自動車業界はIT産業にもっと歩み寄りを:東京モーターショー2015所感

最終更新日: 公開日:2015-11-09 | Posted in テクノロジー by

東京モーターショー2015が閉幕しました。自動運転に対する自動車業界の本気を垣間見たと感じる反面、もはや一大インフラとなったスマートフォンや、新たなライバルでもあるIT企業やテクノロジーとは相容れない存在であると見ているように感じられました。筆者の目から見た今回のモーターショーの見どころについてレポートしましょう。

自動車業界はiT産業にもっと歩み寄りを:東京モーターショー2015所感

あくまで独自技術路線を行こうとする自動車産業

今回のショーはビッグサイトの東西館をほぼフルに使い、西館2Fでは「スマートモビリティシティ2015」も併設されていました。スマートモビリティシティは自動車や公共交通機関と街のインフラ、人々とクルマの関係、自動運転などの最新技術に関する展示が中心です。

以前はカーナビアプリや、自動車と連動してSNSに投稿するアプリなど、スマートフォン関連の展示が多い時期もありましたが、今回はスマホ関連ではカーナビアプリが1つのみ。自動運転や電気自動車などの展示のほうが中心でした。なによりスマートフォンとナビを接続する規格である「CarPlay」や「Android Auto」に関しては、非常におざなりな展示が1つあるのみ。展示されていたさまざまな新規格や技術の多くは、既存のものを使うのではなく、あらためて自動車産業側から提案するのだ、という姿勢を強く感じました。

期待のかかるV−Low放送

自動車業界はiT産業にもっと歩み寄りを:東京モーターショー2015所感

以前本誌でもお伝えした「ETC 2.0」や、FM多重放送を使って渋滞情報などを配信する「VICS WIDE」など、現在もおなじみの技術の進化系も展示されていましたが、いずれも利用には新たに対応機器の購入が必要で、あまりユーザーに優しい感じはありません。たとえばVICS情報は電波や路上のビーコン以外に、携帯電話網などで取得できてもおかしくないはずですし、そのほうが汎用性も高いのに、そうはなりません。従来どおりラジオ波やビーコンを使うメリットは理解した上で、なぜ拡張しないのか、少々理解に苦しみます。

「VICS WIDE」は2016年3月スタート。伝送容量が従来比2倍になって、これまでより詳細な情報が配信されます。全国のタクシーに搭載したプローブを使って従来のVICSより正確な渋滞情報を提供する。火山・津波などの警報もポップアップ表示されます。

そんな中で気になったのが、2016年3月にスタートする「V−Low」放送の「i-dio」です。地上アナログ放送が終了して空いたVHF放送の周波数帯を使ったデジタルラジオ放送で、i-dioは自動車やスマートフォンなど移動体への放送に特化したサービスとして、東京、名古屋、福岡からサービスを開始します。

i-dioのコンテンツ配信

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i-dioではモビリティ向けチャンネル「Amanek」と、高音質放送などを提供する「TS ONE」らがコンテンツを配信します。

i-dioでは通常のラジオ番組に加え、災害・天候や渋滞、地域情報などを同時に発信しています。さらに位置情報を付加することができるため、たとえば放送中の曲の情報を見たり、走行中にある店のそばに近づくと、割引クーポン付きの広告が表示される、といったしかけもできるようです。以前、FM多重放送を使ってシンプルな文字のニュースなどを送信する「見えるラジオ」というサービスがありましたが、これを高度にしたものだと言ってもいいかもしれません。

i-dioの受信には専用のチューナーが必要ですが、これは地上アナログ/デジタル移行期にチューナーの外付けが可能だったカーナビなら拡張用の仕組みが用意されているため、同様に後付けのチューナーを装着すればいいとのこと。既存の端末がそのまま使えるのはコスト的にもユーザーに優しい設計です。またスマートフォンでも、i-dioを受信するための外部チューナーや、チューナー内蔵スマートフォンが登場するとのことでした。

ちなみに、曲の情報などを取得できるデジタルラジオというと、インターネット経由で他地域の番組も受信できる「RADIKO」がありますが、V−Low放送とは仕組みからして違うものです。RADIKOは既存FM局がインターネット経由で受信できるもの、V−LowはAM・FMとならぶ、新たなラジオ放送という位置付けです。

IT産業はハードウェアをガチガチに作り込むのではなく、機能はソフトウェアで実現し、ソフトの改良で機能を追加・改善する方向にあります。自動車業界でも電気自動車の米テスラはまさにその発想でクルマを作っています。今後、自動車業界もそういう方向に行かざるをえないのではないでしょうか。

純然たるハードウェア産業である自動車業界が急に転進するのは難しいかもしれませんが、市場の動きは待っていてくれません。自動車産業の行方を決めるにあたり、自分たちがハンドルを握り続けたいという気持ちはわかるのですが、安全運転と同じで、早め早めに対処する気持ちでいなければ、いつか袋小路から出られなくなってしまうのではないでしょうか。

「RX-VISION CONCEPT」は期待が高まる一台

翻ってモーターショー本体の様子ですが、強く印象に残ったのはマツダブースの「RX-VISION CONCEPT」です。会場でも大人気で、常時黒山の人だかりでした。コンセプトカーということでかなり「攻めた」デザインですが、どこまで市販車に再現されるのかが楽しみです。

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この記事の筆者:海老原 昭

IT業界を中心に、政治経済からオタク業界まで、基本なんでも屋のフリーライター。輸入車のマニュアルや...