ピニンファリーナデザインよ、もう1度。フェラーリ・テスタロッサの遺したもの

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いまでこそ、V8エンジンを搭載したフェラーリが話題の中心かもしれませんが、キング・オブ・フェラーリといえば12気筒エンジンを搭載したモデルです。それは、いまも普遍なはず。V8エンジンフェラーリ、たとえば328GTSを思う存分堪能して、いよいよ念願だった12気筒モデルへ。これが現代なら、フェラーリ488GTBの次はF12へ…となるのでしょうか。

当時はそんな「順当なステップアップ」があったように思えてなりません。現代では、同じフェラーリのラインナップのなかでも選択肢がありますし、他メーカーにまで視野を広げれば、それこそありとあらゆるモデルが選べます。良くも悪くも、12気筒エンジンフェラーリの位置付けが変わりつつあるのかもしれません。

ときは1984年。華やかなるテスタロッサのデビュー

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いまから32年前の1984年10月2日。フランス・パリのシャンゼリゼ通りに面したクラブ・リドが、テスタロッサのデビューの場所となりました。この模様は、当時オンエアがはじまったばかりのカーグラフィックTVでも紹介されているので、映像をご覧になった方がいらっしゃるかもしれません。

アンベールされた瞬間から、驚きとどよめき。そして喝采。まさに注目を一身に集めた存在でした。おそらくは、このスタイリングに一目惚れした世界中のユーザー(および予備軍)が、いつか必ずこのテスタロッサを手に入れようと固く心に誓った瞬間だったはず。

このように、先代のフェラーリ512BBiの後継モデルとしてデビューしたテスタロッサは、生まれながらにしてスポットライトを浴びる宿命を背負った、華やかさとスター性を兼ね備えた存在だったといえます。

テスタロッサはスーパーカー?それとも

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フェラーリ365GT4BBから、512BB、512BBi、そしてテスタロッサといった系譜をたどるにつれて、スパルタンな路線からラグジュアリーな方向へと変貌を遂げていった12気筒エンジンを搭載するフェラーリ。それは、時代が求めた「キング・オブ・フェラーリ」への、フェラーリ側の回答だったのでしょうか…。

最新モデルにあたるフェラーリF12ベルリネッタは、革をふんだんに使った豪華な内装と、いまやテスタロッサ時代の2倍近い最高出力740馬力のパワーを併せ持つ、名実ともに「スーパーカー」です。豪華さと強大なパワーを高次元で両立させたという点において、さまざまな賛否両論があるにせよ、その血統は脈々と息づいているのです。

ラジエーターの位置が、テスタロッサのスタイリングを決定づけた

ピニンファリーナデザインよ、もう1度。フェラーリ・テスタロッサ
テスタロッサに搭載されている12気筒エンジンは、点火系や燃料系統など、6気筒のユニットを2つ組み合わせることで成立したといわれています。そして、1950年代後半に名を馳せたフェラーリ250テスタロッサのそれがそうであったように、シリンダーヘッドのカムカバーが赤くペイントされ、文字通り「テスタロッサ=赤い頭」を冠するモデルとして広く知られることとなりました。

この現代版(といっても30数年前ですが)テスタロッサのスタイリングは、フォーミューラーカーがモチーフとなっているのです。それまでの512BBiまでは、エンジンはミッドシップマウントであっても、ラジエーターは車体前方に置かれていました。しかしテスタロッサは、開発の早い段階から「ラジエーターを後方に設置することで冷却効果が期待できるスタイリング」というオーダーが、フェラーリからピニンファリーナに要求されていたのです。

つまり、テスタロッサの特徴的なサイドフィンは「はじめにメカニズムありきで生み出されたスタイリング」といえるのです。その後、ドアミラーの取り付け位置やホイールのデザイン(センターロック式から5穴へ変更)を含め、目視上での変更点はわずかであり、そこを判別する(できる)ことがマニアの密かな愉しみともいえます。

1992年。テスタロッサから、512TRへ

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テスタロッサが誕生してから8年が経過し、1992年1月に後継モデルにあたる「フェラーリ512TR(以下512TR)」がデビューを果たします。奇しくも、フェラーリ社の前社長にあたるモンテゼーモロ氏就任後、最初にリリースされたモデルが512TRとなったのです。またさらに、ヨーロッパよりも先に日本で発表され、発表前に生産が開始されていたこともあり、デリバリーのタイミングも同時であったことなど、異例づくしのモデルとなりました。

512TRは、発表当時から「テスタロッサとは別のクルマ」とフェラーリ側が明言していました。

テスタロッサと比較して軽量化され、エンジンパワー、ブレーキの強化、シャーシおよびエンジンマウント方式の刷新しつつも、外観の変更は素人目にはごくわずか。しかし、テスタロッサと並べてみるとその違いに改めて気づかされます。

日本におけるテスタロッサ(およびその系譜)の未来

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7177台が生産されたフェラーリ・テスタロッサ。ご存知の通り、ここ数年で急激に中古車相場が上昇しており、日本から海外へと流れていく個体も多いようです。当時は大柄に見えたスタイリングも、現代のフェラーリと並べてみると、むしろ控えめな奥ゆかしささえ感じるほどです。

もはや、ネオクラシックカーの領域に入った感のあるフェラーリ・テスタロッサ。この美しいスタイリングを、後世にも語り継いでいきたいものです。

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松村 透

輸入車の取扱説明書の制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトのリニューアルを担当し、Webメディアの面白さに目覚める。その後、大手飲食店ポータルサイトでコンテンツ企画を経験し、2013年にフリーランスとして独立。現在はトヨタ GAZOO愛車紹介の監修・取材・記事制作や、ベストカー誌の取材等で年間100人を超えるオーナーインタビューを行う。外車王SOKENは2015年より参画。副編集長を経て、2019年、編集長に就任。現在の愛車は、1970年式ポルシェ911Sと2016年式フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン。9月11日生まれの妻と、平成最後の年に産まれた息子、動物病院から譲り受けた保護猫と平和に(?)暮らす日々。

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