自動車Webメディアの編集部に必要なのは、広告収入に欲を出さない誠実さと人材か?

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前回は主に自動車雑誌の現状と、今後、どういった方向に進んで欲しいか。私なりの希望を記させて頂きました。今回は自動車Webメディアと、実際に記事を作る編集部が抱える問題等を語りたいと思います。

フェイクニュースによりインターネット上の情報は著しく信憑性をそこなった時代

▲画像は著作権を考慮しモザイクをかけてあります。また本文内容との関係はありません

日々、自動車に関わる記事を更新し、ユーザーに情報や娯楽を届ける自動車Webメディア。2010年くらいから大きくその数を増やし、現在では100程のサイトが活動しています。一言に「自動車Webメディア」と称しても、自動車メーカーが公式に運営するWebメディアや自動車雑誌系、Webメディア組織により運営される情報・ニュース総合系、新車情報系、中古車情報(買い取り情報含む)系、モータースポーツ情報、クラシックカー系…等々。立ち位置や方向性は多岐に渡ります。

ここからはWebメディア全体の話になります。一昔前、メーカーや雑誌(出版社)といった母体を持たない専業Webメディアは、閲覧者数という実績により得られる広告収入で運営されるのが一般的でした。簡単に、そしてより多くの閲覧者数を稼ぐため、運営側は人の不安を煽る記事やショッキングな記事を競って掲載。次第に内容はエスカレートし、ついには全くの虚偽の記事や、他のWebサイトの記事を丸々コピーして掲載するWebメディアが溢れます。その結果、健康食品やサプリ、化粧品Webメディアが医療を謳いながら掲載した虚偽の情報により、ついに健康被害者を出してしまいます。この件は大きな社会的問題となって司法が介入、インターネットに掲載される記事の信憑性が失墜したのは記憶に新しいところです。

また、かつては検索エンジンの検索結果により早いページ(高い順位)で掲載されるため「検索の想定される単語を、文章内に一定の割合で組み込む」等の手段が存在し、多くのWebメディアがこぞって採用。これにより検索結果の上位に表示されるのは読みづらい記事ばかりとなったことも、信憑性の低下に拍車をかけたのだと思います。

現状は、一時期ほどひどい状態ではなくなりました。しかし現実の世界で詐欺やねつ造、デマ、オカルトがなくならないよう、インターネットの世界でも消えることはなく、さまざまな思惑の元に、より巧妙に人の不安を煽るよう仕組まれた記事が跋扈しています。

こと自動車Webメディアは詐欺やねつ造、デマ、オカルトが(雑誌と同程度に)起こりにくいジャンルでもありますから、閲覧者は記事を一応、信じてくれていると思います。記事を製作する編集部のすべきことは、知らず誤った情報を流さぬよう徹底することでしょう。意図してなかったにせよ「このWebメディアはフェイクニュースを流した」と認定されると、それまでの閲覧者は離れ、検索エンジンからも省かれてしまうかもしれません。

虚構の記事は閲覧者を失う。妄想を看破できる専門家が編集部内に必須

詐欺やねつ造、デマというほど意図的ではなく閲覧者に不利益を与えませんが、編集部やライターがまったくの妄想で執筆した文章は、それが事実ではないとしっかり伝わってしまい、とてもしらけてしまうものです。

▲もちろん経験も知識もないのに、安請け合いしてしまうライターにも問題はある。けれど断ると、もう次の依頼がこなくなるといった現実も…

これはWebメディアではなく、とある自動車雑誌の記事の話です。その雑誌は他誌と差別化をはかるために、定番の自動車情報のほか、テーマを持った特集ページを組んでいました。

今や懐かしい「ちょいワル」が流行していた時代。その号では「クルマと、ちょいワルライターのやんちゃな経験」的な特集を組んでいたんですね。ほとんどのライターさんが「俺、昔はやんちゃだったんだぜ!だからモテモテさ!」といった感じの記事を書かれていました。私自身はやんちゃとはほど遠いオタクですが身内にやんちゃなのがおり、加えて野郎ばかりの学校に通っていたため、長いことやんちゃに囲まれた日々を送っていました。そのおかげで上記特集の大半は、あまりに実情から離れた都合の良い作り話だと容易に伝わりました。

安い雑誌ではありませんし、読まないのも勿体ないので一通りは読んだのですが、中高年男性ライターの自慰的な妄想やんちゃ自慢を延々と読むのは苦行以外の何物でもありません。寒気におぞましさと苛立たしさ、そして「これまでの記事も虚構だったのかな?」という疑惑を感じ、大いに失望しました。私はその自動車雑誌を10年以上の購読していたのですが、スッパリと買うのを止めました。今でも表紙を見ると気分が悪くなるため、今後の再購読もないと思います。

ライターと編集部員の両経験を持った上での考えですが、これは編集部に問題があったと思います。その雑誌は自動車の知識や経験、個人の知名度において上等なライターを常に起用しており、上記の特集でもご高名ライター陣が執筆されていました。でもやんちゃな特集を組むのならば、やんちゃ方面に知識や経験のあるライターを探して依頼すべきだったんですね。常連ライターの皆が皆、特集に沿った知識や経験を持っているはずがないのですから。

そもそも編集部側で記事を確認した際、「この内容は実体験に基づいたものではなく、空想や妄想で描かれたものだ」と気付ける者がいないのなら、そのような特集を組むべきではありません。私はこの号で購読を止めましたが、この号以外の特集でも「特集ページの内容は虚構だ」と看破した人もいるでしょう。最終的には多くの読者が離れていったと思います。

先も記しましたが、およそ100も運営され、生き馬の目を抜くような環境にある自動車Webメディア。同じ方向性を持つWebメディアと差別化を図るため奇をてらう、目新しいテーマに挑戦するといった姿勢は必要です。しかし編集部内で真偽がチェックできない特集なら、組むべきではありません。組むのならば特集に沿った知識を持つ編集部員を確保するか、企画の段階から専門家を臨時のアドバイザーに入れるといった措置が必要になるのではないでしょうか。

あと不安など感情を煽る文章を書かず、ねつ造もしない…それ故に目立たず、地味な印象を持たれる堅実なライターへの正当な評価も、どうかよろしくお願いします。

[ライター・画像/糸井賢一]

糸井 賢一

ゲーム雑誌の編集からフリーランスに転身。雑誌やWEBサイトの記事以外に、ティーン向けノベルや児童書も執筆。どんなクルマであってもどんな道であっても、運転してれば楽しくて幸せな雑食系。子供たちが「車好きになるきっかけ」を作れる一冊を書くべく、日々奮闘中。

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