日本では知られていない?給油中の大気汚染を減らせるベーパーリカバリーシステムとは

最終更新日: 公開日:2016-09-27 | Posted in メンテナンス

かれこれ20年前の話で恐縮なのですが、アメリカはラスベガスのコンベンショナルセンターで開かれるSEMAショーの見学に毎年行っていた時期があります。大抵はロスでレンタカーを借りて現地まで行くわけですが、道中やレンタカーの返却時に給油することになります。アメリカのガソリンスタンドは基本的にセルフサービスで、料金も前払い(強盗対策で受付の窓が極めて小さい)だったりと新鮮な経験ばかりでしたが、もう一つ日本と違うところを発見しました。

給油ガンの先端にはゴムのジャバラが付いていて、クルマの給油口に接するようになっているのです。当初は、ガソリンが満タンになったときに跳ね返るのを防ぐカバーなのかな?という程度にしか思いませんでしたが、給油機のホースからして単なるホースではなく、中間の接続部に英語で製品名らしき文言も書いてあり、なんか意味があるのだろうと思いました。後から調べてみると、ベーパーリカバリーシステム(英:Vapor Recovery System 以下VRSと略します)というもので、給油中に放出されるガソリンの蒸気(=ベーパー)を回収する装置と分かりました。

日本ではあまり知られていない、給油中の大気汚染はいつ無くせるのか?
▲一般的な給油ガンの例。

ガソリンは揮発油とも言われるように、密閉容器から出して大気中にさらすと常温でもさかんに蒸発していきます。もちろん、ガソリンは単一の成分ではなく、原油からある範囲の温度で蒸留される成分を抽出したものになるので、全てが蒸発してなくなるわけではありませんが、アロマ分はガス化して飛んでいきます。燃料タンクの中でも、液体のガソリンの上にはガソリンの蒸気が充満していて、給油するとガソリン蒸気が押し出されるので、日中は陽炎として見えたり地面に影が映ることもあります。給油しているとツンとした溶剤臭を感じることも多いと思いますが、これが大気汚染物質である「HC」なのです。HCは炭化水素とも呼ばれますが、有害なのでクルマの排出ガス規制でも規制されています。筆者は、給油中はできるだけ顔を背けてHCを直接吸わないようにしています。

ここで言葉の定義をしておくと、排出ガスはクルマ全体から出る有害ガス、排ガス(または排気)はエンジンのマフラーから出るガスということにします。ちなみに排気ガスは「気」と「ガス」で意味がダブるので誤用です。

排出ガス規制は、クルマの燃料タンクやエンジン本体、燃料系統からの有害成分の排出も規制されてきた歴史があります。ガソリンタンクはエンジンに燃料を送るときも消費した分の空気を入れないとタンクが潰れてしまったり燃料が送れなくなるので、通気口が必要となりますが、単なる通気口としてしまうと、ガソリンの蒸気がそこから外に出てしまいます。また、昔のキャブレーターではガソリンを一時的に溜めるフロート室からガソリンが蒸発しますし、エンジン本体からもブローバイガスというシリンダーとピストンの間をすり抜けた未燃焼ガスが出てきます。旧車のエンジンルームを覗くとガソリン臭いことがありますが、HCを野放図に出していた時代のクルマでは燃料漏れのトラブルが無くてもそれが正常なのです。

そこで、燃料タンクは気密性を持たせるとともにチャコールキャニスターという部品(活性炭)を付けてガソリン蒸気を一時的に蓄えて、エンジンの作動とともにエンジンに吸わせて燃焼するようになりました。夏場に給油口を開けるとプシュッという音と共に圧力が開放されますが、これは燃料タンクが半密閉になっているためです。また、アメ車ではこの規制が特に厳しいので、燃料タンクのキャップが緩んだり、チャコールキャニスター系の配管の不具合などで燃料タンクの気密性が確保されていないとエンジンチェックランプが点くようになっています。

燃料供給はインジェクションになり停車中の燃料系統からのガソリン蒸気の発生は「ほぼ」なくなりました。ブローバイガスにもHCが多く含まれますが、これも吸気に戻す仕組み「ブローバイガス還元装置」が付いています。排ガス規制の対応では、燃焼室の改良に始まり、燃料供給や点火の制御、触媒などの装置によってHCのほか、CO(一酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)といった有害成分の量を抑えています。

日本ではあまり知られていない、給油中の大気汚染はいつ無くせるのか?
▲ベーパーリカバリーシステム付きの給油ガンには黒いゴムのジャバラが付いていて、給油口に密着するようになっている(ジャバラ付きがVRS付きとは限りません)。

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この記事の筆者:高山 則政

小学生の頃から機械が好きで、実家のエンジン付き農機具でメンテナンスに目覚め、運転免許取得前から不...