日本は隠れたラリー大国だった!?念願のWRC昇格も夢じゃない「新城ラリー2019」をレポート

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国内を転戦しているモータースポーツといえば、各種フォーミュラカーレースやスーパーGTを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は全日本ラリー選手権としてラリー競技も年間シリーズ戦が開催されているのをご存知でしょうか。

今回は3月16日・17日に筆者の地元愛知県で開催された新城ラリーについて書こうと思います。

新城ラリー2019

日本ではラリー競技の認知度が低いと聞くのですが、ラリー関係者にとって新城ラリーは別格のようで、全日本ラリーでは観客動員数が最も多く毎年5万人を超えるそうです。

そこはやはり、自動車産業の街愛知県、トヨタをはじめとする地元自動車関連企業の全面的なバックアップとさらに愛知県という自治体の協力もあり地域に根付いたお祭りのようなイベントとなっています。

実は隠れたラリー大国のニッポン

前述のとおり、日本のラリー関係者からは「ラリー競技はどうもいまいち認知度が低くて…」という話を聞くこともあるのですが、一方で日本は古くからラリー大国で、伝統的に日本車はラリーで強いという側面も持っています。

1958年の「モービルガストライアル・ラウンド・フォー・オーストラリア」で210型ダットサン1000が1000cc以下の小型車クラスでクラス優勝を果たして以来、サファリラリーやサザンクロスラリー、1000湖ラリーなど名だたるラリー競技でブルーバード、フェアレディZ、ランサー、セリカといった日本車が勝利を納めます。日本車はラリーと共に発展し、故障率の低さと過酷な使用環境での信頼性の高さでその名を世界に知らしめました。元々、国内の道路事情が悪く高速性能よりも堅牢さや悪路の走破性が求められたことがラリー競技では幸いしたという面もあるでしょう。

1960年代後半から1970年代にかけては、コマ図を使ったラリーが若者の間ではわりと一般的なレジャーとして普及した時代もあったと聞きます。しかし、1973年のオイルショックによりモータースポーツは自粛されたことでラリーもまた日陰の存在となりました。F1が一大ブームとなったバブル期でも、RVブームによりパリダカ等のラリーレイドが一時的に注目されても、国内ラリー競技が表舞台に出ることはありませんでした。

しかし、WRCではセリカやパルサー等の日本製4WDマシンが好成績を収め、1990年代後半には三菱ランサーエボリューションとスバルインプレッサの一騎打ちとなり、1995年~1997年にはスバルは3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンの栄冠を手にします。しかし、これらのラリーでの活躍は一部のクルマ好きの間でしか知られておらず、スバルの3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した1997年当時、同時期にFIFAサッカーワールドカップに初出場となった日本代表のニュースばかり注目されていたのを歯がゆい思いで見ていた記憶があります。

マシンと観客が最も近いモータースポーツ

ラリー競技の特徴は色々な意味でマシンと観客の距離が近いということに尽きるでしょう。ラリーはサーキットでのスピードを競うレースと違い基本封鎖した公道を使い、決められた時間にチェックポイントを通過する正確さを競う競技です。そのためラリーマシンは原則、公道走行するための保安基準を満たしたナンバープレート付きのクルマで行われます。そのためリエゾン区間と呼ばれる移動区間では、時間の正確さだけでなく制限速度や信号など一般の車両と同様に交通法規を守る必要もあります。一方でSS(スペシャルステージ)と呼ばれる、タイムアタック区間もありSSではサーキットのレースでのラップタイムと同様通過時間の速さを競うことになります。

新城ラリーは厳密には公道ではなく新城総合公園と鬼久保ふれあい広場での開催ですが、数m先をラリーマシンがフルスピードで駆け抜ける迫力はなかなかのものです。

▲当日のにわか雨と急激な気温低下による路面コンディションの悪化で時折スピンする車両も…

パンフレットの注意事項にもあったのですが、ラリーをはじめとするモータースポーツ観戦には危険が伴うこともあり、特にラリーの場合は観客とコースが非常に近いため、破損した部品や場合によってはコースアウトした車両が飛んでくる可能性もあり、観戦する側もいつでも逃げられるように注意する必要があります。

あるラリー関係者によると新城ラリーは全日本ラリー選手権のすべてのステージの中で最も、安全管理やイベント運営が行き届いているステージだそうで、日本のラリー競技のモデルケースと言ってもよいイベントと聞いたことがあります。

地域に溶け込んだ稀有なモータースポーツイベント

モータースポーツというと、以前は一部のマニアのイベントどころか、暴走族と混同されて煙たがられることもありましたが、新城ラリーではそんな雰囲気はまったく無く、普通に地元の家族連れが楽しむなど、まるでヨーロッパのラリーイベントのように成熟したイベントのようにも思えてなんとも感慨深いものがあります。この日は大村愛知県知事も出席し、新型スープラのデモランでの同乗走行があったり、地元の警察や自治体からも理解が得られているのが印象的でした。

▲話題の新型スープラのデモラン、助手席に同乗するのは大村愛知県知事

車両の展示だけでなく、RCカーの走行体験のブースやTVゲーム機を使ったラリーのシュミュレーター体験など、子供が楽しめる催しにも抜かりはありません。

とくにラリーのシミュレーターは二人一組で実際のラリーのようにドライバー、コ・ドライバーに別れ、コ・ドライバーが「ペースノート」と呼ばれるコマ図を読み上げ、ドライバーに運転の指示を出すという凝ったもので、TVゲーム慣れしているお子さんのほうが案外速かったり、となかなか面白いものでした。

▲トルセンデフの模型。実際に動かすことでどうやってデフの空転を制限するのかが理解できます

個人的に興味深かったブースは駆動系パーツメーカーで有名なジェイテクトのブース。実物とまったく同じ部品構成のトルセンデフの模型を、サンプルを見ながら組みたてるというもので、一見簡単そうに思えてなかなか難しく、結局ギブアップしてしまいました。

念願のWRC昇格なるか

ラリーに詳しいCLカーズ読者の中にはご存知の方もいると思いますが、新城ラリーは全日本選手権からWRC(世界ラリー選手権)昇格を目論み、昨年まで全日本の最終戦だったのを3月開催に開催時期をずらしてまでWRCのカレンダー合わせ、現に2019年は昇格寸前まで行ったという話もあります。

この日の閉会式でも、しきりにWRC昇格の話題が出ており、来年こそはWRCに昇格すべく各方面で尽力しているとのことでした。以前、東海地区が自動車文化の街として成熟しつつあると書いたことがありますが、鈴鹿のF1、新城のラリーと東海地区がモータースポーツの街としても成熟しつつあるようにも思えます。

[ライター・カメラ/鈴木 修一郎]

鈴木 修一郎

愛知県名古屋市在住。幼少期より自動車が好きで、物心着く前から関心の対象はニューモデルよりもクラシックカー。免許取得後念願の昭和44年型スバル360スーパーDX購入、その後昭和48年型トヨタセリカLB2000GTを購入し現在も所有、今気になるのは縦目以前のオールドメルセデス。普段、普通の会社員をしつつ、休日は購入から20年近くたったスバル360のDIYレストアに挑戦中。実車のほかカーモデルやスロットカーも嗜み、最近はフルスクラッチで市販キットでモデル化されていない車種も製作。プロフ画像は最近完成したタミヤ1/12Gr.5セリカLBターボのラジコンボディをベースに市販車仕様に改造し自分の愛車を再現した初期型セリカLB2000GT。いつかはドイツに移住し愛車のセリカLBでヒストリックナンバーを取得しアウトバーンを走るのが夢。

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