日本の交差点の横断歩道では…「2020年の横断歩道問題」について考えてみた

  1. カーゼニ
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過日。自分は地元碑文谷村の村道を愛機スバルXVにてユルユルと走行していた。すると前方の信号機のない交差点脇に、推定32歳の男を視認。自分の見立てによれば、男が横断歩道を渡らんとする意志を有しているのは明白であった。そのため道交法第38条第六節の二に基づき、自分はXVを横断歩道手前にて停止させた。

すると男は、あろうことかわたくしに向かってペコリと頭を下げた。

怒り心頭に発した自分はXVを路肩に寄せたうえでクルマから降り、男のもとへ詰め寄った。

2020年に必ず発生する「横断歩道問題」

自分は言った。「貴様! 日本男児たる者がこんなことでいちいち頭を下げるんじゃない! 気合を入れてやる! 歯を食いしばれ!」

小学生の頃に極真カラテの通信教育で鍛えたあげた自分の右正拳突きは、見事に男の左頬にヒットした。しかし遺憾ながらさほどの威力はなかったようで、逆に男が反撃として繰り出してきた左ハイキックをこめかみに食らい、自分は失神昏倒した。どうやら男はムエタイの心得があるようだった。

「極真カラテ(の通信教育)、敗れたり……」

アスファルト上に倒れた自分は、晴れ渡った碑文谷村の空を見ながらそんなことを思った。だが、それはきわめてどうでもいいことである。そもそもこの話はフィクションであるわけだし。

それよりも問題なのは「2020年の横断歩道問題」だ。

過日、朝飯をむしゃむしゃ食いながらNHKの朝のニュース番組を見ていると、大意として以下のような内容の特集が放映された。

「2020年夏の東京オリンピック開催時には、都内で外国人訪日客の交通事故被害が激増するおそれがある。なぜならば、彼らは信号機のない交差点の横断歩道では歩行者が超絶優先される自国のカルチャーに慣れきっていて、同様の横断歩道に構わず突っ込んでくる日本人ドライバーの行動を予測できないからだ」

……言われてみれば確かにそのとおりである。道交法第38条第六節の二に関する多くの日本人ドライバーの意識が現状のままであるならば、2020年の夏には都内のあちこちの横断歩道でノン・ジャパニーズ各氏の死人・怪我人が続出するだろう。まぁ歩行者がまったく優先されていない中国からいらっしゃる人に関しては大丈夫だと思うが、欧州あたりからいらっしゃる人には、真剣な生命の危機が迫っていると言って良い。

この危機に対し、われわれは何をなすべきだろうか。

「啓蒙」に効果はなく、「厳罰化」も難しい

歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとしてるのにまったく停止しない、自分の観察によれば約9割の日本人ドライバーを「啓蒙」する? 「それはいけないことですよ。やめましょうね」みたいな大意のパンフレットを作って大量配布するとともに、高速道路上の陸橋などに七五調のスローガンを掲げる。

……無駄だろう。何の効果もあがらない予感に満ちあふれている。

ならば「厳罰化」で臨むか?

例えばだが、道交法第38条第六節の二に違反したドライバーは即日、裁判なしで絞首刑とする……というのはさすがに無理なので、現状の行政罰(違反点数2点および反則金7000~1万2000円)を大幅にスープアップさせて「違反点数3点および反則金2万~3万円」ぐらいにするとか。そうなると、反則金2万~3万円はさておき「3点」というのがドライバーにとってはかなり痛いため、38条第六節の二を(嫌々ながらも)遵守しようとするドライバーは確実に増えるだろう。

ただ、この手法にも問題はある。「違反を現認する警察官の頭数がぜんぜん足りない」ということだ。

もしも警視庁が、いたいけな幼児に対する卑劣な誘拐殺人事件並みの超強力な捜査体制を敷くことができるなら、都内の信号機のない交差点という交差点にサツカンを配置し、不逞の輩を一網打尽にすることも可能なはず。

しかし、警視庁は警視庁で何かと忙しい。それこそ誘拐殺人事件の捜査や各種の警備、間諜の摘発、窃盗事件の捜査、知能犯への対応、一般的な交通警察業務、「密着! 警察24時」みたいなテレビ番組への撮影協力等々々々々、やるべき業務が山ほどあるため、とてもじゃないが道交法第38条第六節の二を特別扱いできる状況ではない。

「全部の交差点にエブリデイ配置するのではなく、ポイントを限定し、そして期間も絞って『摘発キャンペーン』みたいなことをある時期重点的に、徹底的にやれば、それがその後の抑止力となるのでは?」

そんな意見もあろう。自分もそれには賛成である。警視庁も何かと忙しいとは思うが、ぜひ可及的速やかにそんな打ち手を講じてほしいものだ。

「国辱モノの警戒標識」を作ることで問題解決か?

だがそれだけでは不十分だろう。

なぜそう思うかといえば、同様の打ち手はすでに「速度違反」に対して警察当局が講じているにもかかわらず、いまだ悪質な速度違反は日本の公道から根絶されていないからである。

ならばどうすればいいか……と考えると、これはもう訪日客の方々に自衛していただくほかないという、きわめて情けない結論が見えてくる。

つまり「訪日客向けの警戒標識」を各交差点に配するのだ。

生身の人間であるサツカンを大量配置するのは何かと難しい問題をはらんでいるが、無生物である「標識」であれば、ビッグデータに基づいてはじき出された効果を生みそうなポイントに、大量重点配置することは十分可能。もちろんゼニはかかるが、人命には代えられまい。そのための税金であればぜひとも投じるべきだ。

信号機のない交差点の横断歩道脇に置く警戒標識のデザインは、まぁ基本的にはドクロが良いのではないかと思う。なるべくおどろおどろしいしゃれこうべのイラストレーションを中央に配置し、その下に「DANGER!」と大書する。

そしてタバコの箱に書いてある「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなり、心筋梗塞・脳卒中の危険性や肺気腫を悪化させる危険性を高めます」みたいな小さな文字の英文を添える。その内容は、下記の感じで良いだろう。

「横断歩道の横断は、あなたにとって生物としての寿命を短くする原因の一つとなり、複雑骨折や半身不随などの事態が発生する危険性を高めます」

うむ、これでたぶん完璧である。

そしてそんな国辱的な標識が街にあふれかえる2020年を経て、さすがに恥ずかしくなった日本の約9割のドライバーは、2024年のパリ五輪が開催される頃までには道交法第38条第六節の二を強く意識するようになるのだ。

めでたしめでたし。

[ライター/伊達軍曹]

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。途中2008年から2011年には編集デスクとして「IMPORTカーセンサー」(リクルート)の創刊準備および編集運用を業務委託として担当。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ってサイコーだぜ!」というのんきなトーンの原稿を各誌やウェブサイトに多数寄稿している。

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