なぜ、旧いクルマのデザインは秀逸なのか?[part1:ヘッドライト編]

  1. コラム
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「クラシックカー」や「ヒストリックカー」といわれるクルマのデザインは、とても魅力的なものが多いのは周知の事実だろう。

その一方で、現行のクルマは衝突安全性をはじめとする規制に伴い、デザインの幅に制限がある。リトラクラブルヘッドライトを採用できないことが、その最たる例かもしれない。しかし、果たしてそれだけだろうか?
※あくまでこれは著者の考えであり、現行のクルマのデザインを否定するために書いているわけではないことを先に記しておきたい。

1.ヘッドライトの変遷について

ユダ会長 HCC95

現代のクルマは、「衝突安全性などの規制強化に伴い、デザインに制限が掛けられているのではないか?」という仮説を元に、筆者が「果たしてそれだけだろうか?」と感じた点を下記におまとめてみた。

今回は「ヘッドライト」という部品に関して著者が思うことを記していきたい。

2.かつてヘッドライトは4種類だった

ユダ会長 HCC95

1983年ころまで自動車のヘッドライトは統一規格だった。

さかのぼると、1940年代にアメリカで7インチのシールドビームが規格化された。いわゆる「大丸」ヘッドライトのはじまりである。

そして1950年代に入ると、キャデラックなどが7.5インチの丸目4灯を採用し、新たな規格として認められることとなった。これが「小丸」である。

さらに1960年代に入ると、ヨーロッパで角型のヘッドライトが登場した。

1970年代に入ると、アメリカでも角型の2灯「大角」、4灯「小角」も統一規格に加わり、計4種類のヘッドライトが統一規格となった。その後、1983年のシールドビーム規格が廃止されるまで、異形ヘッドライトを除き、基本的にはこの枠でデザインされるクルマが多かったのである。同時にこれは、量産におけるコスト削減や部品供給を楽にするための処置でもあった。

ここで例を挙げると

●MGB、トライアンフTRシリーズ等:大丸2灯
ユダ会長 HCC95

●コルベットC1,スティングレー等:小丸4灯
ユダ会長 HCC95

●デロリアン:小角4灯
ユダ会長 HCC95

●1986年以降ボルボ244GL:大角2灯

…と、このように大別される。

かつてヘッドライトは4種に分類された。統一規格ゆえ、出先でライトが切れても大半のガソリンスタンドでも交換が可能だったのだ。

その後、時代の移り変わりのなかでハロゲンランプなどが出現し、シールドビームの形を残しながら密閉型でなくなりつつある時期もあった。

人によってはこれを「懐かしい時代」と思うかもしれない。リレーを付けて明るくするチューニングを真剣にやっていた人も多かった。筆者も、ご多分に漏れずいろいろなチャレンジをしていた記憶がある。

3.時代の移り変わりとともに個性が失われていったヘッドライト

ユダ会長 HCC95

クルマのデザインで「もっとも重要なのはヘッドライト」と考える人は案外多いのではないだろうか?

ヘッドライトは、クルマの顔というより、もはや「目」である。それだけに「目」がクルマのデサインには欠かせない要素であることは誰もが理解できる要素だ。

最近は「どのクルマも似通っている」という言葉をしばしば耳にするが、以前は、そのヘッドライトが統一規格の関係で4種類しかなかったにもかかわらず、個性的なデザインのクルマばかりだったように思うのはなぜだろうか?それは、各自動車メーカーが、前述の規制に縛られながらクルマをデサインせざるを得なかったのである。

ユダ会長 HCC95

当時、まだ自動車の技術も含めた黎明期であったがゆえ、各メーカーがしのぎを削って技術革新を行っていた。だからこそ「規格」という枠のなかでも個性あふれるデザインを創りあげ、そのデザインが現在のアイコンのようになっているメーカーもいまだに多い。

一方、現在はその「目」の統一規格がなくなり、ある意味ではデザインに自由度が増しているはずなのに、「個性」があまり感じられないデザインが多くなっているようにも思える。それは、技術革新やデザインが飽和状態になっているから…なのかもしれない。

4.リトラクタブルライトの廃止はスーパーカー世代の夢の終わりだったのか?

ユダ会長 HCC95

ヘッドライトに関連することで著者がもっとも残念に思うのは、リトラクラブルヘッドライトがなくなったことである。

スーパーカーブームを経験した人であれば、より共感していただけると思う。

リトラクラブルヘッドライトが「突起物」とみなされたことによる危険性、重量や空気抵抗、光軸のズレ、部品点数の多さでのコストなど、様々な要因があるようだ。筆者が知る限り2005年のコルベット以降、リトラクラブルヘッドライトは作られていないようだ。

子供の頃、近所のお兄さんがマツダRX-7を買ったときに毎日のように通って「ライト開けて!」と頼み込んで見せてもらった記憶がある。

今、これをデザインすれば確実に売れると個人的に思うのだが、今や海外含めて、そんなメーカーはなくなってしまった。

上記の理由ゆえ、これは仕方のないことではあるが、あぁいう男の子の心をくすぐるようなギミックが、今や利便性の方向のみに向かっているように思えてならない。世の中の流れはわかるが「男の子」の感性というものに関しては無意味な方向にシフトしていると思う次第である。

5.最近のアメリカ車を見て思う。過去のデサインに固執することは悪いことなのか?

ユダ会長 HCC95

ここで、近年、過去のデサインを踏襲する自動車メーカーが現れてきていることにも触れておきたい。

ここ10年ほどは、アメリカ車、特にチャレンジャーやカマロ等のマッスルカー系は、ボディーのデサインだけでなく、ヘッドライトも当時と同じような挑戦的なデザインだ。

著者は熱狂的なアメ車ファンというほどではないのだが、これは素直に「かっこいい」と思う。

当時、クルマのフロントマスクでもっとも重要な「目(ヘッドライト)」の選択肢が少ないにもかかわらず、何故、各自動車メーカーがあれほど歴史に残る名車を輩出できたのか?

最近、欧州でも、挑戦的なデザインが徐々に増えてきている。

やはり「見た目のカッコよさ」が重要であることは間違いない。

これからは、過去のアイコンも含めメーカーの持ち味とした独創的なデザインの車が増えてくれることを願うばかり。

しかし…。たまには「丸」や「四角い」ヘッドライトの採用を密かに願っている。それは、筆者だけではないはずだと信じたい。

[ライター/ユダ会長・撮影/ユダ会長&松村透]

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ユダ会長

1995年より活動するHCC95(ヒストリックカークラブ95)の会長。18歳の頃から、「ユダ」というバンドで活動しながら(当時からユダと呼ばれていた)クラブの会長になったのが「ユダ会長」の由来である。HCC95は、1950年代の旧車~1970年代のスーパーカー等を中心に集めたクラブであり、関東全域を中心に活動中。毎月第三日曜日の午前中に集まるミーティングも恒例行事となっている。「JCCAニューイヤーミーティング」は19年連続出展。「お台場旧車天国」では、毎年120台をクラブ展示するなど様々なイベントに参加。また「かわさき楽大師 昭和まつり」では、第一回から15年間、大師公園において50台もの国内外の名車の展示およびパレードを行うなど、様々なイベントを企画運営も行う。ユダ会長個人としても、OldTimer誌(八重洲出版)、デアゴスティーニなどで連載中。http://www.hcc95.com/

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