原稿料を増やすためには「著名自動車評論家」を目指すしかない?

公開日:Posted in カーゼニ by

数年前。自分は晦日すなわち月末ということで「さて今月の稿料入金はいかほどかしらん?」と、地元信金のネットバンキング機能をパチリと叩いてみた。しかし入金がない。や、ないこともないわけだが、長屋の賃料を払ったうえで米、味噌、醤油を買うといくらも残らない……という程度の入金しかないのだ。

わたしの原稿料はどうすれば増えるのだろうか?

「なぜだ?」と思ったが、考えてみればこれも道理である。仕事の発注がないのを良いことに、日がな神宮球場の三等席に陣取り弱小職業野球球団の応援を行う、近隣の公園にて自作のポエトリーを鳩に聴かせる、上沼部村は丸子堰へ赴きスズキ釣りにいそしむ……などばかりしているのに、入金があるほうが逆におかしい。

「なるほど道理である」と納得した自分だが、人は「納得」で米、味噌、醤油を買うことはできない。ましてや自分はそれ以外にお刺身や納豆、そしてできれば清酒や甘いモンなども購入したいと熱望している。

しかしその購入にはゼニがいる。ゼニがないのに商品棚から目当ての物品を自宅に持ち帰るのは、これすなわち犯罪。自分は犯罪をおかすつもりはないので、やるべきことといえばゼニを増やすこと、つまりは「稿料の入金額を増加させること」だ。

そう考えた自分は神宮球場三等席のチケットをばとりあえず破り捨て、「いかにして自分の稿料を増大させるか?」という非常に重要かつリアリズムあふれるイシューについて長考に入った。

広告畑への転身で「単価UP」を目指す

世の大多数を占める愚民は、この種の問題を「もっと頑張る」「各方面に営業をかける」などの浅知恵でもって解決せんとするのだろう。しかしそれは自分のような大賢者からすれば片腹痛いほどの浅知恵でしかなく、カンラカンラと嗤うほかない。

なぜならば、まず「もっと頑張る」であるが、人間の頑張りというものには自ずと限界があり、それだけで物事を根本解決するのはほぼ不可能だからだ。まぁ自分の場合は神宮球場三等席で放蕩に耽りすぎているというのも事実なため、そこの分量を若干減らし、もうちょい実業のほうを頑張る……というオプションは確かにあるだろう。

しかし今、紙媒体/ネット媒体を問わずエディトリアル系の原稿料相場は低下の一途をたどっている。や、よく考えると「低下の一途を辿っている」ことを示す客観的エヴィデンスを自分は持ち合わせていないことに今気づいたが、体感および経験から言わせていただくならそんな感じであり、おそらくはそれなりの事実である。

そんな状況下で「もっと頑張る」「各方面に営業をかける」などしたところで、少々の入金額増加はあれど抜本的な解決には決してならない。それでいて激務のため身体を壊したり、あるいは土下座営業に行った先で、負け犬が漏らした水瀉便のごとき扱いを先方から受けて心を壊したりするだけの結果になることは、目に見えているのだ。

自分が今やるべきことは「頑張る」「営業する」ではなく、「単価を上げる」である。

しかし単価を上げるといっても、今現在取引がある企業の親方に「すみませんが稿料の単価を上げてください。3倍……と言いたいところですが2倍で勘弁して差し上げます。感謝してください」と言ったところで、殴打打擲されたうえで契約解除となるだけだろう。そこが、残念ではあるが紙/ウェブを問わずエディトリアル系の限界である。

それゆえわたくしが考えたのが「広告畑への転身」だ。

座って相槌を打つだけで10万円という世界

広告系とエディトリアル系では本当に、思わず笑いながら失禁したうえでラジオ体操をコンプリートしたくなるほど、単価が違う。

どのぐらい違うか? ということについて、わたくしの実体験で語ろう。

以前、とある新型車の宣伝広告に関連する仕事をした。具体的には、とある自動車メーカーの重役氏と、とある文化人が、とある新型車に関する対談を行う。で、それに関する司会進行役と原稿のとりまとめを不肖わたくしが行い、後日、その模様を公式サイトに掲載する……という案件であった。ちなみに「とある」ばかりで恐縮です。押忍。

もしも同様の業務をエディトリアル系、すなわち「月刊マイ・ベスト自家用CAR」とかなんとかいう雑誌から請け負ったならば、わたくしの手間賃はおそらくだが2万円ぐらいであっただろう。

しかし、わたくしの口座に後日振り込まれたギャランティーは「20万円」であった。

また以前、これまたとある新型車のプロモーション関連で、とある著名自動車評論家氏の「案山子(かかし)役」を務めたことがある。

メーカーの公式動画にて著名評論家氏がその新型車についてあれこれ語るのだが、失礼ながらビジュアル的には単なるおっさんでしかない評論家氏がカメラ目線で語っても閲覧者受けはイマイチであろうし、かといって「誰もいない虚空と会話する」というのもなかなか難しい。そこでわたくしに「評論家○○さんの目線を固定するための案山子(便宜上の話し相手)になってくれ」との白羽の矢が立った。

屈辱的な仕事ではあったが、どうせヒマなので快諾して某所へ赴き、カメラの前でいくつかの質問を著名評論家氏に投げかけた。そして評論家氏の返答に対してウンウン、なるほど、は~そうでしたか! と絶妙な合いの手を入れた。当然だがわたしの質問や合いの手、わたしの後ろ姿などは動画にはいっさい入っていない。

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この記事の筆者:伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めた...