ネオクラシックの白眉、メルセデスベンツ190E 2.5-16 エボリューション1・2の伝説をミニカーで辿る

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メルセデス・ベンツの長い歴史のなかでも、モータースポーツ直系モデルとして生を受けたモデルは数えるほどしかありません。なかでも1989年に登場した190 E 2.5-16 エボリューション1(通称:Evo 1)と、1990年に登場した同エボリューション2(通称:Evo 2)は、DTM制覇のために製作された伝説的なモデルとして現在人気沸騰中。特にエボリューション2は、一時期500万円前後で売られていた時期もありましたが、現在1,000万円以下で物件を見つけるのは困難な状況となっています。

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今回はネオクラシックのなかでも別格の存在感を発揮する、メルセデス・ベンツ 190 E 2.5-16 エボリューション1・2の伝説をミニカーで辿っていきたいと思います。

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▲ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E 2.3-16 1984(品番 430 035600)

190 E 2.5-16 エボリューション1および2のルーツとなったモデルが、1984年に登場したメルセデス・ベンツ190 E 2.3-16です。DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)をはじめとするGr.Aツーリングカーレースへの参戦を目的に、メルセデスがコスワースと共同開発した4バルブヘッドを搭載したことで当時大きな話題となりました。その2.3リッター直列4気筒DOHC自然吸気エンジンは、最高出力185ps、最大トルク235Nmを発揮。ナルド・テストコースで当時の世界速度記録をマークしたことでも有名になりました。
190 E 2.3-16は世界のツーリングカーレースで高い戦闘力を発揮。日本でもレイトンハウスカラーのマシンが1986年に登場しました。しかし、エースドライバーの萩原光は菅生で同車をテスト中に事故死。その年のル・マンで日産をドライブすることが決まっていたなかでの悲劇はいまだに忘れることができません。事故から30年が経った今でも鮮烈な印象を呼び起こすマシンです。


▲スパーク 1/43 レイトンハウス メルセデスベンツ 190 E 2.3-16 Gr.A 1986 全日本ツーリングカー選手権 Rd.1 MINE #16 萩原光/黒澤元治(品番 SKB43007)
ミニカー専門店の「キッドボックス」では、レイトンハウスカラーの190 E 2.3-16 Gr.A仕様をスパークに特注。3種類ある製品のうち、萩原光が実戦で走ったマシンもはこの製品のみ。

その後、190 E 2.3-16は、1988年のフェイスリフトを期にエンジン排気量を2.5リッターに拡大した190 E 2.5-16に進化。さらに1989年のジュネーブ・モーターショーでは、ツーリングカーレース用に各部を改良したエボリューションモデルとして190 E 2.5-16 エボリューション1が発表されました。
Gr.Aエボリューションモデルの規定台数は500台のため、190 E 2.5-16 エボリューション1は、502台が限定生産されたといわれています。エンジンはノーマルの190 E 2.5-16をベースとしながら、ボア×ストロークを変更してショートストローク化した別物。最高出力はノーマルと同じ195ps、最大トルクは235Nmを発揮しています。さらに最高出力を225psに、最大トルクを240Nmに強化したAMGパワーパックもオプション設定。メルセデスとAMGの結びつきがこの頃から強化されていきました。

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▲ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 1 Street Blue black met.(品番 Best.-Nr. 3000 B)
写真はドイツのミニカーメーカー、ミニチャンプスが当時発売した1/43ミニカー。ダイキャスト製のボディは上下2分割式になっていました。写真のブルーブラックのほかに、シグナルレッドとパールグレーのカラーバリエーションが存在します。

190 E 2.5-16 エボリューション1の外観上の特長は、ダウンフォース効果を高めた前後スポイラーと、ワイドタイヤの装着およびトレッド拡大を狙ったオーバーフェンダーの装着です。これによりトレッドはフロントで14mm、リアで24mm拡大され、タイヤサイズは225/50R16サイズに変更。さらにハイドロニューマティック方式の車高調整機能も備わります。

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▲ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E (W201) 2.5-16 “Evo 1” 1990 Black-Metallic(品番 437 032000)
こちらは2015年に発売されたミニチャンプス製の1/43 190 E 2.5-16 エボリューション1。25年前につくられた製品はダイキャスト製ボディでしたが、こちらはレジン製ボディを採用した完全リニューアル品。写真のブラックメタに加えてレッドのカラーバリエーションも存在します。ミニチャンプスの黎明期につくられた旧製品と見比べると、表現力が格段に高まっていることが分かります。

190 E 2.5-16 エボリューション1は、1989年5月14日にMainz-Finthenで開催されたDTM第7・8戦から実戦投入されました。BMW M3、アウディV8クワトロなどのライバルに対して善戦したものの、その年のタイトルはBMW M3に乗るR.ラヴァーリアが獲得。メルセデスにとっては不本意な成績に終わります。

