空冷911を買ってガレージを建立するには「副業」しかないのか?

  1. カーゼニ
  2. 130 view

カレントライフ読者の皆さんは、寝ても覚めてもマニアックな絶版輸入旧車のことばかり考えているのかもしれないが、こちとらあいにくゼニのことばかりを考えている。「柿くへば 鐘が鳴るなり法隆寺 それにつけても金のほしさよ」「秋深き 隣は何を する人ぞ それにつけても金のほしさよ」ってなもんである。

しかしアレだ、どうも計算が合わない。

普通ぐらいには稼いでいるのになぜ金がないという謎

や、ここではあえてゼニの話ばかりをしているので、「この伊達って野郎はかなりの貧乏人に違えねえ」とあなたは思っているかもしれないが、実際はそうでもない。ま、遺憾ながら金持ちというわけでは全然ないのだが、普通ぐらいの日銭はフツーに稼いでいる。よくは知らないが、下流サラリーマンの2倍とか3倍ぐらいの日銭は得ているのではないだろうか。

7fd4a04c231d6b7a828e69bebedaa7e5_s

それなのに、金がない。

別に無駄遣いをしているとか、実は風俗にハマっているとかいうことは一切ない。今この瞬間に着ている洋服も3000円ぐらいのTシャツと10年ぐらい前に買ったアディダスの短パンであり、この原稿を書いた後は風俗店に行くのではなく、自宅台所でご飯を炊き、1匹135円の秋刀魚を塩焼きにして食べる予定だ。明日もだいたいそんな感じの繰り返しであり、明後日からの3連休は区営グラウンドで草野球に励み、1000円カットの店に髪を切りに行く。

それなのに、なぜか知らぬがわたしには、最新のビーエムだとかメルツェデスだとかが買えるほどのお金がいっさい手元にないのだ。前にも書いたが、世の中にはあれほど現行の3やCがあふれかえっているというのに。

空冷911を買ってガレージを建立するには「副業」しかないのか?

まぁ正直言うと最新の3とかCは実は全然欲しくなくて、本当に欲しいのは上モノの空冷ポルシェ911(タイプ964の5MT)であり、そのほかに草野球用の道具グルマとして何らかのステーションワゴン1台を買って、今すでに所有している初代マツダ ロードスターをビシッとメンテナンスし、そしてその計3台を収容するステキなガレージを建立すること。それがわたしが欲しいモノのすべてであり、ほかは何もいらない。

しかし、それがなかなか実現しないのだ。なぜかお金が、まるで羽でも生えたかのように飛んでいってしまうせいで。

madamada_5

大した浪費もせず、そしてフツーぐらいには稼いでいるはずなのに、計算が合わない……安倍か黒田が悪いのか? などと常に独り言を言っているわたしだが、ブツブツ言っていても事態は改善されないので、何らかのアクションを起こさねばならない。つまり、なぜか金が足らないのであれば、その不足分を補う副業をせんければならないわけだ。「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」である。

とはいえ、ごくごく一部の熱心な読者様はご記憶にあるかもしれないが、前にはFX(外国為替証拠金取引)で惨敗し、よくわからぬマルチ商法で在庫の山を築いたわたくしだ。もうあの手の副業はこりごりであるため、もっとこう堅実で地味な何かで、確実に稼いでいきたい。しかしそんな手段はあるのだろうか……と再びブツブツ言っていると、たまたま開いたネットのページに「せどり」という単語が載っていた。

「せどり」で月10万円、いや1億円を目指す

よくわからなかったので調べてみると、どうやらせどりというのは「『同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること。また、それを業とする人(三省堂 大辞林より)』を指すが、一般的には古本用語を元にした『掘り出し物を第三者に販売して利ざやを稼ぐ』商行為を指す言葉」らしい。

以上はWikipediaからのコピペだが、要は「転売」ということなのだろう。で、昔はアナログ的な手段でそれを行っていたが、現在ではPCやスマホなどを使いデジタル空間にて売買するのが主流らしい。

そして、どうやら世の中には古本や中古CDなどのバーコードをピピッと読み取ると、その品の相場を瞬間的に示してくれ、ネットオークションへの出品やリスト作成などをがっちりサポートしてくれる超絶便利なアプリもあるという。そしてさらに各サイトを読み進めてみると、「サラリーマン三郎のせどり物語。月10万円の副収入を楽勝で稼ぐ方法」みたいなブログがあったり、「せどりで1億円稼いで自由になったほにゃおのブログ」みたいなのがわんさかある。

