2ボックスハッチバックのルーツ、ルノー・キャトル

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4と書いて「キャトル」。名前は知らなくても、ヨーロッパのおしゃれな風景の中にとけ込むようにして、「ルノー・キャトル」がたたずんでいる姿を記憶している人も多いのではないでしょうか。実はこのクルマ、いまは当たり前のように走っているハッチバックのルーツと言われています。どのようにして、このクルマがこの世に生まれてきたのか。そのキーワードは「農民」にありました。

農民の国の、農民のためのクルマ
フランスは、実は農民の国。おしゃれなのはパリのごく一部だけです。国連機関によれば、フランスの農業用地は全体の53%、日本は約12%程度でしかありません。そういう国で開発されるクルマは、農家をターゲットとして作られていました。

よく知られた話で、シトロエン2CVの開発ストーリーの中に、

・50キログラムのじゃがいもを載せて走れること
・カゴいっぱいの生卵を載せて荒れた農道を走っても、ひとつも割れないこと

という目標があったことが語られています。とても分かりやすい目標です。

その2CVは1950年代の農民の“アシ”となりましたが、1960年代に、その2CVに取って代わることを目的にルノーが開発したのが「4」です。「4」は、フランス語で「カトル(Quatre)」と発音します。日本では「キャトル」と呼ばれることが多いようです。従ってこのコラムもキャトルと呼びます。

2CV同様、農民がたくさん農作物を積んで走ることを目的として開発されています。その一番の例がリアのハッチバック。大きなドアで、じゃがいもやにんじん、ときにはブタやニワトリなども、どんどん手軽に放り込むことができます。この点が、通常のトランクリッドしか持たない2CVとの大きな違いであり、メリットでした。すでにお気づきの方もいると思いますが、実はこのクルマこそハッチバックの起源ともいわれています。フォルクスワーゲンゴルフなどをはじめとする現代のハッチバックは、すべてここから始まったともいえるのです。

ホイールベースが左右で5センチも違う
お尻をツンと上げた停車時のポーズも特徴的です。これは乗り心地と積載重量のふたつの課題をクリアするために生まれたポーズです。2CVもそうであったように、キャトルも荷物を傷めない乗り心地の良さが求められました。そのため、バネはとても柔らかい設定になっています。しかしそれだと、荷物を積んだときにリアがかなり沈み込んでしまいます。その対策として、イニシャルのときからリアをかさ上げしているわけです。

このクルマでビックリする点は、ホイールベースが左右で50ミリ違うことです。原因はリアのサスペンションにあります。リアはフル・トレーリングアームとトーションバーで組み立てられていますが、カーゴルームを最大限に広げようと、サスペンションのためのスペースがギリギリまで狭められました。その結果、トレーリングアームの取付位置が前後方向にずれ、それがそのまま、ホイールベースの違いとなったのです。

RRの駆動系を、そっくりそのままFFに
エンジンの搭載方法も独特です。リアエンジン(RR)だった先代のルノー4CVのエンジンとトランスミッションを流用して、そっくりそのまま前に持ってきたのです。トランスミッションを前方に、次にエンジンという順で搭載し、FFとされました。そのため、ホイールハウスがちょっと前寄りになった、FR車のようなプロポーションになっています。このことが、このクルマがちょっと小粋に見えるデザイン上のポイントになっています。

ギアボックスがクルマの一番前に行ってしまったため、ギアボックスから車内まで長い長いリンケージが伸びています。ボンネットを開けると、ギアボックスから生えた「棒」がそのまま、フロントのスカットルを貫通しているのが見えます。運転席側から見ると、ダッシュボードからシフトレバーが生えているように見えます。ちなみにエンジンは前述の4CVの747ccに始まり、生産終了時には34ps/7.5kgmを発生する1108ccにまで拡大されています。

フランス流“おしゃれ”を体現したクルマの一台
キャトルはその後、バン仕様の「フルゴネット」(現在のカングーにつながる)などのバリエーションモデルも多く作られ、1992年まで製造されるロングセラーとなっています。その間の生産台数は835万台。モデルチェンジなしに達成した生産台数としては、フォルクスワーゲンタイプ1、T型フォードに次ぐ歴代3位となっています。

フランス農民のために作られたクルマは、国や時代を超えて多くの人に愛されることとなったのです。フランスのクルマは“おしゃれ”とよく言われます。それは、このキャトルのようにハッキリとした目的を持ち、しっかりとした機能性を備えているからだと思います。そういったクルマの個性、例えるなら背筋がピシッと通ったようなブレのないそのスタイルやありようが、見る人によっては“おしゃれ”と感じられるのではないでしょうか。

[ライター/CL編集部 画像出典/Pinterest]

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