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▲左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 1 Team: Snobeck Cudini(品番 Best.-Nr. 3011)
▲右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 1 AMG-König Pilsener Ludwig(品番 Best.-Nr. 3002)
当時、ドイツの新興ミニカーメーカーだったミニチャンプスの名を一気に押し上げたのが、1/43スケールのDTMモデル。複雑なカラーリングをデカールで再現し、当時としては非常にクオリティの高い仕上がりでした。

1989年シーズンで当初の目的が達成できなかったメルセデスは、AMGとのパートナーシップをさらに強化。念願のDTMタイトル獲得に向けてさらなる刺客を送り込みます。それが1990年のジュネーブ・モーターショーで衝撃的なデビューを飾った、190 E 2.5-16 エボリューション2でした。

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▲左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 Street Pearl grey met.(品番 Best.-Nr. 3100 G)
▲中央:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 Street Signal red(品番 Best.-Nr. 3100 R)
▲右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 Street Blue black met.(品番 Best.-Nr. 3100 B)
ミニチャンプスが約25年前に発売したEvo 2 ロードカーの1/43製品。現在の目で見ると大味ですが、Evo 2ならではの迫力はよく再現されています。502台が生産されたといわれる実車のボディカラーは基本的にブルーブラックのみですが、2台のみシルバーに塗られたという説もあります。

Evo 2の最大の特長は、そのド派手なエクステリア。特に’70年代のプリムス・スーパーバードの再来とも称されたリアスポイラーは、それまで保守的な印象が強かったメルセデスのイメージを一変させる強烈なインパクトを備えていました。

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▲左がEvo 1で右がEvo 2。両者の年式は1年しか違わないものの、空力的なアプローチが大胆に変化したことが分かります。

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▲特にリアまわりには大きな空力的進化が見られます。Evo 2はGr.Aのエボリューションモデルでもっとも過激なエクステリアを備えるマシンでした。

各部に目を向けると、興味深いつくりに惹き込まれます。まず、フロントバンパー下端にビス止めされるフロントスポイラーは、前方へ張り出してダウンフォースを高めることが可能。張り出した状態では、ライセンスプレートベースの左右に2本のステーを追加装着してフロントスポイラーをボルトで固定。走行中の脱落を防ぐつくりになっていました。


▲こちらがフロントスポイラーを張り出した状態。ライセンスプレートの両脇にセットされた2本のステーがフロントスポイラーを固定していることが分かります。

特徴的な形状のリアスポイラーでは、上段のウィング後端に付くエクステンションを無段階に調整できるようになっていました。また、リアスポイラー下段のフラップも角度調整式となっており、ダウンフォースを最大限に高める実戦的な仕様でした。

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▲この個体では、リアスポイラー上段のエクステンションは最大に伸ばした状態に、下段のフラップは最も立った角度に調整されています。

リアウィングのエクステンションにはさらに続きがあります。最大に張り出した状態にするとリアウィングとエクステンションの間に凹部ができてしまうため、そのすき間を埋めるためのフィラーピースが用意されていました。フィラーピースの裏側には粘着テープが貼付されており、装着方法はテープ止めという簡易ぶり。競技用ホモロゲモデルならではの簡潔さが表れていました。


▲上段のエクステンションは、5箇所の固定ネジを緩めることで張り出し量を調整できます。前述の通り、最大に伸ばすとすき間に段差ができるため、オーナーズマニュアルでは付属のフィラーピースをシール貼りしてすき間を埋めるよう指示しています。メルセデスの空力へのこだわりが感じられる部分といえるでしょう。

さらにオーバーフェンダーの形状も見直され、市販モデルでは17インチタイヤが装着されました。また、リアスポイラーに気流をスムーズに流すため、リアウィンドウ上部にはボディ同色のルーフスポイラーを装着。後方視界を犠牲にしてまでも空力にこだわる姿勢に、レースに対するメルセデスの本気ぶりが伝わってきます。
Evo 2のM102.992型エンジンは、Evo 1のM102.991型エンジンに比べると、圧縮比の向上(9.7から10.5へ)、レブリミットの引き上げ(7,250rpmから7,700rpmへ)、エンジン各部の軽量化などの改良が施され、最高出力は235psに、最大トルクは245Nmに増強されました。

evo_13b▲メルセデス・ベンツ ミュージアムで撮影したDTM仕様の190 E 2.5-16 エボリューション2。DTM仕様の最高出力は、当初の333psから最終的には373psを発揮。レブリミットも9,500rpmという究極的なチューニングが施されていました。

このように広範囲の改良が加えられたEvo 2は、1990年6月16日にニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)で行われたDTM第13・14戦にデビュー。その年のタイトルはアウディに乗るH.J.スタックが獲得したものの、その目覚ましい性能アップはライバルたちを大いに震撼させました。

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▲左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 AMG-König Pilsener Ludwig(品番 Best.-Nr. 3102)
▲中央左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 Team: AMG-East Thiim(品番 Best.-Nr. 13132)
▲中央右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes Evo 2 DTM ’92 Asch(品番 Best.-Nr. 23140)
▲右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 DTM ’92 Schneider(品番 Best.-Nr. 023102)
ミニチャンプスが当時発売していた1/43スケールのDTMマシン。カラーリングの美しさもあり、プレミア価格で取り引きされるほどの人気ぶりでした。

