大変に驚愕した「カネがないからこそ、ドイツ製の高級新車を買う」ということ

  1. カーゼニ
  2. 245 view

こう言うと語弊もあるだろうが、一般論としては「金持ちは新車を買い、貧乏人は中古車を買う」という傾向は確かにある。かく言う拙者も「古めのクルマのほうが味があって好きだから」というのは確かにあるのだが、それは中古車を買う理由のおよそ45%ほどで、残る55%は「新車を買うカネがないから」である。う~ん、マンダム。

しかし昨今は「カネがないからこそ新車を、それもドイツ製の高級新車を買う」という現象もあるのだと聞き、拙者は今、大変に驚愕している。

輸入新車から輸入新車への華麗な買い替え。だがしかし…

それは知人であるP君のケースだ。

P君は数年前、某ドイツ車の某高級モデルを新車で購入。拙者はそれを見て「P君も出世したものよのう……」と半ば喜び、そして半ば嫉妬の炎をメラメラと燃やしていたわけだが、詳しく聞けば、実はいわゆる残価設定ローンにて購入したのだそうだった。

まぁそれは良い。残価設定ローンだろうが何だろうが、拙者なんぞはローン審査自体に通らぬ予感がビンビンにあるので、審査に通っただけでも大出世である。素晴らしいことである。

そしてつい先日、なんとP君は同ブランドのさらなるブランニューモデルへと華麗なる買い替えを果たした。

「うむう、P君がさらなる出世を果たしたか……」と、今度は喜び30%/嫉妬70%ぐらいの割合で事態を見守った拙者だったが、より詳しく聞けば「実はワタクシ、貧乏ゆえに新車を買わざるを得なかったのです……」と言うP君であった。

「次は手頃な中古車で」と考えていたP君だったが

カラクリはこうである。

何年払いの残価率何%に設定したのかは知らないが、とにかく前所有ドイツ車の「最終支払月」がやってきた。しかしながらP君は諸事情により走行距離をどエライ延ばしてしまっているため、実際の査定額はダダ下がっている。とてもじゃないが、たんまり残っている最終回支払額を車両の売却等によって清算することなどできない。かといって、残金を一括清算できるほどのキャッシュは手元にない。

困りに困ったP君は、ローンの付け替えというのかなんというのか、とにかくそれを企んだ。つまり同ブランドの認定中古車を新たに残価設定ローンを組んで購入するのだが、そのローンに現在の最終残債をドサクサで紛れ込ませ、その総額を何年かにわたり細々と返済していく……というプランだ。

冷静に考えれば完全な自転車操業であり、次の最終支払月には再びドツボにハマるのは目に見えてる。しかしP君にはもうこの手段しか残されていなかった。

残債を次のローンに組み込むには新車を買うしかなかった!

だがそのプランは開始すらされなかった。ディーラーの営業マンにあっさり断られたのだ。「認定中古車ではちょっと……」と。

しかし営業マン氏は続けて言った。

「ですがPさんもしもが新車の○○をご購入いただけるのでしたら、現在の残債をそのローンの中に組み込ませることは可能です」

P君に選択の余地はなかった。

かくして、本当は手頃なプライスの身の丈に合った認定中古車が欲しかったP君は、「カネがない」からこそ逆に、ビカビカのジャーマニー製高級新車に乗ることになった。

もしもビカビカのジャーマニー新車に乗るP君と、くたびれた中古の初代マツダ ロードスターに乗る拙者が並んでいる光景を誰かが見れば、おそらくはこう思うだろう。

「ドイツ車に乗ってる人のほうは年収2000万円ぐらいで、ロードスターの人は……月収20万円×12カ月っつーことで年収240万円ぐらいかな?」

しかし現実は異なる。拙者は、相変わらず自慢じゃないがゼニはないが、100万円だか200万円だか知らぬが、一般的なドイツ車の「最終月支払額」を一括清算できる程度のゼニであれば、自慢じゃないが持っている。中古車界のスーパーエリートなのである。……や、スーパーエリートさすがに言い過ぎだが、「中古車界の普通人」なのである。ナメてもらっては困る。

天才以外は「身の丈+α」程度の暮らし向きを目標とすべき

さて、この話から得られる教訓は何だろうか?

「中古車を買う人のほうが逆に金持ち!」というのはさすがに的外れだろう。そういった場合もあるのだろうが、そうではない場合も多い。むしろ「そうではない場合」のほうが多いはずだ。

「人を見かけや持ち物で判断しちゃイケマセン!」というのは、まぁつまらない話ではあるが、確かに言えてるかもしれない。昨今はマーク・ザッカーバーグみたいなウルトラ金持ちほどTシャツ姿で、金策に困ってる詐欺師ほど上等な背広を着ている……という現象もなくはないようだし。

だがそれ以上に、やはりコレだろう。

「身の丈に合った暮らしをしましょうね」

……つまらない結論でかなり恐縮だが、これに尽きると拙者は思っている。

もちろんあまりにも「身の丈」を意識し過ぎると、人は男としてのダイナミズムを失い、いつしか「現状維持」どころか「縮小」「滅亡」の方向へと向かってしまう。それゆえ、男はある程度の野望を持って生きなければならない。

しかしそれも「ある程度」である。特に拙者みたいな凡人は身の丈ってやつをストリクトに意識しつつ、「そのちょっと上」ぐらいを日々目指し続けることが肝要なのではないかと、真剣に考えている不肖わたくしなのであった。

そういうモロモロもあって、拙者は「中古のガイシャ」が大好きなのだ。まぁ今乗ってるのはたまたま国産車なわけですが。

[ライター/伊達軍曹]

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。途中2008年から2011年には編集デスクとして「IMPORTカーセンサー」(リクルート)の創刊準備および編集運用を業務委託として担当。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ってサイコーだぜ!」というのんきなトーンの原稿を各誌やウェブサイトに多数寄稿している。

記事一覧

関連記事