選べるうえ、体験スペースにはシート生地サンプルも用意されているので、直接手ざわりやにおいを感じることもできます。車体を見るだけではなく、試乗シュミレーションも可能となるため、ユーザーは購入にいたるまでのイメージが非常にしやすい点がメリットでしょう。タブレット1つの操作で、細かなオプションの取りはずしもでき、ディーラー側としては、VRでアピールすることでオプション部品の売上増が期待できます。

そしてVRでは、何十種類のモデル、またオプション装備をあわせれば何百種類ものバリエーションを場所も時間も関係なくプレゼンできるということが一番の強みです。ショールームにないモデル、まだ市場販売まで至っていない超最新モデルでもVR Experienceでは先取って体験することが可能となっています。

デメリットとしては、実際にVR Experienceを利用した人が、めまいや吐き気などの健康被害を訴えているケースもあるようです。3D や光を通して視覚へ負担がかかると、斜視にかかるおそれもあることから、特に子供への長時間利用は否定的とされています。その点のフォローや改善もアウディにとって新たな課題となっています。

今後の展開は?日本にも導入予定?

2017年5月の時点で、ドイツでは4つのアウディショールームがVR体験施設を用意していますが、現在、顧客に提供できているのは、ベルリンの「Audi City」のみとなっています。「Audi City」はデジタル技術と実際のディーラーの強みを融合したサイバーショールームで、VRだけでなく、好みのモデルを自分用にカスタマイズし、ほぼ実寸大のスケールでスクリーンに映し出すバーチャルな体験ができる場所になっています。

今後サービスが拡大すれば、各アウディディーラーでVR Experienceを体験できますが、同社は現在輸送可能なモバイルVRも開発中とのことです。これが実用化されると、ショールームだけでなく、顧客の自宅などでもVR体験できるようになります。場所を問わずVR体験の機会を設けることで、購入アピールの幅を広げるねらいで、クルマの訪問販売がやってくる日もそう遠くないかもしれません。

今はアウディ内でもVR Experienceをあつかえる社員が少ないため、各販売店員への研修まで間に合っていないのが現状のようです。しかし、アウディは年末までに国内100のディーラーでVRショールームを併設させたプライベート・ラウンジを設置すると発表しています。

他国展開は今年夏ごろから欧州各都市のAudi City(ロンドン、パリ、イスタンブール、モスクワ)での提供を開始し、順次アジアをはじめとする世界各国でも利用を拡大していく予定となっています。日本ではすでに体験イベントも行われたようですが、アウディ販売店に常設される日はもうすこし先のようですね。VRというまったく新しいクルマの販売方法、今後でてくるであろう他メーカーのアピールも気になるところです。

[ライター・画像/NAO]

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NAO

在独6年目のライター。Current Europe GmbH (ドイツ現地法人)所属。ドレスデン工科大学修士課程を修了し、現在はケルペン在住。2012年よりドイツワイン店に勤務し、日本向けの販売・輸出業に携わる。独英韓中の語学力を活かし、通訳・翻訳家、現地コーディネーター、日本語教師としても活動。現代車にはない欧州クラシックカーの多様性に惹かれ、個人的にロイトとフィアット推し。「本当のドイツをもっと見てほしい」と自動車にまつわる文化・マーケティングを中心に現地情報を発信している。

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