……素晴らしい。なぜこんなにも素晴らしい世界をわたしは今まで知ろうとしなかったのか? 愚かとしか言いようがない。わたくしもさっそくアプリを手元のアイフォーンにダウンロードし、「せどらー」の道を歩むことにしよう。1億円までは別にいらないが、「月10万円の副収入」は欲しい。や、考えてみればやっぱり1億円も欲しい。それだけあればステキなタイプ964を買って、そして計3台が入るガレージを建立してもまだお釣りが来るだろう。

我が家に散らばっている古本の山は「宝の山」だった!

ということでわたしは「せどり君(仮名)」なる無料アプリをダウンロードし、自宅長屋に散らばっている古本各種のバーコードを片っ端から読み込んでみた。

すると……我があばら家は「宝の山」であることが判明した。

fullsizerender

せどり君(仮名)によれば、ブックオフにせいぜい数円か数十円ぐらいで売っぱらおうかと思っていた『結ぼれ』(R・D・レイン著)という本は、どうやら2000円の価値があるらしい。ずいぶん前に買った都築響一さんの『天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱』も2380円で、映画『まぼろしの市街戦』のDVDもかなりの高値であり、その他『モンティ・パイソン大全』『ザ・コレクターズ大頭鑑』『修身教授録』等々も軒並み高値だ。……まとめてブックオフに売ってせいぜい数百円かな? と思っていたものに、実は大きな価値があったのだ。

つまりこれは「不肖わたくしは、その後高値が付くモノを見極める能力に優れている」ということで、この調子で今後も適宜古本屋などで自分が気になる本を安く購入し、そしてそれを存分に読んだのち「せどり君(仮名)」を通じて売却していけば、「教養を深めつつ巨万の富を得る」という最高の展開が訪れるわけだ。まぁ冷静に考えると「巨万の富」ってほどの金額ではないが、月10万円でもいいじゃないか。それを堅実にゆうちょ銀行に貯めておけば、そのうち空冷ポルシェ911だって買えるだろう。

964change_1

ということでわたくしは喜び勇み、まずは前述の『結ぼれ』をネットオークションに出品することにした。「せどり君(仮名)」によれば最安値が2000円とのことなので、1980円とか1900円ぐらいの値付けにしておけば、あっという間に売れるはずだ。そしてそれを繰り返すうちに、わたくしは巨富を得るだろう。うわっはっはっはっは、笑いが止まらないぜ!

目論見は大きくはずれ、そして高尾山へ……

そんな高笑いしながらネットオークションサイトを開くと、たしかに『結ぼれ』は2000円ぐらいで出品されていた。……が、出品されていたのは1冊や2冊、せいぜい5冊でもなかった。数十冊もの『結ぼれ』が、そこには出品されていた。そしてそれらは、まったく動いている気配がなかった。つまりぜんぜん売れてないのだ。

『天国は水割りの味がする』も『まぼろしの市街戦』も、そして『モンティ・パイソン大全』も、状況はおおむね同じだった。「出品すれば売れる! 独占市場だ!」と思っていたが、よほど独創的なアイデアでない限り、似たようなことを考えている人間は全国に何十人も何百人いるということを完全に忘れていた。せどり君(仮名)は「この値段で絶対に売れますよ」ということを教えてくれるアプリではなく、単に「今、この値段で出品されてますよ」と教えてくれるだけだったのだ。

考えれてみれば当たり前の話だが、わたしの落胆は大きかった。3日ほど高尾山に篭り、頂上近くのビアガーデンでやけ酒的にビールを合計20リッター飲んだ。もともと乏しかったお金がさらに乏しくなったため、カレントライフ編集長のW氏に原稿料の前借りを申し込んだ。断られなかったが、そのことがわたしをかえって悲しくさせた。

[ライター/伊達軍曹]

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。途中2008年から2011年には編集デスクとして「IMPORTカーセンサー」(リクルート)の創刊準備および編集運用を業務委託として担当。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ってサイコーだぜ!」というのんきなトーンの原稿を各誌やウェブサイトに多数寄稿している。

記事一覧

関連記事