翌1991年シーズンはアウディV8クワトロに乗るF.ビエラにドライバーズタイトルを奪われたものの、同年開始されたマニュファクチャラーズタイトルはメルセデスが獲得します。そして1992年には、ついにSONAXカラーのEvo 2を駆るK.ルドヴィックがドライバーズタイトル、メルセデスもマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、ダブルタイトルを獲得。1986年に190 E 2.3-16がDTMにデビューしてから、実に7年目にして栄光を手にしたのでした。

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▲ヘルパ EXCLUSIV SERIE(品番なし)
写真は1/87スケールのEvo 2を5台セットにしたヘルパ製の限定ギフトセット。1991年シーズンに出走した4台のDTMマシンは、それぞれヘルパのMOTOR SPORTシリーズとして販売していた製品そのもの。それにシルバー塗装を施した特製のロードバージョンをセットすることで限定品に仕立てていました。

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▲左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 AMG Berlin 2000 GP Macau 1992 E. Lohr(品番 430 023133)
▲中央:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 AMG Berlin 2000 DTM 1992 K. Rosberg(品番不明)
▲右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E Evo 2 AMG Berlin 2000 DTM 1993 E. Lohr(品番 B6 600 5714)

Evo 2が活躍していた頃のDTMで個人的にもっとも印象に残っているカラーリングが、1992年から1993年シーズンにかけて登場した”BERLIN 2000″カラーです。
特に1992年には、1982年のF1世界王者にしてニコ・ロズベルグの父、ケケ・ロズベルグが”BERLIN 2000″カラーのマシンでDTMに参戦。Wunstorfの飛行場コースで行われたDTM第6戦では優勝を飾り、その年のランキング5位を獲得しています。2000年のベルリン・オリンピック開催に向けて著名人のサインをボディ全体に施したカラーリングは、シルバーのボディカラーと相まってドイツらしさを前面に押し出したもの。残念ながら2000年のオリンピックはシドニーに決定したものの、いまだに新鮮な印象を受けるデザインです。写真中央の”BERLIN 2000″パッケージを備えたミニカーも当時製作されました。

しかし、翌1993年からDTMの車両規定が従来のGr.Aから改造範囲の広いFIAのクラス1に変更。新たにアルファ・コルセが2.5リッターV6エンジンにフルタイム4WDを組み合わせたアルファロメオ155 V6 TIをもって参戦を開始しました。そのためDTMのレース活動を行っていたAMGは、前年までの190 E 2.5-16エボリューション2をベースにクラス1規定に合わせたマシンを開発。新たに190 E/C1として1993年シーズンを戦うことになりました。

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▲左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E K1. 1 DTM ’93 AMG Berlin 2000 K. Ludwig(品番 430 933230)
▲中央左:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E K1. 1 DTM ’93 AMG Berlin 2000 E. Lohr(品番 430 933231)
▲中央右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E K1. 1 DTM ’93 Zakspeed Diebels K. Thiim(品番 430 933231)
▲右:ミニチャンプス 1/43 Mercedes-Benz 190 E K1. 1 DTM ’93 AMG Tabak / Sonax B. Schneider(品番 430 933202)

DTMの1993年シーズン用に投入された190 E/C1は、前年までの190 E 2.5-16エボリューション2からエアロダイナミクスをさらに進化。ドライサンプ化された2.5リッター4気筒エンジンの最高出力は、375psにまで高められました。
1993年4月4日に行われた開幕戦のゾルダーでは、まずK.ルドヴィックとB.シュナイダー用の2台が登場。Evo 2と併用するカタチで参戦を開始します。そしてホッケンマイムリンクで行われた次のDTM第3・4戦では、B.シュナイダーが両レースで優勝しました。
しかし、1993年シーズンは同年デビューしたアルファロメオ 155 V6 TIに乗るN.ラリーニがチャンピオンとなり、メイクスタイトルもアルファロメオが獲得します。この年をもって190 EはついにDTMの表舞台から姿を消し、翌年W202のCクラスボディを纏ったニューマシンのCクラスDTMに主役の座を譲ることになりました。

このようにDTMでの活躍が印象的だった190 E 2.5-16 エボリューション1および2。今回ご紹介しきれなかった実車のディテールとミニカーなどは、Part 2でご紹介したいと思います。

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北沢 剛司

’70年代のいわゆる「スーパーカーブーム」の洗礼を受け、以来、クルマの世界にどっぷり浸かって大人になってしまった自動車ライター。ニューモデルを見るため20年以上ジュネーブ・モーターショーに通う一方、所有したクルマは’80〜’90年代のネオクラシックカーばかり。さらにミニカーやカタログなどの自動車趣味からモータースポーツまで、興味の対象は幅広い。自動車専門誌や一般誌での執筆をはじめ、輸入車関係の仕事などを幅広く手がけている。

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