色づく銀杏と名車の饗宴~トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑をレポート

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愛知県の長久手にあるトヨタ博物館を訪れると「年間パスポート」なるものを販売しています。クルマで出かけるのが好きな筆者は、時々近くを通ると立ち寄ったりするものだから、実は「何度かあれを買ったらいいのではないか」と、よからぬ誘惑に負けそうになったことがあり、ここに謹んで告白したいと思います。

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そのクルマがあらゆる手段を講じて、可能な限り美しい状態で並んでいる。博物館ごとにいろいろなキャラクターはあるかと思いますが、トヨタ博物館のコレクションは、そんな状態のクルマだといえるのではないでしょうか。トヨタ車に限らず、価値のあるクルマをしっかりと押さえている。そんな印象の収蔵車両を前に、何度訪れても有意義な時間を過ごすことができるので、一人のクルマ好きに戻れる場所なのではないか。そんな風に思うのです。

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1989年に開館した翌年には、すでにクラシックカー・フェスティバルをスタートさせていたというから、博物館の運営としても、なかなか攻めている、と言えるかもしれませんね。博物館の企まれた照明の元、またその荘厳な建築の採光や内装が演出する展示も確かにありがたいものですが、それでもやはり、日の光を浴びて屋外で見たほうが、もっとクルマっぽい。自動車とはそういうものなのだと思うのです。そしてそれが走るとなれば、まさに水を得た魚のようなものでしょう。

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はじめは博物館のお膝元、愛知県だけで開催されていたクラシックカー・フェスティバルが、2007年からは東京でも開催されるようになりました。より多くの人に「様」を見てほしい、という狙いももちろんあるでしょうが、時期は大体秋深まり、そろそろ冬の足音も聞こえようかというころに、晩秋、銀杏の色づく明治神宮外苑 聖徳記念絵画館にトヨタ博物館のコレクションももちろん、自らもクラシックカーを愛好する一般ユーザーが私蔵するクルマたちも集い、そんな東京の一番美しい頃の風景の中をパレード走行するのですから、見ている方も幸せな気持ちになるというものです。

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東京で開催されるようになって今年で10回目。今年も会場に足を運ぶことができたので、何台か思い出深いクルマを紹介したいと思います。

二台のトヨタ2000GT

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最近ではその取引価格ばかりが話題になる2000GTですが、トヨタ博物館が持ち込む2000GTは、その中でも唯一無二の二台が会場に展示されました。メーカー自身が所有するクルマ。これは雑な言い方をすると「積んだきんすの話」ではないのです。むしろ、今までメーカーがどんな経緯でそのクルマを作り、また今のメーカーの姿に至ったか、その歴史を凝縮しているということはできないでしょうか。

今回は谷田部で幾多もの記録を樹立し、世界にクルマの技術力日本の存在をアピール、スピードトライアルしたクルマを忠実に再現したレプリカと、発売前に人気映画「007」に登場し、センセーショナルなお披露目を果たした、市販されなかったオープンボディを持つボンドカーの二台が絵画館前に登場。デモンストレーション走行まで披露しました。いわば、技術力と、人の心を打つエモーションの両面で日本の自動車の水準を一つ前に進め、世界に知らしめたクルマだということができるかもしれません。

ただ、目の当たりにすると、今一部で奉られるような「天上のクルマ」という面ばかりではなく、流麗で堂々たる存在感ではあるものの、コンパクトなこのスポーツカーをの走るさまを見て、冷静にこのクルマを改めてみてみると、例えば、オースティンヒーレーなどのようなものに類するカテゴリーの世界観も見え隠れすると思ったのです。トヨタ2000GTの市販車は三国ソレックスのキャブレターをでしたが、ここに持ち込まれたクルマはいずれも試作車をベースにしているため、ウェーバーのキャブがオリジナルなのだとのこと。

しかも、スピードトライアルにしても、外観のみその仕様にしたものとはわけが違いますので、走り出すとそのセッティングがまるでボンドカーとも違うことがわかります。とはいえ、実態は今やそうそう気安く触れることはかなわない名車2000GT。やはり朝陽の中を駆け抜ける2000GTを見られたのは幸せなことだと思いました。

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BMW3200CS

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何べんでも言いますが、今年2016年はBMWの創立100周年の記念すべき年。こんなにBMWがポピュラーな存在になった日本で、なぜこんなにもそれを祝う雰囲気がないのでしょうか。これにはかなり強い違和感を個人的には覚えています。また、BMWはストレートシックス、というようなキャラ付けがこの国には「はびこっているよう」に思いますが、もともとはV8の高級車で自動車メーカーとしての輪郭を作り上げたメーカーだと思うのです。

今回一台大変貴重なBMWが参加していました。1965年式の3200CSです。やはりベルトーネですよ!当時チーフになったばかりでしょうね、ジウジアーロですよ!と声も大きく饒舌にもなろうというものです。1952年にデビューした502/503のシリーズの最終型ともいうべきこのクルマは、600台ほどが生産されました。堺市の土居コレクションにも居まして、そこで見てはいますが、やはり希少だし、堂々としたサイズながら、イタリアのボディをまとった高級クーペ。なかなか個性的なアピアランスです。形状はイタリア車のようですが、もっと軽妙に作るでしょう。でもドイツ車にしては洒脱というか、妙にカジュアルな雰囲気もあって、しかもノーブルな雰囲気。

この後、ハンスグラースを吸収してV8モデルがありましたが、かなり時間をおいてE32型の740の登場あたりまで、オリジナルのV8エンジンはBMWのラインナップからは消えることになるのです。そんな「しばしのお別れ」をいうかのようなBMWのスマートな大型クーペ。いつも申し上げているように、絵に描いた優等生ばかりが名車になれるわけではありません。どこかもの寂しい、時に失敗作とされるようなクルマでさえ、むしろ一筋縄ではいかなかったものの語り継がれる要素があるクルマ、何かのきっかけになるようなクルマもやはり名車といえるのではないでしょうか。その意味ではこのクルマも、まして今年のイベントでは出会ったことを忘れるわけにはいかない名車だと思うのです。

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この記事の筆者:中込 健太郎

大手自動車買取販売会社で、クルマの売買業務を経て、本社マーケティングチームに異動。WEB広告を担当し...