三菱・スズキ両社の燃費不正問題、国の検査体制にも目を向けてみる

最終更新日: 公開日:2016-06-06 | Posted in テクノロジー by

2016年5月、三菱自動車が燃費計測データに手を加える不正問題が明らかになったほか、スズキも国が定めた計測方法ではなかったと発表した。独フォルクスワーゲン社のディーゼルエンジン不正事件を笑えない不祥事だが、その背景にはメーカーに投げっぱなしであった国の検査体制にも大きな原因があると考えられる。

三菱自動車のケース

2016年4月に発覚した三菱自動車の不正検査体制の概要を説明すれば、本来燃費計測では、タイヤと路面の摩擦や空気抵抗などで生じる「走行抵抗」を「惰行法」という手法で計測することになっている。この走行抵抗をシャシーダイナモに入力して燃費を計測するわけだ。

惰行法は、一定速度で走行中の車両のギアをニュートラルにし、惰性で走っている車が減速にかかった時間を計測して抵抗値を図る手法だ。最低3回以上計測し、バラつきが大きい場合は回数を増やしていく。こうやって目的の速度域まで、10km/hずつ速度を上げ、何度も計測していく。

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▲JC08モードでも燃費測定はシャシーダイナモを利用して測定する。このときに指定する走行抵抗値が不正の対象となった。(国土交通省資料「燃費測定モードについて」より)

これに対し、三菱自動車では北米で採用されている「高速惰行法」を使って計測していた(厳密にはアメリカ方式とも多少異なる)。こちらは一定速度まで速度を上げてギアをニュートラルにするのは同じだが、1秒ごとに何km/h速度が落ちているかを測って抵抗値を計測する手法だ。高速惰行法のほうが、惰行法よりもシンプルで、計測回数も少ない。ただし高速域はいいが、低速域では若干数値がバラつく(3%程度)ため、三菱自動車では独自に補正をかけていたという。

ここまでは、不正のためではなく手抜き作業のために測定方法を変えていたという印象だが、実はこの体制が約25年続いていたというから呆れる。その間にリコール隠しなどで会社全体が傾き、ルールに則る必要性をどこよりも強く感じていなければならなかった三菱自動車だが、最初から遵法意識などなかったのである。

さらに悪いことに、新車開発時に上層部から課せられた燃費目標に到達できなかったことに焦った開発陣が、走行抵抗を少なめに修正して提出してしまった。この車両をOEM供給された日産自動車が改めて自社で計測してみたところ、計測値に5%〜15%もの差があることが発覚したのが、今回の事件が明るみになった要因となる。テストそのものの内容の不正に加え、テストの結果にも手を加え、二重の不正を行ったのである。

スズキのケース

スズキについては、三菱自動車の問題が明らかになった後、スズキ側から自主的に発表があったもの。スズキは「屋外のテストコースでは海風が強く、防風壁などの設備が整っていない関係で、結果のばらつきが大きいため、風の影響を受けない室内でのテストの結果を積みあげて申請した」と説明し、正しい計測法との乖離は誤差の範囲内だったため、燃費を修正する必要はないとしている。なお、この計測法は2010年から、ジムニー、ジムニーシエラ、エスクード2.4を除く26車種で行われていたという。

実際、ネットでもスズキについては「カタログより実燃費がいい」などの擁護も行われており、燃費を偽装しようとした三菱自動車とは問題の質が違う、という声も多く見られるのだが、国が定めたルールを数年間破り続けていたという点ではまったく同じだ。海外向けの製品はきちんと測定していたそうだし、国内向けについても問題発覚を受けてテストコースを改修して計測し直したところ、カタログ値よりいい値が出たという報道もあったが、だから許されるという話でもない。結局のところ、違法行為だったことは認めなければならないだろう。

国は何を監督していたのか

三菱、スズキ、両社が行っていた不正については諸々事情もあっただろうが、社会に責任を持つ大会社の遵法意識がこのような低レベルにとどまっていては困ってしまう。それにしても不思議なのは「どうしてその不正が長年続いていたことがわからなかったのか」だろう。

自動車の燃費試験といえば、かつては10・15モードでの計測が実燃費と乖離していることが批判され、2011年に現在のJC08モードへと計測ルールが変わったわけだが、その時にはすでに両社の不正は行われていたことになる。検査内容の見直しの際に、どうして不正が看過されてしまったのか。その原因は国土交通省側にあるのではないだろうか。

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この記事の筆者:海老原 昭

IT業界を中心に、政治経済からオタク業界まで、基本なんでも屋のフリーライター。輸入車のマニュアルや...